第470回 中学入試で出題される「数の性質」 1
「第470回 中学入試で出題される「数の性質」 1」
11月も半ばを迎え、6年生は志望校合格のための学習で多忙な日々を過ごしていることでしょう。
入試が近づいているということは、5年生もすぐに受験学年になるということです。
2月から始まる6年生のカリキュラムを見ると、多くの大手進学塾で「数の性質」から学び始めることになっています。
そこで、中学入試で出される「数の性質」の問題をご紹介しますので、新学年の学習で身につけておきたいことの参考にしてもらえればと思います。
今回は「数字の個数」に関する問題です。
2019年度 東邦大学付属東邦中学校 前期(四谷大塚 80%偏差値 男子61・女子64)より
問題5 次の問いに答えなさい。
(1) 1から999まで小さい順に整数を書くとき、”3″は全部で何回書くか求めなさい。
(2) 259から3111まで小さい順に整数を書くとき、”3″は全部で何回書くか求めなさい。
(3) 1から小さい順に整数を書いていくとき,2020回目に書いた”3″がふくまれる整数を求めなさい。
【解答例】
(1)
1桁の数、2桁の数、3桁の数の3つの場合に分けて調べます。
1~9…1個
10~99…一の位の10個+十の位の9個=19個
100~199…一の位の10個+十の位の10個=20個
200~299…一の位の10個+十の位の10個=20個
300~399…一の位の10個+十の位の10個+百の位の100個=120個
400~499…一の位の10個+十の位の10個=20個
・
・
・
900~999…一の位の10個+十の位の10個=20個
1個+19個+20個×8+120個=300個 → 300回
上記のように「桁ごとに場合分けをして調べる方法(桁ばらし)」が、「数字の個数」を求めるときの基本解法です。
基本解法が使える場合は、工夫して解く方法もマスターして、よりスピーディーに解けるようにします。
場合の数の考え方を利用して解く「デジタル解法」です。
① 百の位に「3」を使う「3□□」の場合
十の位の□…0~9の10通り
一の位の□…0~9の10通り
10通り×10通り=100通り → 百の位の「3」の個数は100個
② 十の位に「3」を使う「□3□」の場合
百の位の□…0~9の10通り
一の位の□…0~9の10通り
10通り×10通り=100通り → 十の位の「3」の個数は100個
③一の位に「3」を使う「□□3」の場合
百の位の□…0~9の10通り
十の位の□…0~9の10通り
10通り×10通り=100通り → 一の位の「3」の個数は100個
100個×3=300個
この「デジタル解法」は次のように計算することもできます。
「0」を「000」、「12」を「012」のように、「0」をつけ加えることで、「0~999」を「000~999」のような「3桁の整数」として考える解き方です。
000から999までの1000個の整数に使う数字の個数は「3桁の整数1つあたり3個」ですから、
3個×1000=3000個
です。
使う数字の種類は0から9の10種類ですから、1種類あたりの個数は
3000個÷10種類=300個 → 300回
です。
(2)
この問題も、1~258(ア)と1~3111(イ)に場合分けをし、(イ)から(ア)を取り除いて、259~3111に使われている「3」の個数を求めます。
(ア) 1から258までに使われている「3」の個数
① 1~99に使われている「3」の個数
一の位は、3、13、…、93の10個
十の位は30、31、…、39の10個
10個+10個=20個
② 100~199に使われている「3」の個数
百の位に「3」は使われていないので、1~99と同じ20個
③ 200~258に使われている「3」の個数
一の位は、203、213、223、233、243、253の6個
十の位は、230、231、…、239の10個
6個+10個=16個
①~③より、20個+20個+16個=56個…1から258までに使われている「3」の個数
(イ) 1から3111までに使われている「3」の個数
1~999…(1)と同じ300個
1000~1999…千の位に「3」は使われていないので、(1)と同じ300個
2000~2999…千の位に「3」は使われていないので、(1)と同じ300個
3000~3111
一の位は、3003、3013、…、3093、3103の11個
十の位は、3030、3031、…、3039の10個
百の位に「3」は使われていないので0個
千の位は、3000、3001、…、3111の112個
11個+10個+0個+112個=133個
300個×3+133個=1033個…1から3111までに使われている「3」の個数
ですから、259から3111に使われている「3」の個数は
(イ)の1033個-(ア)の56個=977個 → 977回
です。
上記は基本解法「桁ばらし」を利用していますが、この問題でも「デジタル解法」を使うことができます。
259~3111を、259~1258、1259~2258、2259~3258の3つの場合に分け、3112~3258をあとで取り除きます。
はじめに、259~1258の下3桁だけに着目して、「259~999、000~258」に分けると、そこに使われている「3」の個数は、「000~258、259~999」と同じですから、(1)で求めた300個です。
つまり、259~1258、1259~2258、2259~3258のそれぞれに使われている下3桁の「3」の個数は、
300個×3=900個
です。
また、千の位の「3」は、3000~3258の259個ですから、全部で
300個×3+259個=1159個…259~3258に使われている「3」の個数
です。
問題の範囲は259~3111ですから、上記で求めた「3」の個数から、3112~3258に使われている「3」の個数を引く必要があります。
3112~3258の「3」の個数
一の位が、3113、3123、…、3253の15個
十の位が、3130、3131、…、3239の20個
百の位に「3」は使われていないので0個
千の位が、3112、3113、…、3258の147個
15個+20個+147個=182個…3112~3258に使われている「3」の個数
1159個-182個=977個→977回
(3)
(1)より、1~999、1000~1999、2000~2999には、それぞれ300個ずつ「3」が使われていますから、合わせて900個です。
300
0~3999は、千の位に「3」が使われていますので、
1000個+300個=1300個
となり、1~3999までに「3」が
900個+1300個=2200個
あることがわかります。
求めるのは2020個目ですから、2200個から180個を取り除けばOKです。
3900~3999
千の位に100個
百の位に「3」は使われていませんから0個
十の位に10個
一の位に10個
100個+20個=120個
2200個-120個=2080個…1~3899に使われている「3」の個数
ここからさらに取り除く60個については、10刻みに調べていきます。
3890~3899
千の位に10個
一の位に1個
10個+1個=11個
3880~3889
千の位に10個
一の位に1個
10個+1個=11個
3870~3879
千の位に10個
一の位に1個
10個+1個=11個
3860~3869
千の位に10個
一の位に1個
10個+1個=11個
3850~3859
千の位に10個
一の位に1個
10個+1個=11個
ここまでに、
11個×5=55個
ありますから、あと5個です。
3849、3848、3847、3846、3845 → 5個
ですから、2020回目に「3」を使う数は3844とわかります。
本問は、(1)の答えが(2)や(3)でも利用できました。
従って、(1)を正確に計算し、(2)や(3)では「キリが良くない部分」を丁寧に調べると正解数を増やすことができます。
今回ご紹介したように、中学入試で出される「数の性質」の問題は、途中までを計算で求め、最後は丁寧に調べる問題が少なくありません。
難関中を志望校としている5年生は、このことを知った上で、新学年で学ぶ「数の性質」に取り組むことができればいいなと思います。