第505回 女子中の算数 比と割合 売買算1
「第505回 女子中の算数 比と割合 売買算1」
近年の中学入試から、女子中の入試問題について見てきています。
これまで、「文章題」、「比と割合」の中から「食塩水の濃さ」を取り上げてきました。
今回からは、「比と割合」の問題のうち、「売買算」を取り扱っていこうと思います。
まず見ていくのは、「売買算」の1行問題です。
【問題】
ある商品にいくらかの利益を見込んで定価をつけました。この商品を定価の15%引きで売ると利益は2000円になります。また、定価の3割引きで売ると利益は800円になります。この商品の原価を求めなさい。
(鷗友学園女子中学校 2018年 問題2)
【考え方】
売買算では、「原価+見込んだ利益=定価」、「売価-原価=利益 または、原価-売価=損失」という関係を覚えることが大切です。
この関係について、本問の条件を整理してみましょう。
問題の条件を上のような「縦に並べた線分図」に整理すると、「差」に着目しやすくなります。
定価の3割-定価の15%=2000円-800円
1200円÷0.15=8000円 … 定価
8000円×(1-0.15)-2000円 または 8000円×(1-0.3)-800円=4800円
本問のように問題の商品が1個の問題は「1個売り」とも呼ばれ、上記のような線分図に整理すると解きやすくなりますし、「限定販売」と言われる比を利用する整理方法でも正解を得ることができます。
①=400円 → 400円×17-2000円 または 400円×14-800円=4800円
では次に、「多数売り」と呼ばれる、商品の個数が2個以上の問題について見てみます。
【問題】
1個の原価が100円の商品を300個仕入れ、2割の利益を見込んで定価をつけて売りました。ところが売れ残ったので定価の1割5分引きで売ったところ、すべて売れて利益は4974円でした。定価で売れた商品の個数は何個ですか。
(横浜共立学園中学校 2019年 問題1-(5) 問題文一部改)
【考え方】
「多数売り」の問題は、表(ネコの毛を限定販売)に整理しましょう。
問題の条件を表に書いたら、空欄を埋めていきます。
すると、上の表中の赤線枠の部分が「つるかめ算」になっていることに気づけます。
(34974円-102円×300個)÷(120円-102円)=243個
このように、「多数売り」の問題は表に整理すると、どのようにして解けばよいかを見つけやすくすることができます。
なお、本問は「1個あたりの利益」に着目して、
(4974円-2円×300個)÷(20円-2円)=243個
のように解くこともできます。
最後に、「商品が壊れた」売買算の問題を見ていきます。
【問題】
ある商店で、板チョコ90枚を17000円で仕入れて、1枚250円で売りました。何枚かの板チョコがわれていて売れませんでしたが、利益は4000円でした。われていた板チョコは何枚ありましたか。
(清泉女学院中学校 2019年 問題2-(1))
【考え方】
この問題も「多数売り」ですから、前問同様、表に整理します。
前問と同じように空欄を埋めていきますが、「われていて売れませんでした」とありますから、われていた板チョコの値段には0円、われていた板チョコの売り上げ(計)も0円を記入します。
すると、定価で売った板チョコの売り上げ(計)が、
17000円+4000円=21000円
とわかります。
21000円÷250円=84枚 … 定価で売れた枚数
90枚-84枚=6枚
この問題のポイントは、「売ることができない商品の値段は0円」という点です。
ところが、同じ「売ることができない商品」がある問題でも、条件が異なると解き方も変わってきます。
【例題】
ある商品を1個500円で仕入れて、1個600円で売ることにしました。しかし、12個の商品を壊してしまって売ることができなかったので、利益は2800円でした。何個の商品を仕入れましたか。
【考え方】
壊してしまった商品の値段を0円、売り上げも0円として、問題の条件を表に整理してみます。
この表で、仕入れた個数と定価で売れた個数が同じであれば、1個あたりの利益が
600円-500円=100円
ですから、
総利益2800円÷1個あたりの利益100円=28個
となるのですが、実際には商品を12個壊してしまっていますので、この解き方は間違いです。
しかし「仕入れた個数=定価で売れた個数」であれば「総利益÷1個あたりの利益=個数」という計算ができますので、「もし、壊した12個も600円で売れたら…」と仮定すればよいことに気づけます。
上の線分図のように、「もし、壊した12個も600円で売れたら…」と仮定すると、「追加の売り上げ=追加の利益」となる点に注意します。
表の場合は、次のようになります。
10000円÷(600円-500円)=100個
今回ご紹介したように、「多数売り」の売買算は「ネコの毛を限定販売」の表に問題の条件を整理していくと、その問題の解き方に気づくことができます。
今回は、「比と割合」のうち、「売買算」の1行問題について見てきました。
売買算は、原価、定価、売価、利益(損失)、仕入れ、売り上げ、総利益など、小学生にとって馴染みのない言葉や関係式がでてきます。
ですから、売買算が苦手なときは、まずは、用語を覚えられているか、それらの関係を理解するための線分図や表をかくことができるを確認してみましょう。
その上で、線分図の見方や表の作り方などを、練習問題を通して身につけていければと思います。