幼い子どもに遊びと勉強の区別はない
「将来的に中学受験をさせたいと考えているのですが、
今のうちにやらせておいた方がいいことは何ですか?」
「やはり1年生から塾に通った方がいいのでしょうか?」
「御三家に合格するような子は、
幼児期にどんな勉強をしていたのでしょうか?」
小さいお子さんをお持ちの親御さんを対象にしたセミナーで、
よくこんなご質問を受けます。
わが子を頭のいい子に育てたい。
これは親の本心だと思います。
だからといって、幼い時からドリルをやらせたり、
塾に通わせたりしても、
頭のいい子に育つというわけではありません。
誤解しないでいただきたいのですが、
塾やドリルが悪いといっているわけではありません。
そこに「楽しい!」と気持ちがあれば、
勉強を始めるのに「いつから」という決まりはありません。
ただ、塾に行かせたり、
ドリルをやらせたりすることだけが
勉強というわけではありません。
親御さん達は気づいていらっしゃらないかもしれませんが、
実は幼い子どもに遊びと勉強の区別はないのです。
どのご家庭にもある紙と鉛筆で
すぐにできるのが「線遊び」です。
お絵かきに興味がある子は1歳ごろから絵を描き始めますが、
私は自由なお絵かきとは別で「線で遊ぶ」体験を
させてあげることが大事だと思っています。
なぜなら、「線を線として描く」ことが
地頭をよくすることにつながるからです。
はじめは親子で一緒に線を描く練習をします。
「○○ちゃん、鉛筆でお母さんのあとについてきてね〜」
と声をかけ、誘導していきます。
はじめは横に1本、次は縦に1本、
そして斜めに1本といろいろな方向に線を描いていきます。
この遊びのメリットは2つあります。
一つは文字や数字を書く基本が身につくこと。
小さな子どもにとって、
線を描くというのはとても難しい作業です。
特に横に1本線を描くのは高度で、
意識して描かなければぐにゃぐにゃの線になってしまいます。
小さい頃から線遊びに馴染んでいると、
本格的に文字や数字を学び始めてからの定着が早く、
それをやってきた子とやってこなかった子との間で差が出ます。
もう一つは図形感覚が磨かれることです。
線遊びに慣れてきたら、
次は三角形、四角形、丸を描く練習をします。
ポイントは、親子で一緒に楽しむこと。
自分で掛けるようになったら、
好きなだけ描かせてあげましょう。
図をキレイに描くというのは、
描く前にどこへ線を引けばいいのか、
その長さや割合を紙の上に見当をつけるという
高度な技が必要になります。
また、一つの図形を観察して、
それを描き写す作業自体も子どもの成長にとても役立ちます。
中学受験では、算数は重要科目です。
なぜなら、一つの問題の配点が大きく、
得意だと大きなアドバンテージになるからです。
中学受験の算数入試で必ず出題されるのが、図形問題です。
図形問題を解くときに欠かせないのが図形を描くことです。
私はこれまで多くの子どもの受験指導に携わってきましたが、
学力が高い子は総じて算数が得意で、
図を描くのがうまい。
では、そういう子は
どうして上手に描けるようになったのかといえば、
それは幼い時にたくさん線や図形を描いてきたからなのです。
このように言うと、「じゃあ、今日からやらせなきゃ!」
と前のめりになってしまう親御さんは少なくありませんが、
“勉強”という形で強制させると、
子どもの気分は乗りません。
ここは親御さんの腕のみせどころで、
うまく遊びとして乗せてあげながら、
線に親しみ、図形感覚を磨いていきましょう。
家庭でできる遊び学習は他にもあります。
例えば「しりとり」は語彙力を身に付けるのに最適です。
しりとりをする時は、
相手の言葉を聞きながらも、
次に何を言うか自分の頭の中で考えます。
そのときに簡単な言葉をあげて、
次に相手を困らせるか(「先に言われてしまった!」と言わせたい)、
あるいは今ここで難しい言葉を披露して相手を驚かせようかとか
(「こんな言葉を知っていたなんてスゴイ!」と言わせたい)など、
あれこれ作戦を練ります。
一方で相手と同じ言葉を言わないようにと、
相手の言葉をしっかり記憶しておく必要があります。
自分が言う言葉をリストアップしておきながら、
相手が言った言葉も記憶しておく。
実は、しりとりはとても頭が鍛えられる遊びなのです。
そして、遊びながら
「なるほど、その言葉を今度使ってみよう」と
言葉をどんどん吸収していきます。
中学受験の国語で最も大事なのは語彙力です。
どんなに速く文章が読めても、
知らない言葉だらけでは内容の読み取りはおぼつきません。
子どもは言葉を耳から覚えます。
では、幼少期からその言葉を
最も吸収する場所はどこかといえば、家庭です。
言葉は家庭の中で育まれていくものなのです。
子どもは「楽しい!」と思えることは、
どんどん夢中になります。
幼児期の学習は「楽しい!」という気持ちを
大事にしてあげましょう。
楽しさこそが、学びの土台となります。
詳しくは、新著『5歳から始める最高の中学受験』
(青春出版社)に詳しく紹介しています。
ぜひ、ご参考にしてみてくださいね。