第483回 2020年度の中学入試 4
「第483回 2020年度の中学入試 4」
2020年度の中学入試の問題をご紹介しています。
前回は、男子御三家の中から開成中学校の入試問題を見ました。
今回は、女子御三家の桜蔭中学校の入試問題です。
2020年度の桜蔭中学校の入試問題は昨年と同様に大問4題という構成でした。
「思考力」問題が中心となっている点もこれまでと同様でしたが、問題Ⅰ、Ⅱは、順序よく考え、正確に計算をすれば正解を得ることができる問題でした。
問題Ⅲの立体図形はここ何年かの中で最も難度が高い問題でしたから、立体図形が苦手であれば問題Ⅲを後回しにして、問題Ⅳに時間をかけた方が得点しやすかったでしょう。
そこで、今回はこの問題Ⅳを取り扱ってみようと思います。
2020年度 桜蔭中学校 入試問題 算数より
問題Ⅳ 1個10g、20g、60gの球があります。10gの球には1から100までの整数のうち、4の倍数すべてが1つずつ書いてあります。20gの球には1から100までの整数のうち、3で割って1余る数すべてが1つずつ書いてあります。60gの球には1から100までの4の倍数のうち、3で割って1余る数すべてが1つずつ書いてあります。ただし、同じ重さの球にはすべて異なる数が書いてあります。
(1) 60gの球に書いてある数字を分母、20gの球に書いてある数字を分子として分数をつくります。このときできる1未満の分数のうち、分母と分子を5で約分できる分数の合計を求めなさい。
(2)
① これらの球から13個の球を選んで、その重さの合計がちょうど250gになるようにします。10gの球、20gの球、60gの球をそれぞれ何個ずつ選べばよいですか。考えられるすべての場合を答えなさい。ただし、選ばない重さの球があってもよいとします。解答欄は全部使うとは限りません。
② ①で求めた選び方の中で、60gの球の個数が2番目に多い選び方について考えます。13個の球に書かれている数の合計を4で割ると2余りました。合計が最も大きくなるとき、その合計を求めなさい。
【解答例】
(1)
60gの球に書かれている数は、4の倍数のうち3で割ると1余る数ですから、4と3の最小公倍数12までを調べた下の表から、最小が4であることがわかります。
従って、60gの球に書かれている数は4+12×□と表せ、そのうち5で約分できる数=5の倍数は
4+12×3=40
4+12×9=100
の2つだけです。
また、20gの球に書かれている数のうち、分子となる数は3で割って1余る5の倍数ですから、3と5の最小公倍数15までを調べた下の表より、最小が10であることがわかります。
従って、分子は10+15×□と表せますので、
10
10+15×1=25
10+15×2=40
10+15×3=55
10+15×4=70
10+15×5=85
10+15×6=100
の7つです。
作る分数は1未満ですから、それらの和は
10/40+25/40+10/100+25/100+40/100+55/100+70/100+85/100=3 29/40(149/40、3.725)
です。
(2)-①
という「3種のつるかめ算」です。
合計が250gという条件より、60gの球は最も多い場合で4個ですから、4個のとき、3個のとき、…と順序よく調べていきます。
60gの球が4個のとき、残り9個で10g → ×
60gの球が3個のとき、残り10個で70g → ×
60gの球が2個のとき、残り11個で130g
(130g-10g×11個)÷(20g-10g)=2個 … 20gの個数
11個-2個=9個 … 10gの個数
60gの球が1個のとき、残り12個で190g
(190g-10g×12個)÷(20g-10g)=7個 … 20gの個数
12個-7個=5個 … 10gの個数
60gの球が0個のとき、残り13個で250g
(250g-10g×13個)÷(20g-10g)=12個 … 20gの個数
13個-12個=1個 … 10gの個数
(2)-②
60gの球の個数が2番目に多い選び方は、60gの球が1個、20gの球が7個、10gの球が5個のときです。
「13個の球に書かれている数の合計を4で割ると2余る」という条件ですが、10gと60gの球に書かれている数は、それぞれ4の倍数ですからそれらの合計を4で割ったときの余りは0です。
従って、20gの球に書かれている数の合計を4で割った余りが2になればOKです。
20gの球に書かれている数を、大きい方から順に調べていきます。
上の表で、大きい方から7番目までの数の和を4で割ると余りが1となり、余りが1不足することがわかります。
そこで、7番目の82を8番目の79と入れ換えると余りの和が1増えて10となり、「4で割った余りが2」という条件を満たすことができます。
ですから、
60gの球は100の1個、
20gの球は100、97、94、91、88、85、79の7個、
10gの球は100、96、92、88、84の5個
のときの和、
100+(100+97+94+91+88+85+79)+(100+96+92+88+84)=100+634+460=1194
が答えです。
本問は、「試行」、「計算」ともそれほど複雑ではありませんし、「解法」も御三家の問題としては標準的なレベルでしたから、「正確に速く処理できる力」がポイントとなっていたといえるでしょう。
桜蔭中学校の算数の入試問題は、問題難度の順に並んでいるとは限りませんので、解ける問題を素早く見つけて時間内に解答していくことが必要だと言われていますが、2020年度の入試問題もその通りであったと思います。
解ける問題を見つけるためには、計算力、整理力、解法(知識)のそれぞれが高いレベルで身につけられていることが求められますから、5年生の学習内容に不安がある新6年生は、春休みなどを利用して5年生レベルの計算力、整理力、解法を補強し、学校別の傾向対策が始まる9月までの6年生の学習がマスターできる準備をしておくことが重要だと思います。