第495回 合否を分ける問題の解き方 図形の移動とグラフ
「第495回 合否を分ける問題の解き方 図形の移動とグラフ」
中学入試の合否を分ける問題について、これまで「流水算」、「旅人算」、「点の移動とグラフ」、「水問題とグラフ」をテーマに見てきました。
今回も「グラフ問題」の続きとして、「図形の移動とグラフ」について考えていこうと思います。
「図形の移動とグラフ」の問題も、前回の「水問題とグラフ」と同じように、グラフが折れ曲がるときの図をかくことが大切なポイントです。
【基本問題】
下の図のような正方形ABCDと長方形EFGHがあります。グラフは、正方形ABCDを直線Lにそって毎秒1cmの速さで矢印の向きに動かしたときの、2つの図形が重なっている部分の面積と時間の関係を表しています。
このとき、次の問いに答えなさい。
(1) FGは何cmですか。
(2) 2つの図形の重なりが初めて12cm2になるのは、正方形ABCDが動きはじめてから何秒後ですか。
【解答例】
(1)
グラフが折れ曲がるときの図をかいてみます。
上の11秒後の図で、頂点B(頂点CでもOKです)に着目すると、次のことがわかります。
上の図より、
FG=11cm-5cm=6cm
と求められます。
(2)
図形から考える方法とグラフを利用する方法の2つの解き方があります。
(図形を利用する解き方)
重なりが初めて20cm2になる図を利用すると、
EF=20cm2÷5cm=4cm
となります。
従って、
となることがわかります。
3cm÷1cm/秒=3秒後
(グラフを利用する解き方)
(1)より、
となることがわかります。
このグラフに、「12cm2」を書き入れます。
グラフの中の「ピラミッド型相似」に着目すると、
となるので、答えの3秒後が求められます。
この他に「1秒あたりの面積の変化量」を利用する解き方もあります。
それでは、「図形の移動とグラフ」の問題を、合否を分けるレベルで見てみましょう。
出題校は、横浜共立学園中学校です。
2018年度 横浜共立学園中学校 入試問題 A方式 算数より
問題4 下の(図1)のように直線L上に図形アと正方形イがあります。図形アが直線L上を毎秒2cmの速さで矢印の方向に移動していきます。正方形イは動きません。下の(図2)は図形アと正方形イが重なり始めてからの時間と重なった部分の面積の関係を表したグラフです。
次の( )に当てはまる数を求めなさい。
(1) (図1)の辺ABの長さは( )cmです。
(2) (図2)の(あ)にあてはまる数は( )です。
(3) 図形アと正方形イの重なった部分の面積が36cm2になるのは、重なり始めてから( )秒後と( )秒後です。
【解答例】
基本問題と同じように、グラフが折れ曲がるときの図をかいてみます。
このとき、図形アを止めて、代わりに正方形イを左に毎秒1cmの速さで動かすと、図がかきやすくなります。
重なっている部分の面積が、5秒後まで3段階にわたって増えていることから、次のように変化していくことがわかります。
(1)
上から1番目の図より、AB=4cmとわかります。
答え 4
(2)
上から4番目の図で、
□cm=10cm-4cm=6cm
ですから、
あcm2=8cm×6cm=48cm2
です。
答え 48
(3)
上から2番目の図は正方形イが8cm動いたときですから、
8cm÷2cm/秒=4秒後
で、そのときに重なっている部分の面積は、
8cm×8cm-2cm×4cm=56cm2
です。
また、上から4番目の図は正方形イが
4cm+8cm=12cm
動いたときですから、
12cm÷2cm/秒=6秒後
です。
これらのことをグラフに書き込むと、重なった部分の面積が36cm2になる時間を求めることができます。
赤色の三角形の相似より、
(36-24):(56-24)=3:8
↓
2秒後+(4秒-2秒)×3/8=2.75秒後 … 1回目
青色の三角形の相似より、
36:48=3:4
↓
9秒-(9秒-6秒)×3/4=6.75秒後 … 2回目
答え 2.75 、 6.75
合否を分けるようなレベルの本問も、基本問題と同じようにグラフが折れ曲がるときの図をかき、グラフ中の相似を利用することで、小問を3つとも解くことができます。
ただ、基本問題に比べると、「グラフが折れ曲がるときの図をかく」部分が難しくなっています。
移動する図形が止まっている図形の辺や頂点に接したときにグラフは曲がりますから、順序よく図をかくようにしましょう。
「図形の移動とグラフ」が苦手な場合は、家庭学習で問題演習をするときに方眼ノートを使うなどして図の練習を行い、テスト用紙のようにマス目のない紙でも正確な図が書けるようになれるといいですね。