第557回 共学校の場合の数 3
「第557回 共学校の場合の数 3」
前々回から、近年に共学校の中学入試で出された「場合の数」の問題を見てきています。今回取り扱うテーマは、中学入試でもよく出される「道順」の問題です。
【問題】下の図のように直角に交わる道があり、×の道は通行止めです。A地点からB地点まで遠回りせずに行く方法は全部で何通りありますか。
(早稲田実業学校中等部 2020年 問題1-(3))
【考え方】「道順」の問題の基本的な解き方は、「1・1解法(イチイチ解法)」ともいわれる書き出しです。
はじめに、次のような道でAからBまで遠回りせずに行く方法を見ていきましょう。
①Aからアへの行き方は1通り、Aからイへの行き方も1通りですから、次のように「1」を書きます。
②アからウへの行き方は1通り、イからウへの行き方も1通りですから、Aからウへの行き方は
1+1=2通り
ありますので、ウの「交差点」に「2」を書きます。
③アからエへの行き方は1通りですから、エの「交差点」に「1」を書きます。
④Aからウを通ってBへの行き方は2通り、Aからエを通ってBへの行き方は1通りですから、AからBへの行き方は全部で
2通り+1通り=3通り
あることが求められます。
このように「1・1解法」は、「ある交差点につながっている1つ前の交差点に書かれた数をたす」ことをくり返していく解き方です。
ですから、本問の場合は次のようになります。
上の図でCに数を書くとき、「×」を通ることができないことに注意します。
したがって、Cに書く数は「4」です。
続けて数を書いていきます。
よって、AからBへの行き方は、
52通り+38通り=90通り
とわかります。
答え 90通り
上記のように、「道順」の問題は「1・1解法」で数を書きこんでいきますが、「通行止め(×)」があると少しまぎらわしくなります。
そこで、次のような工夫をすることで考えやすくすることができます。
〈別解…「余事象」の利用〉
はじめに、「×」がないものとして数を書いていきます。
すべての道が通れるとき、AからBへの行き方は126通りあります。
次に、「必ず×の道を通る」ときの行き方を求めます。
「必ず×の道を通る」ためには、次の図の網目部分しか通ることができません。
上の図のようにAからDへの行き方は6通りあり、DからCは1通り、CからBは網目部分の形がAからDの場合と同じですから行き方は6通りあります。
ですから、A→D→C→Bの行き方は、
6通り×1通り×6通り=36通り
です。
AからBまでのすべての行き方が126通り、そのうち「必ず×の道を通る」ときの行き方が36通りですから、AからBまで×を通らない行き方は
126通り-36通り=90通り
とわかります。
このように、「すべての場合から、答え以外の場合を引く」という考え方を余事象といいます。
では、もう1問です。
【問題】AからBまでの行き方で、点Pを通り、点Qを通らない最短の行き方は何通りですか。
(芝浦工業大学附属中学校 2020年 問題1-(5))
【考え方】はじめに「点Pを通り」という条件から考えると、次の図のように網目部分の辺上を通ってCに行くことになり、ここまでの道順は2通りです。
次にCからBに行く道順は、さきほどの「余事象」を利用すれば、「CからBへのすべての場合-CからQを通ってBに行く場合」で求められます。
まず、「CからBへのすべての場合」を求めますが、ここでは「1・1解法」ではなく、「組み合わせ(計算)」を使ってみようと思います。
1問目の例と同じ図で考えてみましょう。
AからBまでの3通りの行き方は次の通りです。
上の図を見ると、いずれの行き方も「→」「→」「↑」の3つの矢印を並べかえたもの(→→↑、→↑→、↑→→)になっています。
これは、矢印を入れる箱を3つ用意し、その中に「→」「→」「↑」を入れる場合を考えることと同じです。
数の少ない「↑」に着目すると、「↑」の入れ方が3通りあり、3箱のうちのどれかに「↑」を入れると、「→」「→」は残りの2箱に入れることになりますから、矢印の入れ方は全部で3通りあることがわかります。
同様に、本問のCからBへ行く場合も、「→」「→」「↑」「↑」「↑」の5つの矢印を並べかえる問題と考えることができます。
5つの箱を用意して、はじめに「→」「→」の入れ方を考えてみます。
説明のため、箱にア、イ、ウ、エ、オと名前をつけておきます。
1つめの「→」の入れ方はア~オの5通り、2つめの「→」の入れ方は1つめ以外の4通りありますから、全部で
5通り×4通り=20通り
です。
ところが、1つめの「→」をアに入れ、2つめの「→」をイに入れても、1つめの「→」をイに入れ、2つめの「→」をアに入れても、(→→↑↑↑)と同じ並びになりますから、この入れ方は「2つで1つ」となります。
つまり、半分になるということです。
したがって、「→」「→」「↑」「↑」「↑」の5つの矢印の並べ方は、
5通り×4通り÷2=10通り
となり、これがCからBへのすべての場合です。
CからQを通ってBに行く場合は、下の図より2通りとわかります。
10通り-2通り=8通り … CからQを通らずにBに行く場合
AからPを通ってCへ行く道順は2通りでしかたら、AからPを通り、Qを通らないBまでの行き方は、
2通り×8通り=16通り
です。
答え 16通り
本問は前問の応用として、「余事象」と「組み合わせ(計算)」を使用しましたが、答えが16通りと少ない問題ですから、「1・1解法」を利用する方が簡単に解くことができるでしょう。
ですが、道順のマス目が多くなったときは、これらの工夫が活きてきます。
「1・1解法」がいつでも正確に使えるようになっているのであれば、今回の1問目を「余事象」と「組み合わせ(計算)」で解くことにもチャレンジしてみてください。