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文章題 その3 「これは難しいでしょ?!」

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文章題の練習問題 2011年09月06日01時06分
塩辛蜻蛉!

お元気ですか。


「台風一過」
ようやくの少なくなった雲と青く広がる大空が見えました。
そこに訪れてくれたのが、夏の名残りのシオカラトンボ。
立てていたワイパーにチョンと止まった姿、とてもかっこいいでしょ!

さて今日も「文章題」です。

今回は、「嫌い!」、「難しい!」と多くのお子さんが言うニュートン算です。

それは難しいはずです。

木の本数だから植木算、
ご石を正方形の陣形に並べるから方陣算、
2人の人が歩くから旅人算、

とは違って、

あのニュートン(の「お弟子さん」)が書いた本の中に収録されているから
ニュートン算の名がついたくらいですから!

特に、「灘中学校入試問題 1995年2日目3番」はもっとも難しいニュートン算のひとつですね。
まあ、ここまで難しい問題ならば仮に解けなくても差がつきにくいかもしれませんねが…。

しかし、「牧場に放す牛」や「湧き水とポンプ」、「行列と入場口」のような
ニュートン算の基本形はできるにこした事はありませんね。

ニュートン算の難しさはどこにあるんでしょう?

私は「言葉」と「イメージのしにくさ」にその理由があると考えています。

「総利益」や「1個あたりの利益」という言葉と考え方でつまずきやすい売買損益算と同じ理由で、
「生産量」や「消費量」という言葉、「総量」や「一日あたりの消費量」という
なじみの薄い考え方のせいだと思っています。

文章題を解きやすいと感じるお子さんは、「言葉を知っている」、
しかもその言葉からどんな状況かが自分なりに「イメージできる」ます。

「算数の語彙力」といってもよいでしょう。

例として、「牧場に放す牛の問題」を線分図で説明してみましょう。

でも、その前に、「チェック」です。

お子さんに聞いてみてください。
「差し引き」って言葉知ってる?

大人にとって当たり前のこの言葉をお子さんがある程度使えれば、きっとニュートン算も大丈夫のはず!

【問題】
100頭の牛が食べると20週間で草を食べつくす牧場があります。もし牛を130頭に増やすと15週間で草を食べつくしてしまいます。牛を60頭にすると何週間食べさせることができますか。ただし、草は毎日一定の割合ではえ、牛は1日に同じ量だけ草を食べるものとします。

この問題を線分図で解くときは、牛1頭が1週間に食べる草の量を1としておきます。

ここで必要なイメージは、
「牛が食べた草の総量=はじめに牧場に生えていた草の量+牛を放してからはえた草の総量」
という関係です。

「草を食べつくす」という言葉からこのイメージを引き出せるようにします。


線分図から、1週間ではえる草の量=10 とわかるので、
はじめに牧場にはえていた草の量=1800 が求められます。

あとは旅人算のように考えて、1800÷(1×60-10)=36週間 です。

こんなふうに、はえていたものがなくなったということは、
「食べた草の量の和」=「はじめの草とはえてくる草の和」という、
いわば当たり前のことがつかめれば、そんなに難しくはありませんね。

また、これを「1週間あたりの変化量」で考えることもできます。

この場合は、時間(20週間、15週間)の最小公倍数を利用すると良いでしょう。
つまり、はじめに牧場にはえていた草=60 と考えます。

するとこの草がなくなったのですから、1週間あたりの減り方を調べると、
60÷20=3…草がはえてきても100頭の牛がその草を食べる量よりも少ないので、はじめに牧場にはえていた草が3へる
60÷15=4…草がはえてきても130頭の牛がその草を食べる量よりも少ないので、はじめに牧場にはえていた草が4へる

ということは、
牛が30頭多いと1週間にへる草が1ちがいます。

これが牛100頭になると、
1÷30×100=10/3…牛100頭が1週間で食べる草の量

草がはえてきても100頭の牛がその草を食べる量(10/3)よりも少ないので、はじめに牧場にはえていた草が3へるのですから、
10/3-□=3 □=1/3…草が1週間にはえる量

つまり、
牧場にはえていた草=60
1週間にはえる草の量=1/3
1頭の牛が1週間に食べる草の量=1/30
とわかります。

そこで60頭にすると、1週間に 1/30×60=2 の草を食べますから、
2-1/3=5/3 ずつ、はじめに牧場にはえていた草がへることになります。
だから
60÷5/3=36週間 で草がなくなることがわかります。

線分図を描かなくてもいいのですが、こちらの方がすこし手順を長く感じるでしょうか?

このように、ニュートン算には大きく2つの解法がありますから、自分と愛称のよさそうな解法から身につけていきましょう。

ちなみに「灘中学校入試問題 1995年2日目3番」は次のような問題でした。

A市は,生活用水と農業用水に使用するため,ダムをもっている。このダムの河川からの流入量は例年平均1日1200トンであった。ところが,今年の夏は異常気象のため,河川からの流入量は年間平均の60%になるだろうと気象台から通報を受けた。そこでダムの貯水量が満水時の80%になったときに,A市は対策合議を開いたところ,現在の生活用水毎日xトン,農業用水毎日400トンの給水を続けると,90日間でダムは空になるという結論が
出た。  ところが河川からの流入量が年間平均の40%にとどまったため,30日後にはダムの貯水量は満水時の50%になってしまった。
(1)xはいくらか。
(2)ダムの満水量は何トンか。  
A市は緊急対策として,農業用水は1日350トンに減らし,生活用水も減らして,ダムが空になるまで今後60日間給水を続けることにした。
(3)生活用水を減らす割合は何%であるか。答えは小数第2位以下を切り上げて,小数第1位まで求めよ。


【灘中学校の入試問題の答え】
(1) 2240
(2) 216000トン
(3) 13.9%
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文章題の練習問題 2011年09月06日01時06分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
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