麻布中学校理科2016 「思考力」はどうやって鍛えるか
麻布中2016年度の理科、まさに例年通り「麻布独自」の出題でした。難度は全国の私立中学校の中でも最高レベル。大問は例年通り4題で、いずれも読解力と整理力、因果関係を論理的に考える思考力が必要です。
全小問を
A(麻布中受験者にとって難度低)・・・14問
B(麻布中受験者にとって難度中)・・・13問
C(麻布中受験者にとって難度高)・・・10問
となっていて、麻布中を目指して対策をしてきた受験生にとっては、予想通りの手応えだったのではないでしょうか。AレベルとBレベルの問題で7割強、合格ラインをクリアできるので、楽なのかというと、まったくそんなことはなく、あくまでも「麻布中の対策をしっかりしてきた受験生にとって」ということで、このタイプの問題に慣れていない受験生には非常に解きづらい問題で、Bレベルの問題の大部分をCレベルと感じてしまうかもしれません。
■大問1
人間の「体内時計」に関する問題。この大問のみレベルAとレベルBのみで構成されていて、合格を目指すなら全問正解を目指したいところです。
■大問2
藍染めに関する問題。染料に関する知識など小学生にはないのがふつうです。問題文で説明されていることをしっかり読み、出題者である麻布の先生に習っているつもりで考えなければなりません。蓼藍に含まれる無色の「インジカン」という物質が微生物のはたらきで「インジゴ」という物質に変化し、さらにその「インジゴ」が藍甕の中で水に溶ける「ロイコインジゴ」という物質に変化、さらに繊維の中に入り込んだ「ロイコインジゴ」が空気にふれることで「インジゴ」となって布が染まる仕組みを読み取らなければなりません。その行程で「知る喜び」を感じられるような受験生であってほしい、との出題者の意向が見えるようです。
■大問3
ふりこに関する問題。しかし問題集などに出てくるようなものではなく、最終的には「ブランコのこぎ方」に結びつく問題。感覚的にブランコの「立ちこぎ」「座りこぎ」を思い出した受験生、「ああ、だからあんなこぎ方をしていたのか」と納得した受験生、「誰に習ったわけでもないのに、ふれ幅が大きくなるこぎ方をしていたんだな」と我ながら感心した受験生たちがぐっと合格に近づいたのでしょう。
■大問4
「大陸移動説」に関するもの。問3や問6のグラフ、さんざん頭を悩ませた末に「なるほどな〜」と感動した受験生も多かったでしょう。
麻布中学校の理科への対策にはどんなことがあるのかと尋ねられたら、ありきたりですが「考える力を鍛える」ということでしょうか。
■考える力をつけるには
「考える」ということは楽しいことでもありますが、根気、我慢のいることでもあります。でも考えてしまうのは、その対象に興味があるからにほかならないと思います。興味があること、好きなことについては、それがとても面倒なことであったとしても、考えてしまいます。逆に絶対に考えなければならないことであっても、それが興味の対象外であれば、考えるモチベーションが湧きません。
たとえば麻布中の問題の「藍染め」ですが、もともと染料に興味がある、好きという小学生はめったにいません。でも、その仕組みを読んでいくうちに、だんだん「あ〜、なるほど」「そういう仕組みで洗っても落ちないんだ」といった「知る喜び」を感じて、さらに考えるモチベーションが生まれる・・・そんなサイクルにはまっていくことができる子が、「考える力」がついている子です。
では、どうやってそんな力を養えばいいかというと、「丸暗記」ばっかりしないことだと私は考えています。お子さんが小さいなら一緒に出かけて、いろんな「発見」をさせてあげてほしいのです。
「どうして空は青いの?」
「どうして葉っぱは緑色なの?」
「どうして秋になったら葉っぱが落ちるの?」
「どうして冬は寒いの?」
まだ生まれて何年かしかたたないお子さんの頭のなかは「?」でいっぱいのはずです。それらを「どうしてだろう」と考える習慣がスタートです。
中にはお父さん、お母さんもすぐに答えられないことだってあると思いますが、それでもいいんです。「なんでだろね。一緒に調べてみようか」でもいいですよね。そんな経験をたくさん積んだ子が、麻布の理科の問題を読んで「そんなの知らないよ。考えたくもないよ。」などと決して思わない子です。
■いろいろなことを教えてくれる問題
入試ですから、もちろん合格点をクリアすることを目的に解かなければなりません。でも、ふだんの勉強がすべてそんな近視眼的なものになってしまうと、逆に目的から遠ざかっていってしまいます。
知らなくていいから、この場で考えてごらん。
そう語りかけてくるような問題。毎年う〜んと唸ってしまう麻布中でした!