親子でもそれぞれ得意な勉強スタイルがある
こんにちは! 小川大介です。
中学受験といえば、これまでは、
「お母さんと子どもの二人三脚」と言われていました。
ところが、
最近は子どもの勉強に関して熱心なお父さんが増えています。
わが子に関心を持つことはとても良いことですが、
ただ、ときに力が入り過ぎて、
子どもの伸びを邪魔してしまうケースが
少なからず見られることが気にかかっています。
例えばこんな感じです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
〈小6男子のお父さんの相談〉
実は私も中学受験を経験しているのですが、
これまでは塾に任せておけばいいと思って、
子どもの勉強をまったく見て来なかったのです。
ところがある時、テストの答案を見たら、
半分しかうまっていなくて、これはマズイと思いました。
原因はどうも計算に時間がかかっているようです。
また、問題の取捨選択ができていないように思いました。
最初から同じテンポで解こうとするので、
最後までたどりつけないのです。
なぜこんなに要領が悪いのだろう。
そんな息子を見てついカーッとなって強い口調で言ってしまい、
このままでは親子関係もまずくなってしまうのではないかと心配です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中学受験経験者に限らず、
高学歴のお父さんによく見られるケースです。
“できる親”に多いのが、
「なぜこんな問題ができないのだろう?」
「こんな問題はできて当たり前だ」という考えです。
そういうとき、私はこう尋ねます。
では、お父さんご自身はなぜそれができたのですか?
子どもの時のことをちょっと思い出してみてもらえますか?
それは中学受験の時でしたか?
思い出す自分のイメージは、何歳ぐらいの時です?
小学校4年? 5年?
もしかして、中学生とか、高校生だったり?
今思い出した自分は、何歳ぐらいでしたか?
と。
今この記事を読んでくださっているあなたもそうだと思うのですが、
「自分の勉強の記憶」として自分の姿をイメージできたり、
言葉で説明できたりするのは、
たいてい中学生、高校生の時の姿なのですね。
特に、大学受験の時の記憶というものは
かなり鮮明であることが多く、
親となって子どもの学習に関わるようになった時に、
当時の記憶が前に出てきてしまうのですね。
親御さんがご自身のことを思い出していただいて、
「あっ」と自分自身を見つけ直していただけた様子を見てから、
続きの問いかけをさせていただきます。
どうでしょう?
小学生だった当時の自分に意識を戻していただいて、
あの頃の自分って、この問題は「できて当たり前」でした?
「そうですね。できましたね」と言い切れるなら、
その方法が見えているというのは素晴らしいことなので、
お子さんがイメージできるように、
具体的に、分かりやすく、
ありありとアドバイスしてあげてください。
いや、当時の自分にこれは難しかったよね・・・
と、感じるなら、
お子さんへの伝え方、期待の仕方もちょっと修正が必要ですよね。
と。
お父さんは、そうだよなという思いと、
受け入れたくないという抵抗と、
どうしたらいいんだろうという不安とが、
ぐるぐると押し問答してるように複雑な表情を浮かべながら、
徐々に「そうかもしれないな」と穏やかな雰囲気へと変わっていきました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
詳しく話を聞いてみると、
このお子さんは新聞を読んだり、
地図や図鑑を見たりすることが好きで、
知識はとてもある子でした。
ただし、物事に対しじっくり取り組むタイプで、
自分が納得しないと先に進めない子でした。
一方、お父さんは要領よく仕事ができる方で、
物事を逆算して考えることが得意な人でした。
目標があれば、
それを叶えるために今何をすべきか判断ができる。
だから、テストの問題を見ても、
100点は取れなくても、
どこを確実に正解させ、どこを捨て、
どうやったら高得点が取れるかが分かっています。
この場合、どちらが正しいか正しくないかという話ではなく、
お父さんとお子さんは同じ親子でも、
違うタイプだということに真実があります。
「親子でも別の人格」
この当たり前を受け入れられるかどうかが、
子の伸びを邪魔する親と伸ばす親の分かれ目です。
物事に対する学び方、感じとり方、
力の発揮の仕方はそれぞれ違うのですから、
お父さんは自分と同じやり方でいいのだろうか?と、
ちょっと気づけるだけでうまくいきはじめるのです。
私も小6男子の父ですからとてもよく分かるのですが、
多くの親は、心のどこかで、
わが子は自分に似て欲しいと思っています。
特に成功体験のある親ほど、
その思いは強く抱いているものです。
しかし、たとえ親子でも、親と子は違う人格です。
親御さんが中学受験経験者であっても、
同じやり方でうまくいくとは限らないし、
その時代の中学受験と今の中学受験とでは、
その中身も大きく違うことを知っておいて欲しいと思います。
もし、このお父さんがお子さんにアドバイスをするのなら、
お子さんの持ち味でもある「納得して理解する」
というやり方を活かすといいですね。
そのうえで、
テストというものは制限時間の中で、
いかに自分の持っている力と努力をアピールするかが
大切であることを教えてあげられると、なおいいでしょう。
お子さんの持ち味を伸ばした上で、
お父さんの得意分野をアドバイスするという順番ですね。
親子でもそれぞれ得意な勉強スタイルがあります。
そのことを頭にいれておけば、
親子間で起こりやすいバトルを防ぐことができます。
私たちは大人ですから、
知識さえあれば、
目の前に起きる出来事の意味を
「理性的に考える」ことができるのです。
「親子だからこそ分かる」ではなく、
「親子でも違うのだ」ということを意識して、
お子さんに合った学び方で伸ばしてあげましょう。