第494回 合否を分ける問題の解き方 水問題とグラフ
「第494回 合否を分ける問題の解き方 水問題とグラフ」
前回まで、「流水算」、「旅人算」、「点の移動とグラフ」をテーマにした中学入試の合否を分ける問題を見てきました。
今回は、「グラフ問題」の続きとして、「水問題とグラフ」について考えていこうと思います。
「水問題とグラフ」の問題も、「点の移動とグラフ」と同じように、グラフの読み取りが重要なポイントです。
【基本問題】
下の図のような「段」のついた直方体の水そうがあります。グラフは、この水そうに一定の割合で水を入れたときの、水の深さの変化を表しています。このとき、次の問いに答えなさい。
(1) 「段」の高さABは何cmですか。
(2) 「段」の幅ACは何cmですか。
【解答例】
(1)
「水問題とグラフ」では、グラフから読み取れることを、「水そうを真正面から見た図に書き込む」ことが解き方の基本です。
このとき、水そうとグラフを横に並べると、グラフが折れ曲がる順に、水そうの内の様子(水の入りかたや水面の位置)がわかりやすくなります。
上から1番目の図より、AB=30cmとわかります。
答え 30cm
(2)
上から2番目の図で、真正面から見た2つの長方形はどちらも高さが30cmで同じですから、面積比は横の長さの比と同じです。
また、真正面から見た2つの長方形の面積比は、その部分に水を入れるのにかかる時間の比とも同じですから、
80cm:□cm=20分:25分 → □cm=100cm … 「25分」の長方形の横の長さ
100cm-80cm=20cm
答え 20cm
この問題では、1分間に入る水の量を求めることはできませんが、「段」より上の部分も、下の部分も「奥行きが同じ直方体」ですから、真正面から見た長方形の面積比はその部分に水を入れるのにかかる時間の比と同じです。
それでは、合否を分けるレベルの問題で、この「水問題とグラフ」を見ていきましょう。
題材とする問題は、法政大学第二中学校の入試問題です。
2019年度 法政大学第二中学校 入試問題 第1回 算数より
問題6 下の図のように3辺の長さが20cm、20cm、75cmの直方体の形をしたふたのない水槽があります。この水槽には2枚の仕切り板P、Qが、側面EBCFに平行で底面に垂直に立っています。側面EBCFに沿って静かに一定の割合で水を入れていきます。水槽が満杯になったら、水を止めます。水を入れた時間(分)と、この水槽の水の深さの関係は下のグラフのようになりました。このとき、次の各問に答えなさい。ただし、水槽、仕切り板の厚みは考えないこととします。
(1) HI:IBを最も簡単な整数の比で答えなさい。
(2) 下のグラフにある(ア)に入る数を答えなさい。ただし、18分後の水の量は水槽全体の42%でした。
【解答例】
(1)
基本に従い、グラフが折れ曲がる点から読み取れることを、折れ曲がる順に、水そうを真正面から見た図に書き込みます。
上から2番目の図を見ると、HIの部分に5分、IBの部分に4分の時間がかかっていることがわかりますから、
HI:IB=5:4
が求められます。
答え 5:4
(2)
問題文中にある「18分後の水の量は水槽全体の42%」という条件の利用方法を考えます。
「水槽全体の42%」という部分は、「満水時の水の体積=100とすると、18分後の水の体積=45」という意味ですから、このことを図に書き込んでみます。
上の2つの図から、
となり、
□cm=75cm×3/5=45cm
を求めることができましたので、このことを図に書き込むと、次のようなことに気づけます。
上の図で、真正面から見た2つの長方形(水色部分)は高さが同じですから、
面積比=体積比=時間の比=底辺(横の長さ)の比
です。
(ア)分=18分×75/45=30分
答え 30
本問の(1)は「水問題とグラフ」の基本問題と同じように図をかくと正解できますが、(2)はどんな図をかけばよいかが少しわかりにくくなっています。
実は、「水問題とグラフ」の基本である「グラフが折れ曲がる点の図をかく」には、「折れ曲がる点から次に折れ曲がる点までにできる長方形を見る」ということと、「いくつかの長方形をたし合わせた大きな長方形を見る」という、2つの意味があります。
この2つの見方を使い分けることができるようになると、本問の(2)のような問題でも正解できるようになります。
「水問題とグラフ」を学ぶときは、この2つの見方が使いこなせるような問題演習ができるといいなと思います。