理科が苦手になる理由
■理科が苦手になるのは先生のせい?
「中学受験情報局 かしこい塾の使い方」の記事インタビューで、「高学年で算数が苦手になる理由」についてお答えしました。
「高学年で算数ができなくなる」のではなく、「できないことが明るみに出る」というか、4年生くらいまでは気づかなかった勉強のしかたの「弱点」がはっきりしてくるのです。
算数の場合、「暗記型の勉強がよくない」とよく言われます。大量の宿題をこなすうち、だんだん「とにかく習った解き方に当てはめる」という勉強方法になってしまい、「どうしてその解き方で解くのか」を考えることがなくなってしまうと、高学年の複雑で高度な問題に対応できなくなる、というものです。
では、理科の場合はどうでしょうか?
理科が苦手なお子さんのひとつの典型として、物理や化学の計算が苦手というものがあります。
この「理科の計算が苦手」というお子さん、全くわかっていないのではなく、理屈が腑に落ちていないことが多いというお話は、別の機会にもしました。
この「腑に落ちていない」状態、自戒の念を込めて申し上げますが、何割かは教える先生のせいです。
■「アルキメデスの原理」を理解させることが重要?
たとえば浮力。うろ覚え、不確かな知識と、納得いかない感じのまま問題を解いているお子さんが多い単元です。非常に抽象度が高く、お子さんたちに理解されにくい分野ですね。
「液体中の物体は、その押しのけた液体の重さに等しい浮力を受ける」
この「アルキメデスの原理」を、そのままお子どもたち伝えて「なるほど!」となる子はほとんどいません。
そこで
「たとえば、こうやって水につかっている物体があるとするでしょ?この物体が100cm3の体積だとして、今この物体があるところにもともとあった水、物体に押しのけられた水が100cm3ってことじゃん。だから、その100cm3の水の重さ、100gで押し返されるわけだよ。」
と補足説明。
「たとえば、こうやって水につかっている物体があるとするでしょ?この物体が100cm3の体積だとして、今この物体があるところにもともとあった水、物体に押しのけられた水が100cm3ってことじゃん。だから、その100cm3の水の重さ、100gで押し返されるわけだよ。」
と補足説明。
・・・ここまでで「ああ、そういうことか」となる子が、クラスの半分くらい。あとの半分の子、いや、いま「そういうことか」と思った子の頭の中にも「?」は残っています。騙されたような感じとでも言えばいいでしょうか。
「・・・なんで?」
という感じ。
特に小学生に物理を教える場合、いかに卑近に「実感」させるかが大切だと私は考えています。
講師 「お風呂で洗面器を湯船に浮かべたことある?」
生徒 「ある〜」
講師 「じゃ、それをぐい〜って押したことあるやろ?」
生徒 「あるある!」
講師 「けっこう力いるよね。」
生徒 「うん、なかなか沈まないよ。」
講師 「ぱっと手を放したら?」
生徒 「跳ね返ってくるよ。」
講師 「その押し返してくる感じが、浮力なんだ。」
ふだん感じる「あれ」が浮力だったんだ、という実感。
■喩え話、ストーリーで楽しく
「今日帰ったら、君んちに知らないおじさんが上がり込んで、ご飯を食べていました。さて、どうする?」
こんな質問をお子さんにすると、眉をひそめます。
そこで、選択肢を与えます。
「じゃ、次の2つから選んでね。
A. 警察に通報して、おまわりさんに追い出してもらう
B. そのまま仲良く一緒に暮らす
さて、どっちにする?」
もちろんお子さんは「A!」と元気よく答えます。そこで、
「水さんたちだっておんなじなんだよ。コイツ(物体)が入ってくるまでは、この場所は水さんたちのものだったんだ。仲良くみんなで暮らしていたのに、コイツ(物体)が入ってきたばっかりに、100cm3の水さんたちは追い出されてしまったんだ・・・」
一斉授業のクラスなんかだと、このあたりで
「かわいそう」
「水さんがんばれ〜」
「物体出て行け〜」
といった「合いの手」が入ります。
「そこで!押しのけられた水さんたちが一致団結!立ち退き運動です!100cm3の水さんたちが押し返すぞ〜!」
「よっしゃ〜!」
みたいに盛り上がり、「押しのけたら押し返される」という「当たり前のこと」が子どもたちの頭にすっと入っていきます。
もちろん講師は、照れることなどなくやり切ります(笑)。
はじめに「わからない」と感じさせてしまうと、お子さんの思考はそこでストップします。そんなことが何回か続くと「理科の計算は難しい」となってしまうのです。
もしもお子さんが理科の計算が苦手なら、一度でいいので本当に技術のある先生にみてもらうといいかもしれません。探すのは大変ですが、個別指導の教室などで体験授業を受けてみて、お母さんもそれを見学するのです。
理科が得意でないお母さんでも、時々吹き出したりしながら一緒に授業を受けたら、「なぁんだ、そんなに簡単なことだったんだ」と、できるようになってしまう授業、そんな授業なら本物です。
写真は美ヶ原。標高2000m近い場所に行くと「地上(海抜0m)から離れると気温が下がる」を痛いほど「体感」できます。こういった経験も印象に残りますね。