第569回 女子中の入試問題 速さ 2
「第569回 女子中の入試問題 速さ 2」
前回から、2021年度に女子中の入試で出された「速さ」について見ています。
今回は「旅人算」に関する大問形式の問題を取り上げます。
【問題】姉と妹は家から3.2km離れた駅まで徒歩で往復しました。姉が妹より5分遅れて出発したところ、妹が駅に到着する前に、駅から300mの地点で妹に追いつきました。また、姉が家に戻ったときには、妹はまだ家から700mの地点にいました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)姉と妹の歩く速さの比を最も簡単な整数の比で答えなさい。
(2)姉の歩く速さは毎分何mですか。
(白百合学園中学校 2021年 問題1)
【考え方】
距離の条件(3つ)が時間の条件(1つ)よりも多い問題ですから、線分図で条件を整理することにします。
(1)上の線分図の赤色点線で囲まれた部分に着目すると、姉が
300m+3200m=3500m
進む間に、妹は
3500m-700m=2800m
進むことがわかります。
同じ時間に進む距離の比は速さの比と同じですから、
3500:2800=5:4
が答えです。
答え 5:4
(2)線分図を用いて問題を解くときの方針は、
① →に距離を書く
② →に距離の比を書く
ですから、(1)でわかった「同じ時間に進む距離の比は5:4」を書きこみます。
⑤=3200m-300m=2900m
①=2900m÷5=580m … 妹が5分間で進む距離
580m÷5分=116m/分 … 妹の速さ
116m/分×5/4=145m/分
答え 毎分145m
本問は、線分図の「同時マーク(同じ時刻にいる場所を表すマーク)」に着目して距離の比を読み取ったり、書いたりできるかが確認できる問題です。
●~○は姉も妹も進む時間が同じ区間なので、そこで「距離の比=速さの比」が利用できたかを確認してみましょう。
では、次の問題です。
【問題】兄と弟が同時に地点Aを出発し、地点Bまで800mの直線コースをそれぞれ一定の速さで走って往復しました。グラフは2人が出発してからの時間と、2人の地点Aからの距離の関係を表したものです。次の問いに答えなさい。
(1)兄の走る速さは、時速何kmですか。
(2)兄がB地点に着いたとき、弟は地点Aから何mの地点にいますか。
(3)出発後に初めて2人が出会うのは、2人が出発してから何分後ですか。
(4)2人が出発してから弟が地点Aにもどるまでの、2人の間の距離を表すグラフを、下のグラフの図にかきなさい。ただし、図には参考として、2人が出発してからの時間と、2人の地点Aからの距離の関係を表したグラフがかかれています。
(学習院女子中等科 2021年 問題4)
【考え方】
(1)グラフより、兄は6分でAB間を1往復したことがわかります。
6分÷2=3分 … 兄が800mを走る時間
800m÷3分=800/3m/分 … 兄の速さ
800/3m/分×60÷1000=16km/時
答え 時速16km
(2)グラフより、弟は4分でAからBまでの800mを走ったことがわかります。
800m÷4分=200m/分 … 弟の速さ(時速12km)
兄が地点Bに着いたのは出発してから3分後ですから、そのとき弟は地点Aから
200m/分×3分=600m
の地点にいます。
答え 600m
(3)2人のグラフが交わる点が2人が出会ったところです。
ここからは、次のようにダイヤグラム解法でも線分図解法でも解くことができます。
答え 3 3/7分後
(4)(2)より、3分後に2人の間の距離が
800m-600m=200m
になることがわかっています。
その後は姉が走る向きを変えるために2人の間の距離は縮まっていき、(3)で求めた3 3/7分後に2人が出会うので、その距離が0mとなります。
さらに2人が出発してから4分後に妹が地点Bについたとき、姉は
800/3m/分×(4分-3分)=800/3m
だけ妹の先にいます。
そして2人が出発してから6分後に姉が地点Aにもどったとき、妹は地点Aまであと
8分-6分=2分
のところにいますから、2人の間の距離は
200m/分×2分=400m
あり、その2分後に妹が地点Aにもどって2人の間の距離が0mとなります。
答え
本問は、(1)、(2)、(4)がグラフの読み取り力、(3)はダイヤグラムの5原則の確認ができる問題でした。
特に(4)は、進む向きが変わった後や一方が先に目的地に着いた後の2人の間の距離の変化を読み取る大切な問題です。
今回は、2021年度に女子中の入試で出された「旅人算」の大問形式の問題についてみてきました。
大問形式の問題が苦手なときは、前回ご紹介した「一行問題」や今回の問題などの線分図やグラフを自分で書くことができるかチェックして、どの部分を強化すればよいかを見つけていきましょう。