第534回 共学校の速さ 1
「第534回 共学校の速さ 1」
これまで、2020年度に行われた男女共学校の入試問題から「文章題」、「比と割合」の問題について見てきました。
今回からは、「速さ」に関する問題を取り扱います。
速さの問題にも1行問題はありますが、今回は大問形式の問題をご紹介します。
1問目は、旅人算の基本が確認できる問題です。
【問題】
1周100m の走路をAさんとBさんが同じ方向に周回します。Aさんは1周を一定の速さで40秒かけて走り、Bさんは1周を一定の速さで50秒かけて走ります。午後1時ちょうどにAさんが走り始め、その12秒後にBさんが走り始めます。このとき、次の各問いに答えなさい。
(1) AさんがBさんに初めて追いつくのは、午後1時何分何秒ですか。
(2) Aさんは18周走り終えたあとにペースを落とし、19周目からは1周を一定の速さで60秒かけて走り始めました。BさんがAさんに初めて追いつくのは午後1時何分何秒ですか。
(明治大学付属明治中学校 2020年 問題2)
【考え方】
(1)
はじめに、Aさんが走り始めてから12秒後の様子を図にあらわします。
100m÷40秒=2.5m/秒 … Aさんの速さ
2.5m/秒×12秒=30m
上の図より、Aさんは70m前方にいるBさんを追いかけることがわかります。
100m÷50秒=2m/秒 … Bさんの速さ
(100m-30m)÷(2.5m/秒-2m/秒)=140秒
午後1時+12秒+140秒=午後1時2分32秒
答え (午後1時)2分32秒
(2)
Aさんが18周走り終えたときの様子を図にあらわします。
40秒×18周=720秒
(720秒-12秒)÷50秒/周=14.16周 … Bさんが走った道のり
100m×0.16周=16m
上の図のように、Aさんが出発して720秒後に、Aさんはちょうど18周してスタート地点に、Bさんは14周してさらに16m進んだ地点にいます。
この状態からAさんがペースを落とします。
100m÷60秒=5/3m/秒 … Aさんの速さ
(100m-16m)÷(2m/秒-5/3m/秒)=252秒
午後1時+720秒+252秒=午後1時16分12秒
答え (午後1時)16分12秒
本問で利用する知識は旅人算の基本公式だけですが、(2)は条件がやや複雑になっているためにまちがえてしまうこともあるでしょう。
問題の条件が少し複雑になるとまちがってしまう場合は、上記のように図をかいて状況を正確に把握するようにしましょう。
2問目も道が円の形をしている「池タイプ」の旅人算です。
【問題】
池の周りをA、B、Cの3人が走ります。3人は同じ地点を出発し、A、Bは時計回りに、Cは反時計回りに走ります。A、B、Cの速さの比を5:3:4として、次の問いに答えなさい。
(1) 3人が同時に出発したとき、AとCが初めて出会ってから10分後にBとCが初めて出会いました。このとき、Aがこの池を一周するのに何分かかるか求めなさい。
(2) A、Bが同時に出発し、その5分後にCが出発したとき、AとCが初めて出会ってから10分後にBとCが初めて出会いました。このとき、Aがこの池を一周するのに何分かかるか求めなさい。
(市川中学校 2020年 問題2)
【考え方】
(1)
旅人算の「池タイプ」のポイントは、基本公式の「2人の隔たり」が「池1周」になる点です。
上の図で、AとCが出会うまでの時間を☆分、BとCが出会うまでの時間を★分とすると、
2人の速さの和×出会うまでの時間=池1周
ですから、
(5+4)×☆分=池1周
(3+4)×★分=池1周
と表せますから、出会うまでの時間の比は、
☆分:★分=⑦:⑨
です。
⑨-⑦=10分 → ①=5分
(5+4)×35分=315 … 池1周の長さ
315÷5=63分
答え 63分
(2)
旅人算の「池タイプ」のもう1つのポイントは、出会いが1周以内におこるときは、通常の線分図で向かいあって進むときと同じように考えることもできる点です。
円をフリーハンドでかくのは難しいですから、このことが利用できると便利です。
線分図解法は、→に距離や距離比を書きこんでいくことが基本です。
A、Bの●~○、B、Cの□~△は速さと時間がわかっていますので、距離を書くことができます。
また、A、B、Cの○~□は時間が同じですから、距離の比(=速さの比)を書くことができます。
ここで赤矢印の部分に着目すると、
25+⑤=15+③+30+40
ですから、
①=30
とわかります。
25+30×(5+4)=295 … 池1周の道のり
295÷5=59分
答え 59分
本問は、旅人算の「池タイプ」のポイントと線分図の使い方(→に距離や距離比をかく)が身についているかを確認できる問題でした。
今回は、2020年度に男女共学校で出された「速さ」の問題の中から、旅人算の基本問題と池タイプの問題を取り扱いました。
2問目で見ましたように、池タイプの問題でも通常の線分図を利用することがありますので、線分図解法を身につけておくことはとても重要です。
特に、同じ時刻にいる場所を表す「同時マーク(図中の○や□など)」は、それを書くことで、「速さの3公式 速さ×時間=距離」や「速さの比=距離の比」を利用できる部分がわかりますので、とても大切な「アイテム」です。
6年生になってレベルの上がった問題を解くためにも、線分図の使い方「→に距離や距離比をかく」とあわせて、自由自在に使えるようになっておきましょう。