第474回 中学入試で出題される「数の性質」 5
「第474回 中学入試で出題される「数の性質」 5」
これまで大手進学塾で学年のはじめに学ぶ「数の性質」について、「数字の個数」、「数の個数」、「N進法」、「倍数と約数」に関する問題を、近年の中学入試から選んで見てきました。
今回も前回に引き続き、「倍数と約数」がテーマの問題をご紹介します。
2019年度 学習院中等科 第1回 (四谷大塚 80%偏差値 56)より
問題4
1から9までの数字が書かれた9枚のカードがあります。この中から同時に2枚を選び、書かれている数の積を求めます。このとき、次の問いに答えなさい。
(1) 積が3の倍数となるようなカードの選び方は何通りあるか求めなさい。
(2) 積が4の倍数となるようなカードの選び方は何通りあるか求めなさい。
(3) 積が7で割ると2余るようなカードの選び方は何通りあるか求めなさい。
【解答例】
(1)
場合分けをして考えます。
同時に取り出した2枚のカードの積が3の倍数になるのは、取り出した2枚のカードのうち、少なくとも1枚が3の倍数の書かれたカードのときです。
2枚のカードの組が「3」と「3以外の8枚」のとき
1通り×8通り=8通り
2枚のカードの組が「6」と「6以外の8枚」のとき
1通り×8通り=8通り
2枚のカードの組が「9」と「9以外の8枚」のとき
1通り×8通り=8通り
8通り×3=24通り
※「3、6、9」からの1枚とそのカード以外を選ぶ、3通り×8通り=24通りでもOKです。
このうち、2枚のカードの組が「3と6」のとき、「3と9」のとき、「6と9」のときの3通りが重複していますから、
24通り-3通り=21通り
が答えです。
答え 21通り
(別解)
「余事象」を利用して解きます。
同時に取り出した2枚のカードの中に、1枚も3の倍数の書かれたカードがなければ、その積は3の倍数になりません。
9C2=(9×8)÷(2×1)=36通り…同時に2枚のカードを取り出す全ての場合
6C2=(6×5)÷(2×1)=15通り…3の倍数を含まない2枚のカードを同時に取り出す場合
36通り-15通り=21通り
(2)
(1)の別解のように「余事象」を利用した方が考えやすいでしょう。
同時に取り出した2枚のカードの積が4の倍数になるのは、4の倍数(4、8)を1枚以上含む場合と、2枚ともが4の倍数ではない2の倍数(2、6)の場合です。
7C2=(7×6)÷(2×1)=21通り…2枚のカードに「4」も「8」も含まない2枚のカードを同時に取り出す場合
このうち、2枚のカードが「2と6」のときはその積が4の倍数になります。
21通り-1通り=20通り…2枚の積が4の倍数にならない場合
36通り-20通り=16通り
答え 16通り
(3)
7で割ったときの余りは0から6です。
このうち、2つの余りの積を7で割って2余る場合を調べます。
(余りが1のカード)×(余りが2のカード)のとき
「1と2」、「1と9」、「8と2」、「8と9」…4通り
(余りが3のカード)×(余りが3のカード)のとき
なし…0通り
(余りが4のカード)×(余りが4のカード)のとき
なし…0通り
(余りが5のカード)×(余りが6のカード)のとき
「5と6」…1通り
4通り+1通り=5通り
答え 5通り
本問は「倍数」に関する問題ですが、「倍数」の考え方以外に、「数字の個数」や「数の個数」のときと同じように「場合の数」の考え方である「場合分け」や「余事象」も用いて解くことになりました。
このように、「数の性質」と「場合の数」は関連があります。
サピックスの場合、算数のカリキュラムは、5年生の冬期講習の第1回で「数に関する問題」、そのあと1月に「場合の数」、さらに、6年生の2月の第1回の授業で「数の性質」を取り扱うように作られています。
サピックスの5年生は、年末年始は塾がお休みとなりますし、学年が6年生にあがる1月末から2月初めにかけても何日かのお休みがありますので、冬期講習や1月の学習内容の復習が必要になったときはこれらの2つの期間を利用して6年生の学習に備えるとよいと思います。