第540回 共学校の平面図形 1
「第540回 共学校の平面図形 1」
近年の男女共学校の中学入試で出された問題について見てきています。
これまで、「文章題」、「比と割合」、「速さ」の単元を取り扱いました。
今回からは「平面図形」の問題を考えていこうと思います。
1回目のテーマは「角の大きさ」です。
早速、1問目から見ていきましょう。
【問題】
下の図は1辺の長さが等しい正六角形と正方形です。点Aは正六角形の対称の中心です。角アの大きさは何度ですか。
(山手学院中学校 2020年 問題2-(3) 問題文一部変更)
【考え方】
正多角形の角の大きさがテーマの問題です。
与えられている条件が少ないので、どこから手をつければよいか少し悩みそうです。
そんなときは、「正多角形は円に内接する → 円問題の仲間」ということを思い出しましょう。
「円問題」の補助線は「円の中心と結ぶ(半径)」です。
上の図で、三角形ABCはAB=CBの二等辺三角形、三角形ABDは正三角形です。
角ABC=60°+90°=150°
角BCA=(180°-150°)÷2=15°
角ア=角DBC+角BCA=90°+15°=105°
答え 105度
本問では、正多角形の補助線がポイントでしたが、他にも大切な公式がありますので、こちらも正確に憶えておきましょう。
2問目は、藤井聡太王位・棋聖の活躍で世間でも大いに話題となった、将棋の駒に関する問題です。
【問題】
図1のように、2つのアの角の大きさが等しく、2つのイの角の大きさが等しい五角形があります。
この五角形を図2のように20個並べると、外側に正二十角形ができました。また、下のように五角形を2つ並べると、BCとFEが平行になります。
この五角形のアとイの角の大きさはそれぞれ何度ですか。
(栄東中学校 2021年 問題1-(6) 問題文・図一部変更)
【考え方】
角度の問題で役に立つのが、「角の5原則」です。
「角の5原則」とは、
1.内角
2.外角
3.二等辺三角形
4.合同
5.復元
の5つの方針の立て方のことです。
初めて角の大きさの問題を学ぶときは「内角」を利用することが多いのですが、中学入試問題の場合は「外角」に着目すると計算しやすくなることが多いです。
360度÷20=18度 … 正二十角形の1つの外角の大きさ
図より、
(180°-18°)÷2=81° … 角アの大きさ
次に、問題の条件「BCとFEが平行」を使います。
上の図を見ると、「平行線のイナズマ角」問題になっていることがわかります。
上の図のように補助線を引きます。
81°-18°=63°
180°-63°=117°
答え ア 81度、イ 117度
本問は、将棋の駒という人によってはあまり馴染みのないものが題材となっていましたが、「正二十角形になる」という部分に着目すれば、図3に「正二十角形の1つの外角」の大きさを書くことができ、そこが糸口になっていることに気づけます。
ではもう1問、見ていきましょう。
【問題】
右の図で、直線AEとBDは平行です。三角形BCDと三角形FGHは直角二等辺三角形です。四角形ABGFと四角形FHDEはひし形です。点Gは直線ACの上に、点Hは直線ECの上にあります。このとき、アの角度は何度ですか。
(お茶の水女子大学附属中学校 2020年 問題2-問3 問題文一部変更)
【考え方】
問題の条件に「二等辺三角形」、「ひし形」がありますので、「長さの等しい辺がある → 二等辺三角形を探す」という方針を立てることができます。
そこで、二等辺三角形に着目しながら、図に角の大きさを書き込んでみます。
上の図より、アの角度の大きさを求めるには、三角形BCGに着目すればよいことが分かります。
(180°-45°)÷2=67.5° … 水色の角
67.5°-45°=22.5°
答え 22.5度
本問も、「角の5原則」の「二等辺三角形を探す」を用いて方針を立て、その後、「内角に着目」、「外角に着目」を使って答えを得ることができました。
今回は、2020年度、2021年度に中学入試で出された問題の中から、「角の大きさ」に関する問題をご紹介しました。
4年生などで初めて角の大きさの問題を学ぶときは、「大きさのわかる角から順に数値を書き込む」という方法でよいと思います。
しかし、5年生、6年生になりましたら、できれば今回のように、何に着目するかという方針を立てて問題を解くようにしていくと、手がかりの少ない問題でも正解できるようになると思います。
そのために、角の大きさの公式に加えて、「角の5原則」や「正多角形は円問題の仲間」ということも、知識として身につけておけるといいですね。