第570回 女子中の入試問題 速さ 3
「第570回 女子中の入試問題 速さ 3」
2021年度に女子中の入試で出された「速さ」の問題から、前回は大問形式の「旅人算」について考えました。
今回のテーマも引き続き「旅人算」ですが、少し難しい定番の問題を見ていこうと思います。
【問題】AとBが同時に会社を出発して18km離れたO会社へ向かいます。Aは初めタクシーに乗り、途中で降りて徒歩で向かいました。Bは初め徒歩で向かいましたが、Aを乗せていたタクシーが戻ってきたのでそれに乗ってO会社へ向かったところ、Aより16分遅れて到着しました。タクシーの走る速さは毎時45km、2人の歩く速さは毎時5kmです。グラフはかかった時間と距離の関係を表したものです。
(1)2人が同時に到着するためには、Aは出発して何kmのところでタクシーを降りればよいですか。
(2)グラフのxはいくつですか。
(大妻中学校 2021年 問題10)
【考え方】
(1)2人が同時に到着する様子を線分図に表すと次のようになります。
上の線分図の赤色点線で囲まれた部分に着目すると、タクシーとBについて時間が○~□で同じですから、進んだ距離の比は速さの比と同じです。
速さの比 タクシー:B=45km/時:5km/時=9:1
↓
距離の比タクシー:B=⑨:①
⑨+①=⑩=ア×2
⑩÷2=⑤…ア
また、2人の歩く速さは同じですから、同時につくためには同じ距離だけ歩く必要がありますので、イの距離は①です。
⑤+①=⑥=18km
①=18÷6=3(km)
3×5=15(km)
答え 15km
(2)2人の様子を線分図に表し、タクシーとB(図1)、タクシーとA(図2)に分けて考えます。
2つの図より、
5○+1□=18km
1○+9□-4○+12km=18km
↓
1□=1.75km
(18-1.75)÷45×60=21 2/3(分)
答え 21 2/3
本問の(1)は「お父さん問題」とも呼ばれる定番の問題です。
(2)の問題用のグラフが与えられたことで一瞬混乱するかもしれませんが、問題文をよく読むといつもの「お父さん問題」だと気づけます。
「18km」という距離の条件があることから線分図に整理して解くとよいでしょう。(ダイヤグラムを用いてもOKです。)
(2)は(1)よりは難しい問題です。
「16分」という時間の条件があることとグラフが与えられていることからダイヤグラムを用いて解くこともできますが、上記のように線分図に整理すると「同時マーク」を利用した「いつもの解き方」ができますので、考えやすくなると思います。
では、次の問題です。
【問題】池の周りにある散歩道を、恵子さんと花子さんが歩きました。恵子さんは分速72mで時計回りにA地点から歩き出し、花子さんは恵子さんとは逆回りにB地点から歩き出します。2人はそれぞれA、B地点を同時に出発し、5分後にはじめて出会いました。出会ってから4分後、花子さんはA地点を通過しました。2回目に2人が出会ってから9分24秒後、花子さんははじめてB地点にもどりました。この散歩道の1周は何mですか。なお、この問題は解答までの考え方を表す式や文章・図などを書きなさい。
(洗足学園中学校 2021年 問題3-(4))
【考え方】
池タイプの旅人算です。
問題の条件を円形の線分図に整理して考えていきましょう。
出発してから花子がA地点を通過するまでの図は次の通りです。
線分図解法の
1 →に距離を書く
2 →に距離比を書く
という原則に従い、まずは距離を書いて考えてみましょう。
72m/分×5分=360m … A~C
360m÷4分=90m/分 … 花子の速さ
90m/分×5分=450m … B~C
残りの条件についても図をかいていきます。
上の右の図より、
D~Bは90m/分×9.4分=846m
とわかります。
846m+450m=1246m … 1回目に出会ってから2回目に出会うまでに恵子が進む距離
1246m÷72m/分=18分 …1回目に出会ってから2回目に出会うまでの時間
(72m/分+90m/分)×18分=2916m
答え 2916m
本問は池タイプの旅人算のやや難しい定番問題です。
上記の解き方では初めに距離を書くことで速さや時間が順にわかりましたが、考え方の途中で「比」を使ってもOKです。
また、ここでは線分図を利用しましたが、時間条件が多いことから下記のようなダイヤグラムをかいて解くこともできます。
今回は、2021年度の女子中の入試問題の中から、少し難しめの定番問題をご紹介しました。
パターンとして知っておくことも大切な問題ですが、解き方において、条件整理の選び方、線分図解法やダイヤグラム解法の原則を確認することができる良問でもあります。
線分図やダイヤグラムが使えるようになったら、これらの問題で解法の習熟度をチェックしてみるとよいでしょう。