第468回 中学入試で出題される「場合の数」3
「第468回 中学入試で出題される「場合の数」3」
中学入試で出される「場合の数」の問題について見てきています。
前回までは「さいころの目の出方」をご紹介しましたが、今回は「塗り分け」の問題について考えてみようと思います。
2019年度 淑徳与野中学校 第1回 より
問題2-(3) 右の図のA、B、C、Dの4つの部分をぬり分けます。赤、青、緑、黄の4色の中から3色を使って塗り分ける方法は何通りありますか。ただし、となり合う部分を異なる色で塗り分けます。
【解答例】
「ぬり分け」は、最も多く隣り合う部分から塗り始めるのが考え方の基本です。
この基本にしたがって、C→A→B→D(A、Bはどちらも2つの部分と隣り合っていますから、逆でも構いません)の順に塗る色を決めていきます。
(樹形図を利用する解き方)
Cが赤の場合について、樹形図をかいてみます。
このとき、「3色を使って」という条件を見落とさないように注意しましょう。
また、問題図より、A、B、Cは必ず異なる色、DはC以外の色となることにも気をつけて樹形図をかきます。
(C、A)=(赤、青)のとき4通りとわかりますから、(C、A)=(赤、緑)のときも、(C、A)=(赤、黄)のときもそれぞれ4通りあることに気づけます。
ですから、Cが赤の場合は全部で12通りです。
Cが青の場合も、緑の場合も、黄の場合も同じ形の樹形図がかけますから、
12通り×4=48通り
が答えとわかります。
(〇、△、×を利用する解き方)
上記の樹形図で、(赤、青)の4通りの形、(赤、緑)の4通りの形、(赤、黄)の4通りの形がどれも同じ形になっていますので、この形(=パターン)を〇、△、×、☆で表すと次のようになります。
上の図で(B、D)に着目すると、(×、△)の場合も(☆、△)の場合も、「DとAが同色」、「DとBが同色」ということを表していますから、実際の「パターン」は2通りということになります。
このパターンについて、〇、△、×にどんな色を入れることができるかを考えれば、(樹形図を利用する解き方)の樹形図をかくことと同じになります。
〇、△、×に塗る色を決めると、その塗り方には2通りのパターンがありますから、
24通り×2通り=48通り
とわかります。
このように、「〇、△、×を利用してパターンを考える → 〇、△、×の色を決める」という「2段階に分ける」考え方ができるようになると、樹形図などの「書き出しを減らす」ことができます。
なお、〇、△、×のパターンは下の図のように書くようにすると、「A、B、Cは必ず異なる色」、「DはC以外の色」となることも見落としにくくなります。
では、このことを次の問題で利用してみましょう。
2019年度 江戸川学園取手中学校 第1回 より
問題5 右の図のA、B、C、D、Eの部分を色分けします。となりあった部分には異なる色を用いてぬり分けるとき、次の場合のぬり分け方はそれぞれ何通りありますか。
(1) 赤、青、白、黒、黄の5色すべてを用いてぬり分ける。
(2) 赤、青、白、黒の4色すべてを用いてぬり分ける。
(3) 赤、青、白の3色すべてを用いてぬり分ける。
(4) 赤、青、白、黒の4色を用いてぬり分ける。ただし、使わない色があってもよいとする。(4)は答えだけでなく、途中の計算や考え方もかきなさい。
【解答例】
(1)
5つの部分を5色で塗り分けますから、各色とも1回ずつ使うことになります。
従って、パターンは次の1通りです。
〇は赤、青、白、黒、黄の5通り、△は〇以外の4通り、×は〇、△以外の3通り、☆は〇、△、×以外の2通り、□は残った1色の1通りですから、
5通り×4通り×3通り×2通り×1通り=120通り
が答えです。
(2)
5つの部分を4色で塗り分けますから、どれか1色は2回使うことになります。
同色で塗れる場所は、(AとE)、(BとC)、(CとE)の3つの場合(=3パターン)があります。
〇は赤、青、白、黒の4通り、△は〇以外の3通り、×は〇、△以外の2通り、☆は残った1色の1通りですから、
4通り×3通り×2通り×1通り×3パターン=72通り
です。
(3)
5つの部分を3色で塗り分けますから、どれか1色が3つの部分を塗る場合と、どれか2色がそれぞれ2つの部分を塗る場合があります。
しかし、この問題図ではどれか1色で3つの部分を塗ることはできませんので、どれか2色でそれぞれ2つの部分を塗る場合についてだけ考えていきます。
このときのパターンは次の1通りです。
(2)と同様に、〇は赤、青、白の3通り、△は〇以外の2通り、×は残った1色の1通りですから、
3通り×2通り×1通り×1パターン=6通り
です。
(4)
最後は、5つの部分を4色以下で塗り分け
る問題です。
4色以下という条件ですが、この問題図では1色や2色で塗り分けることはできません。
従って、4色または3色で塗り分けることになります。
ということは、(2)や(3)の結果を利用することが可能です。
(2)から「赤、青、白、黒の4色」のときは72通りあることがわかっていますから、あとは「赤、青、白、黒の4色」から3色を選んで塗り分ける場合を考えればよいことになります。
4色から3色を選ぶ方法、つまり1色を選ばない方法は4通りありますので、
(3)の答えを利用すると、
6通り×4通り=24通り
です。
72通り+24通り=96通り
今回は、中学入試で出される「場合の数」の問題の中から、「塗り分け」の問題について見てきました。
この「塗り分け」で利用した「パターンを見つける→使う色を決める」という2段階で求める方法は、他の場合の数でも応用ができますので、今回ご紹介したような問題を通してこの考え方を身につけることができるといいなと思います。