第542回 共学校の平面図形 3
「第542回 共学校の平面図形 3」
ここまで、近年の男女共学校の中学入試で出された「平面図形」の問題を見てきています。
前回取り扱いました「平面図形の面積」の定番の問題に続き、今回は、少し解き方に迷うような問題を取り扱います。
まずは1問目です。
【問題】
縦9cm、横12cmの長方形があります。斜線部分の面積は何cm2ですか。
(東京農業大学第一高等学校中等部 2020年 問題4-(1))
【考え方】
求める部分が面積公式のない四角形ですから、「三角形に分割」、「周りから引く」という2つの方針が考えられます。
(解法1…三角形に分割)
次の図のように、求める部分を三角形に分割すると★の面積は
3cm×5cm÷2=7.5cm2
と分かりますので、残りの☆の求め方を考えることになります。
☆を「琵琶湖型三角形(傾いた三角形)」と考えると、周りから引けることに気付けます。
4.5cm×6cm-(5cm×3cm÷2+1cm×4.5cm÷2+6cm×1.5cm÷2)=12.75cm2 … ☆
(7.5cm2+12.75cm2)×2=40.5cm2
答え 40.5cm2
※4分割した長方形から斜線部分を引いて2倍する解き方もOKです。
(別解1)
次の図のように補助線を書き加え、中央にできた平行四辺形の面積を4等分しても☆の面積を求めることができます。
(別解2)
次の図のように分割することもできます。
この場合も、もとの長方形を4分割する補助線から三角形の高さが分かりますので、面積を求めることができます。
(解法2…周りから引く)
長方形全体から◎の面積を引いて求めます。
この場合も、先ほどと同じ補助線で◎の面積を求めることができます。
本問は、いくつもの解き方がある問題で迷うかも知れませんが、最初に「面積公式のない四角形は…?」と方針を立てておくと、混乱を防ぐことができると思います。
では、次の問題を見ていきましょう。
【問題】
図は中心がO、半径が2cmの円で、直径ABとCDは垂直に交わっています。この円を中心を通るようにBE、DFで折り曲げます。色のついた部分の周りの長さは何cmですか。(円周率は3.14)
(青山学院中等部 2020年 問題12 問題文一部変更)
【考え方】
「円問題」です。
円問題で困ったときの補助線は、「中心と結ぶ」です。
この問題では円を「折り曲げ」ています=線対称ですので、「円の中心も線対称移動する」ことに注意します。
上の図で、赤色の三角形はすべて1辺の長さが半径の長さと等しい正三角形です。
従って、求める図形の周りの長さ=おうぎ形の弧3つ分の中心角は下の図より求められます。
4cm×3.14×(60度/360度+60度/360度+150度/360度)=9.42cm
答え 9.42cm
本問は、「円問題の補助線」が使えることが確認できると同時に、「折り曲げる=線対称」という知識についてもチェックができる問題でした。
図形が複雑になると間違えるような場合は、本問のように図を2つに分けて描いてから1つにまとめるようにするとよいかもしれません。
今回の最後の問題です。
【問題】
正方形と円を組み合わせてできた右の図の影のついた部分の面積は何cm2ですか。ただし、円周率は3.14とします。
(栄東中学校 2021年 問題1-(4) 問題文一部変更)
【考え方】
この問題も1問目と同様に、いくつかの解き方がありますが、今回は「ケーキの法則」を利用して解いていきます。
上の図より、正方形の面積を4、円の面積を3.14とすると、問題図の影をつけた部分の面積は
4-3.14=0.86
となります。
また、円に外接する正方形と内接する正方形(箱)の面積比は4:2=2:1より、円(ケーキ)の面積比も2:1となることが分かります。
つまり、「ひとまわり内側の面積は1/2」ということです。
これを利用すると、問題図の影のついた部分の面積も外側から順に、
1:1/2:1/4
となりますので、
10cm×10cm×0.86/4×(1+1/2+1/4)=37.625cm2
と求めることができます。
答え 37.625cm2
本問も定番の問題といえますが、それぞれの正方形の面積から円の面積、影のつい
た部分の面積を求めると、計算ミスをしかねない、ちょっと面倒な問題です。
しかし、「ケーキの法則」を使うと面積比が利用できますので、計算を楽にすることができます。
今回は、長さや面積を求める問題の中でも少し解き方に迷うようなものに取り組んでみました。
しかし、1問目は「面積公式のない四角形」を解くときの方針の立て方、2問目は「円問題の補助線」といったように、基本問題を解くときにも使用する大切な「知識」を思い出すようにすると、解き方が紛らわしい問題でも正解を増やすことができるようになると思います。
また、3問目のような公式を用いて長さや面積を計算していく問題では、「長さの比」や「面積比」を使って解くことができないかを考えるようにすると「解法の幅」を広げることができ、スキルアップにもつながっていくと思います。