第481回 2020年度の中学入試 2
「第481回 2020年度の中学入試 2」
2020年度の中学入試問題をご紹介しています。
前回は今年度の入試で出題が予測されていた消費税と日暦算をテーマにした問題を、灘中学校の1日目の入試問題から見ました。
今回は、今年度の中学入試で出題が考えられていたもう1つのテーマ、思考力や記述力を問う問題を見ていこうと思います。
1問目は「思考力問題」です。
1月14日に行われた浦和明の星女子中学校の第1回の入試問題から選んでみました。
2020年度 浦和明の星女子中学校 第1回入試 算数より
問題1-(7) 次の2つの表は、ある小学校のクラスで行った算数と国語のテストの結果を整理したものです。ただし、国語のテストでは1人が欠席していました。次の①~③について、表から読み取れることとして、必ず正しいといえるものには○、そうでないものには×を解答欄に書き入れなさい。
① 40点以上60点未満の人数について、それぞれの全体に対する割合は、算数より国語の方が大きい。
② 国語のテストで、ちょうど真ん中の順位の人の点数は、70点以上80点未満である。
③ 算数の平均点は、60点以上である。
【解答例】
①
算数と国語について、(40点以上60点未満の人数)÷(全体)を計算して、割合を求めます。
9人÷40人=0.225 → 算数
9人÷39人=0.23… → 国語
国語の方が算数より割合が大きいので、答えは○です。
ところで、2つの式を見ると、割られる数はどちらも9ですが、割る数が算数は40、国語は39なので、商は国語の方が大きいと、計算をしなくても求められます。
答え ○
②
国語のテストは39人が受けていますから、
39人÷2=19.5人
となりますので、真ん中の順位の人は、点数の低い方からでも高い方からでも20人目です。
そこで、点数の低い方から調べると次のようになります。
0人+1人+9人<20人<0人+1人+9人+15人
ですから、点数が低い方から20人目の人の点数は60点以上80点未満です。
答え ×
③
問題で与えられてる表からは、正確な平均点を求めることはできません。
つまり、求められる平均点には「範囲」があります。
そこで、平均点が最も低い場合と高い場合を計算してみます。
(0点×0人+20点×4人+40点×9人+60点×15人+80点×12人+100点×0人)÷40人=57.5点 → 平均点が最も低い場合
(19点×0人+39点×4人+59点×9人+79点×15人+99点×12人+100点×0人)÷40人=76.5点 → 平均点が最も高い場合
平均点は最も低い場合57.5点ですから、「必ず正しい=60点以上」とはいえませんので、答えは×です。
答え ×
本問は、今春からスタートする新学習指導要領の小学校5年生(現行の現学習指導要領では小学6年生)にある「データの活用(測定結果を考察し、思考力・判断力・表現力を身につける)」に関する問題であるという観点から「思考力問題」としましたが、小問に書かれている指示に従って計算などをすれば、正解は難しくなかったと思います。
なお、小問③では、ひとつでも例外があれば「必ず正しい」とはいえませんので、平均点が最も低い場合の計算が終わった時点で答えを×とすればOKです。
2問目は「記述問題」で、1月22日に行われた渋谷教育学園幕張中学校の1次の入試問題からです。
2020年度 渋谷教育学園幕張中学校 1次入試 算数より
問題2 黒い正方形のまわりに1辺の長さが1cmの白い正方形を並べます。下の図は、左から1辺の長さが1 cm、2cm、3cm、……の黒い正方形のまわりに白い正方形を並べたものです。 白い正方形のマスの中に、1は1個、2は2個、3は3個、……のように整数AはA個使い、ある整数から連続した2種類以上の整数を並べます。
たとえば、図1の左側のように黒い正方形の1辺の長さが2cmのとき、3を3個、4を4個、5を5個使うと、ちょうど並べきることができます。しかし、図1の右側のように、4を4個、5を5個、6を6個ではちょうど並べきることができません。また、図2のように黒い正方形の1辺の長さが8cmのときは、1から8までと、11から13までの整数をちょうど並べきることができます。
このとき、次の各問いに答えなさい。ただし、(2)、(3)では考えられるものを「○~○」のように書きなさい。たとえば、図1の左側の場合は、「3~5」、図2の場合は、「1~8と11~13」と表すことにします。
(1) 黒い正方形の1辺の長さにかかわらず、連続した2種類の整数だけでは白い正方形のマスの中に整数をちょうど並べきることができません。その理由を説明しなさい。
(小問(2)~(4)は省略しています)
【解答例】
黒い正方形の1辺の長さが□cmのとき、白い正方形の個数は全部で (□個+1個)×4 並びますから、白い正方形の個数は4の倍数です。
一方、連続した2種類の整数は1つが奇数、もう1つが偶数ですから、それらの和は、奇数×奇数個+偶数×偶数個=奇数となり、4の倍数にはなりません。
ですから、連続した2種類の整数だけでは、白い正方形のマスの中に整数をちょうど並べきることはできません。
(同意文可)
本問のように記述で解答をするときは、「問題文の言葉」を使い、さらに説明に必要な「式や図・グラフ・表」や「具体例」などを書くとよいでしょう。
記述問題で大切なことは、「どのように考えたかを伝える」ことです。
模範解答のような理路整然とした文章が書けるにこしたことはありませんが、「順序よく説明」することができればそれでよいと思います。
今回は、2020年度の中学入試から、「思考力」、「記述力」に関する問題を見ました。
次回も、2020年度の中学入試問題をご紹介していきたいと思います。