第521回 女子中の数の性質・規則性 2
「第521回 女子中の数の性質・規則性 2」
前回より、2020年度の女子中の入試で出された「数の性質・規則性」に取り組んでいます。
前回は「約数と倍数」の問題について考えましたが、今回も倍数に関する「倍数判定法」や「余り」がテーマとなる問題を見ていきます。
「倍数判定法」とは、わり算をしなくても、その数が何の倍数かを見分ける方法のことです。
では、さっそく問題を見ていきましょう。
1問目は「倍数判定法と場合の数」についての問題です。
【問題】
1、2、3、4、5、6から5つの数を選んで5けたの数を作ります。この数のうち、2で割り切れるが6で割り切れない数は何個あるか求めなさい。
(頌栄女子学院中学校 2020年 問題1-(9))
【考え方】
「2で割り切れる数」は2の倍数、「6で割り切れる数」は2と3の公倍数ですから、求める数は次のベン図の赤色斜線の部分です。
「2の倍数は下1けたが2の倍数」なので、一の位の数は「2、4、6」のいずれかです。
また、「3の倍数は、各位の数の和が3の倍数」なので、2の倍数のうち、この条件を満たさない赤色斜線の部分が求める数です。
このとき、「5けたの数の各位の数の和=(1~6の和)-(1~6のうち選ばない数)」であることを利用すると、選ぶ5つの数を見つけやすくなります。
(和は全部で6通りしかありませんから、順に調べていっても構いません。)
1+2+3+4+5+6=21
より、6つの数の和21は3の倍数ですから、3の倍数ではない「1、2、4、5」から1つの数を除くと5けたの数の各位の数の和も3の倍数でなくなります。
さらに、選んだ数で5けたの数を作るとき、必ず2の倍数とするために、偶数を一の位にする場合から考えることにも注意します。
72通り+48通り+48通り+72通り=240通り
答え 240個
本問のように「数の性質」の問題には、「場合の数」と融合した問題がありますので、場合の数の計算方法も問題を解く上での重要な知識です。
2問目は、「倍数判定法と余り」がテーマの問題です。
【問題】
2020+2021×2022×2023×2024を11で割ったときの余りを求めなさい。
(湘南白百合学園中学校 2020年 問題1-(3) 問題文一部変更)
【考え方】
1ヶ所だけ「+」になっている点に注意しながら解いていきます。
問題を面積図で表すと、次のようになります。
上の図より、「2020+2021×2022×2023×2024」を11で割ったときの余りは、2020を11で割った余りアと2021×…×2024を11で割った余りイの和について考えればよいことがわかります。
ところで、「2024」の1けた飛ばしの位の数についてその和を見ると、「2(千の位)+2(十の位)=4」と「0(百の位)+4(一の位)=4」で差が0ですから、2024は11の倍数です。
従って、2021×2022×2023×2024も11の倍数になりますから、イ=0となり、アが問題の答えとわかります。
2020÷11=183あまり7
答え 7
余りのたし算やひき算、かけ算は、上記のような面積図を利用すると理解しやすくなります。
今回の最後に見るのは、「割る数と余り」の問題です。
【問題】
A◎Bは、A+(A÷Bの余り)を表します。ただし、AとBは整数とします。例えば、5を3で割った余りは2なので、5◎3=5+2=7です。次の問いに答えなさい。
(1) C◎5=CとなるCは、どのような整数ですか。
(2) 168◎D=192となる整数Dをすべて求めなさい。
(東洋英和女学院中学部 2020年 問題7)
【考え方】
(1)
C◎5=C+(C÷5の余り)=C
という問題ですから、
(C÷5の余り)=0
でなければいけません。
つまり、Cは5で割ると余りが0になる数ですから、5の倍数とわかります。
答え 5の倍数(5で割り切れる整数)
(2)
168◎D=168+(168÷Dの余り)=192
という問題ですから、
(168÷Dの余り)=192-168=24
です。
つまり、
168÷D=□あまり24
ということです。
「割る数>余り」ですから、この式よりDが25以上の整数であることがわかります。
次に、このわり算をかけ算に書き換えてみます。
168=D×□+24 → D×□=144
この式から、Dは144の約数とわかりますので、それらを書き出していきます。
1、2、3、4、6、8、9、12、16、18、24、36、48、72、144
はじめに、Dが25以上の整数であることがわかっていますから、
D=36、48、72、144
が答えです。
答え 36、48、72、144
本問では、わり算の式をかけ算の式に書き直しましたが、「144÷D=□」から考えてもOKです。
今回は、「倍数判定法」と「余り」に関する問題をご紹介しました。
「数の性質」の問題には、1問目で見ましたように「場合の数」と結びついた問題もあります。
「場合の数」を5年生の最後に、「数の性質」を5年生や6年生のはじめに取り扱う塾で学んでいる場合は、小学校の冬休みなどを利用してこれらの単元のおさらいをしておくと、6年生の学習をスムーズにスタートさせることができると思います。