「暗記型」では解けない渋幕2017年理科
渋谷教育学園幕張中学校の理科の問題を解いてみました。
例年興味深い問題を出すことで定評のある渋幕ですが、今年もユニークな出題でした。
大問1では、まず特徴的な6つの場所の気温と降水量のグラフが示されます。社会の問題のようだと感じますが、データの読み取りが正しくできるかを見る問題。また植物の生育条件も与えられ、植物が生育するかどうかの判断も問われます。
バイオーム(ある地域に生育する生物集団の型)をそれぞれの場所について考える問題もあり、問題を解きながら学べる、そんな内容の良問と思います。
大問2では、近づいてくるものに関しての見え方、そして視線の向きに近づいてくる速度「視線方向速度」が話題になっています。4匹の亀がそれぞれ他の亀を目指して一斉に動き出すときの動き方など、塾や学校で習ったことがそのまま使えない、思考力を要する出題も例年通り。
大問3は大気圧に関する問題。水銀柱と大気圧の釣り合いに関する問題では正確な計算力が試されます。話題としては塾のテキストにも出てくるものですが、真っ向から取り組まされることのない問題です。
近年の中学入試の問題は、いわゆる「知識」だけではなんともならないものが多くなっています。一方、塾では中学校が新たに出した問題をテキストに盛り込み、生徒たちの思考力を伸ばそうとします。
入試が行われるたびに塾のテキストはそうやって「進化」するのですが、子どもたちの中にはそれを「覚えること」でなんとかしようとする子が出てきます。あまりにも塾で求められることが多くなりすぎていて、取捨選択してじっくり考えるという選択肢がとれなかった子(ご家庭?)です。
すべての問題を暗記することなど不可能だし、そんな勉強をしても「考える」という要素が勉強の中に少なければ面白くありません。塾の宿題を嫌がるようになる子の中には、こういう状態になっている子が多いのです。
もちろん勉強には「覚える」という要素も絶対に必要です。しかしそれだけではいわゆる「難関校」には太刀打ちできません。
たとえば以下の問題は私の著書「頭がよくなる 謎解き理科ドリル」に掲載したものですが、問題の内容は今年の灘中学校の大問3の問3と同じものです。そういう意味では「的中」ともいえます。こういうことを声高に「宣伝」する塾もありますが、そんなことも「暗記型」の子どもを生み出す一因となっています。
2つの問題を書き並べてみます。
★「頭がよくなる 謎解き理科ドリル 思考問題編 問題7」
あるキャベツ畑でモンシロチョウを20頭捕まえました。この20頭に印をつけ放し、また次の日に同じ場所でモンシロチョウを30頭つかまえたところ、30頭のうち6頭に印がついていました。このキャベツ畑にはおよそ何頭のモンシロチョウがいると考えられますか。
★灘中学校2017年 理科 大問3 問3
「別の昆虫」の数を調べたいと思います。池の水を抜くことは不適切なので、次のような方法を試しました。
魚の「いない池」で「別の昆虫」を21匹捕まえ、それらに目印をつけて放しました。後日30匹捕まえると、うち3匹に印がついていました。「いない池」には「別の昆虫」は全部で何匹生息していたと推測できますか。
いかがでしょう。
入試問題の大問の途中なので「いない池」「別の昆虫」など文を読みづらく感じさせるような言葉が出てきますが、本質的には同じ考え方で解く問題です。
しかし極端な話、暗記中心の勉強をしてきた子には、この2つが同じ問題に見えないのです。
ごくごくわかりやすく「そっくり」でないと同じものであると見抜けない、これが「復習テストでは点が取れるけど実力テストではとれない」子の特徴です。
もしも今お子さんが「理科の勉強がおもしろくない」「理科が嫌い」というなら、新学年を迎える前に勉強のしかたを見直すといいと思います。いろんなところで言っているのですが、時間に余裕があるなら「宿題を何度も繰り返し」はやめて、良問をじっくり考え抜く時間をぜひふだんの学習にとり入れてみてください。
よければ手にいとってみてください(^^)
よければ手にいとってみてください(^^)