第537回 共学校の速さ 4
「第537回 共学校の速さ 4」
男女共学校の中学入試で近年に出された問題の中から、「速さ」の問題を見てきています。
前々回、前回と、速さのグラフに関する問題を取り扱っていますが、今回もグラフについての問題を考えてみようと思います。
1問目は、この2021年に行われた中学入試の問題からです。
【問題】
太郎君はA地を、次郎君はB地を同時に出発して、それぞれ一定の速さでA地とB地の間を何回も往復します。太郎君の歩く速さは次郎君よりも早く、グラフは太郎君と次郎君の間の距離と時間の関係を表したものです。次の( )に適当な数を入れなさい。
(1) 太郎君と次郎君が初めて出会うのは、2人が出発してから( ア )分後です。また、次郎君が初めてA地に着くのは、2人が出発してから( イ )分後です。
(2) 太郎君が次郎君を初めて追いこすのは、2人が出発してから( ウ )分後です。
(慶應義塾中等部 2021年 問題4 問題文一部変更)
【考え方】
与えられた隔たりグラフの曲がる点についてわかることを書き込むと次のようになります。
(1)
上のグラフより、
・太郎はAからBまでを13分で歩くこと
・太郎と次郎が2回目に出会うまでに24分かかること
がわかります。
そこで、2人の1回目と2回目の出会いについて線分図に整理してみます。
上の線分図の「同時マーク」に着目します。
○~□ … 出発してから2人あわせてAB間×1の距離を進んでいる
□~△ … 1回目に出会ってから2回目に出会うまでに2人あわせてAB間×2の距離を進んでいる
これらのことから、○~□の時間と□~△の時間の比は1:2であることがわかります。
24分×1/3=8分後 … 出発してから1回目に出会うまでの時間(ア)
次に、いまわかったことと、太郎はAからBまでを13分で歩くことを式に表してみます。
太郎の速さ×13分=太郎と次郎の速さの和×8分=AB間×1
太郎の速さ:太郎と次郎の速さの和=8:13
太郎の速さ:次郎の速さ=8:(13-8)=8:5
AB間にかかる時間の比 太郎:次郎=5:8
13分×8/5=20.8分 … 次郎がBからAまで歩くのにかかる時間(イ)
答え ア 8、イ 20.8
(2)
(1)でわかったことを使って通常のダイヤグラムを書き、グラフ中の相似(または等高三角形)を利用してもよいですし、AB間の距離を、
太郎の速さ 8×太郎がAからBまでにかかる時間 13分=104
(または、次郎の速さ 5×次郎がBからAまでにかかる時間 20.8分、2人の速さの和 13×出発してから1回目に出会うまでの時間 8分)
と仮定してもOKです。
ここでは、AB間=104と仮定する方法で解いていきます。
2人は向かいあって進みますから、もし、次郎がBで止まっていれば、太郎はAB間×1だけ歩くと次郎に追いつきます。
104÷(8-5)=34 2/3分後
答え ウ 34 2/3
本問は、与えられた隔たりグラフを読み取って線分図に整理して解く問題でした。
このような問題を「N回目の出会い」と呼ぶことがあります。
「N回目の出会い」の問題は、上記のように「同じ時間に2人が進む距離の和」に着目することがポイントです。
では、2問目を見ていきます。
2問目は、小問の(3)で隔たりグラフを答えとしてかく問題です。
【問題】
6km離れた2地点A、Bを兄弟2人が往復します。兄はAから自転車で、弟はBから歩いて同時に出発します。兄は出発して20分後に弟に出会い、自転車を弟に渡します。弟は自転車で進み、兄は歩きます。兄が自転車で進む速さは、兄の歩く速さの3倍です。また、弟が自転車で進む速さは、兄の歩く速さの2倍です。さらに、兄が自転車で進む速さは、弟の歩く速さの4倍です。
(1) 兄が自転車で進む速さは、分速何mですか。
(2) 兄と弟が2回目に出会うのは、出発してから何分後ですか。
(3) 2人が出発してから2回目に出会うまでの時間と2人の間の距離の関係を、解答欄のグラフにかきこみなさい。
(東京農業大学第一高等学校中等部 2020年 問題5)
【考え方】
(1)
はじめに、速さに関する条件を整理しておきます。
「兄は出発して20分後に弟に出会い」という条件がありますから、兄の自転車の速さと弟の歩く速さの和は
6000m÷20分=300m/分
です。
300m/分×12/15=240m/分
答え 分速240m
(2)
(1)より、
240m/分÷3=80m/分 … 兄の歩く速さ
240m/分÷4=60m/分 … 弟の歩く速さ
80m/分×2=160m/分 … 弟の自転車の速さ
を求めることができます。
そこで、2人が出発してから2回目に出会うまでを線分図に表してみると、次のようになります。
上の線分図より、兄と弟は1回目に出会ってから2回目に出会うまでに2人あわせて
6000m×2=12000m
進むことがわかりますので、
20分+12000m÷(80m/分+160m/分)=70分後
と求められます。
答え 70分後
(3)
(2)の線分図を利用します。
60m/分×20分=1200m … Bから1200mの地点で1回目に出会う
1200m÷80m/分=15分 … 1回目に出会ってから15分後に兄がBに着く
(80m/分+160m/分) ×15分=3600m … そのときの2人の隔たり
(6000m-3600m)÷160m/分=15分 … その後15分で弟がAに着く
80m/分×15分=1200m … そのとき兄はBから1200mの地点にいる
6000m-1200m=4800m … そのときの2人の隔たり
以上から、2人が出発してから2回目に出会うまでの時間と2人の間の距離の関係は次のようなグラフになります。
答え (上のグラフ)
本問の(2)は「往復の出会い」に関する問題でしたので、「1回目に出会ってから2回目に出会うまでに2人が進んだ距離=1往復」を利用して解くことができました。
また、(3)は隔たりグラフをかく問題でしたので、2人が出会ったり向きを変えたりするときにグラフが曲がることから、そのときの時間や距離を計算することが必要でした。
今回は、グラフと「N回目の出会い」が合わさった問題、自分で隔たりグラフをかく問題の2つを見ました。
1問目はやや難しい「N回目の出会い」の知識を必要としましたが、これは2問目で用いた「往復の出会い」の応用といえますので、6年生の速さの学習で「往復の出会い」問題を学ぶときには、その応用として「N回目の出会い」があることを頭においた学習ができるといいですね。