第482回 2020年度の中学入試 3
「第482回 2020年度の中学入試 3」
前回は2020年度の中学入試の中から、「1月校」の浦和明の星女子中学校、渋谷教育学園幕張中学校の問題の一部をご紹介しました。
そこで、今回からは首都圏で2月1日に行われた中学入試の問題を見ていこうと思います。
トップバッターは開成中学校です。
2020年度の開成中学校の入試問題は例年通りの大問4題という構成でしたが、そのうちの3題が「思考力」問題となっており、難しく感じた受験生もいたのではないでしょうか。
では、その「思考力」問題の中から、1題をご紹介していきます。
「思考力」問題によくある長文問題ですから、条件の把握と整理がポイントになっています。
2020年度 開成中学校 入試問題 算数より
問題2 平面上に、点Aを中心とする半径10mの円Xと半径20mの円Yがあり、円Xの周上を動く点Bと円Yの周上を動く点Cがあります。点Bは円Xの周上を一定の速さで反時計回りに進み、1時間で一周します。そして、点Cは円Yの周上を一定の速さで反時計回りに進み、3時間で一周します。また、点Pがあり、点Pは、次の[移動1]、[移動2]、[移動3]ができます。
現在、3点A、B、Cは図のように1列に並んでいて、点Pは点Aと重なっています。
このあと、点Pが点Aから移動して、以下のようにして点Aに戻ってくることを考えます。
点Pが上の動きを最後までできるように、①の移動の開始時と、④の移動の時間を調節します。
(1) ①の移動を開始してから③の移動で点Cに到着するまでの点Pの動きは下の図のようになります。解答欄の図に、①の移動開始時の点Bと点Cのおよその位置をそれぞれわかるように書きこみなさい。
(2) ①の移動の開始時を現在から最短で何分後にすれば、③の移動までで点Pが点Cに到着することができますか。
(3) ①の移動を開始してから⑦の移動で点Aに戻るまでに、点Pの動く道のりは最短で何mですか。四捨五入して小数第1位まで求めなさい。
【解答例】
(1)
点Pは、[移動1]では
50m×12/60時間=10m
動きますから、①や③の移動がそれぞれ12分とわかります。
また、点Bは
360°÷60分=6°/分
点Cは
360°÷180分=2°/分
の速さでそれぞれ進みます。
ですから、点Pは移動を開始してから、12分後に点Bに移り、また、
12分+8分+12分=32分後
に点Cに移ったことになります。
6°/分×12分=72°…点Pが移動を開始してから点Bに移るまでに点Bが進んだ角の大きさ
2°/分×32分=64°…点Pが移動を開始してから点Cに移るまでに点Cが進んだ角の大きさ
(2)
(1)の解答図の②の移動で点Pは、
6°/分×8分=48°
進んでいます。
72°-(64°-48°)=56°…点Pが移動を開始するときの点Bと点Cの隔たり
点Bは6°/分、点Cは2°/分で進みますので、上の図は点Bが点Cよりもあと56°多く進むとABとACが重なることを表しているとわかります。
(360°-56°)÷(6°/分-2°/分)=76分…問題のはじめの状態(現在)から点Pが移動を開始するまでの時間
答え 76分後
(3)
(1)の問題図から次のように点Pは移動します。
点Bは12分間に72°進みますから、上の3つ目の図より、
6°/分×□分+72°×2 =点Pが④の移動で進む角の大きさ
のように見えます。
しかし、点Pは点Bよりも遅い点Cと一緒に進んでいますので、実際は、点Pが④の移動をしている間に点Bは円Xを1周以上進んでいることになります。
6°/分×□分-360°+72°×2=2°/分×□分
□分=(360°-144°)÷(6°/分-2°/分)
□分=54分
ですから、点Pは、
①の移動で10m、
②の移動で点Bと一緒に8分、
③の移動で10m、
④の移動で点Cと一緒に54分、
⑤の移動で10m、
⑥の移動で点Bと一緒に8分、
⑨の移動で10m
進みます。
10m×4+20m×3.14×8分/60分×2+40m×3.14×54分/180分=94.42…m → 94.4m
答え 94.4m
(3)で④の移動を考えるとき、「遅い方の点を止めて考える」という解き方を使うこともできます。
本問のポイントは、3点P、B、Cの動きを正確に追いかける「思考力」、わかった動きを同時マークなどで見やすくする「整理力」、円周上を移動する2点の動きの「解法力」の、3つの力が使えるかという点です。
また、(1)の「およその位置をそれぞれわかるように書きこみなさい」という求めに対し、角度など「数値を書き込むと採点者に伝えやすい」ということに気づくことも大切です。
難関中を志望している新6年生は、秋以降の学校別の特訓で今回ご紹介したような「思考力」問題を解く機会もあるでしょうから、それまでに残りの2つの力、「整理力」「解法力」を身につけておくことが必要になります。
そのために6年生の前半の家庭学習においては、問題の条件を整理する、考え方を書く、解説の解き方を確認する(採点者への伝え方も学べます)などして、「整理力」や「解法力」を高めることができるといいですね。