第568回 女子中の入試問題 速さ 1
「第568回 女子中の入試問題 速さ 1」
女子中の2021年度の入試問題について見てきています。
ここまで「数の性質」、「比と割合」について考えてきました。
今回からは「速さ」の問題を取り扱っていきます。
はじめは「速さの1行問題」です。
【問題】Aさんは毎日家から学校までの道のりを10分歩いています。今日もいつもと同じ速さで学校に向かいましたが、家を出て180mのところで忘れ物に気づき家に戻り再び学校に向かいました。そのため、はじめに家を出てから学校に到着するまでに16分かかりました。Aさんの家から学校までの道のりは何mですか。ただし、Aさんの進む速さは変わらないものとし、家に戻ってから再び出発するまでの時間は考えないものとします。
(品川女子学院中等部 2021年 問題2-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
速さの問題を解くときは、問題の条件を線分図やダイヤグラムに整理することが基本です。
原則として、距離の条件が多いときは線分図、時間の条件が多いときはダイヤグラムを選びますが、速さをまだ詳しく学んでいないときは自分が得意な整理方法でも構いません。
本問では、距離の条件として「180m」の1つ、時間の条件として「10分」「16分」の2つが与えられていますので、ダイヤグラムをかくことにします。
このとき、次のことに気をつけます。
1 時間の条件をかいてからグラフをかく
2 「いつも(予定)」と「今日(実際)」の両方をかく
3 同じ速さのグラフは平行にかく
グラフがかけたら、ダイヤグラムの大原則と5原則が使えるところを探します。
Aさんは180mを
6分÷2=3分
で歩いていますから、Aさんの速さは
180m÷3分=60m/分
です。
60m/分×10分=600m
答え 600m
本問はダイヤグラムのかき方と読み取るポイントが抑えられているかが確認できる問題でした。
なお、線分図を利用した場合は、「いつもより6分多く時間がかかったのは、180m×2=360m多く歩いたから」と読み取って、歩く速さを求めることができます。
では、次の問題を見ていきましょう。
【問題】静水上で一定の速さで進むボートがあります。このボートで、川の上流にあるA地点から下流にあるB地点まで下ったところ、8分かかりました。また、同じボートでB地点からA地点まで上ったところ、14分かかりました。川の流れる速さが毎分36mであるとき、A地点からB地点までの距離は何mですか。
(吉祥女子中学校 2021年 問題1-(6))
【考え方】
流水算は、問題を状況図(線分図)に表すと考えやすくなります。
この図から「速さの3公式」は利用できないとわかりますから、「比を利用する」または「距離を仮定する」という解き方を用いる問題だと気づけます。
速さをまだ詳しく学んでいないときは「距離を仮定する(1または時間の最小公倍数)」を選ぶと考えやすいと思いますが、ここではこれからよく使うことになる「比」を用いることにします。
速さの問題で比を用いて解くときは、原則として次のように整理します。
※「距離が同じなので、速さの比と時間の比は逆比」を用いてももちろんOKです。
流水算では、速さを次のような線分図に整理することができます。
(7-4)÷2=1.5 … 流速
36m/分÷1.5=24m/分 … 1にあたる速さ
24m/分×7=168m/分 … 下りの速さ
168m/分×8分=1344m
答え 1344m
本問は、速さの問題を解くときの方針や流水算の基本が確認できる問題でした。
では、最後に通過算の問題を見ておきましょう。
【問題】秒速25mの列車Aと秒速40mの列車Bがあり、列車Bの長さは列車Aの長さの2倍です。列車Aはトンネルに入り始めてから出終わるまでに20秒かかりました。列車Bがトンネルの中に完全にかくれていた時間は8秒でした。このトンネルの長さは何mですか。
(淑徳与野中学校 2021年 問題2-(1))
【考え方】
通過算も流水算と同じく、問題を状況図に表すと考えやすくなります。
このとき、トンネルの位置をそろえた2つの図は上下にならべて、先頭や最後尾など列車の1つの点の動きについて→をかきます。
線分図は、
1 →に距離を書く
2 →に距離の比を書く
ことがポイントです。
上の図より、
500m-320m=①+②
①=60m
とわかります。
500m-60m=440m
答え 440m
本問は、通過算の図のかき方と線分図のポイントが確認できる問題でした。
今回は2021年度の中学入試問題の中から、女子中で出された速さの1行問題をご紹介しました。
上記の3問で用いた図やグラフ、考え方は、どれも速さの問題を解く上でとても大切なものです。速さの応用問題が苦手なときは、これらがマスターできているかを確認してみるとよいでしょう。