第463回 合格をするために正解したい問題 8
「第463回 合格をするために正解したい問題 8」
中学入試で正解したい問題を見てきています。
前回は「立体図形の移動」に関する問題をご紹介しました。
今回は「立体図形の切断」がテーマです。
「立体図形の切断」もこれまで見てきた「平面図形の移動」や「立体図形の移動」と同様に、「作図力」が重要な役割を占めています。
では問題を見ていきましょう。
【問題】
大きさが同じで、中まで白い立方体と中まで黒い立方体があります。これらを積み重ねて下の図のように大きな立方体を作りました。図の中の黒い部分は反対側の面まで黒い立方体だけが使われており、それ以外は白い立方体が使われています。このとき、次の問いに答えなさい。
(1) 黒い立方体は全部で何個使われていますか。
(2) 図のような3点P、Q、Rを通る平面で大きな立方体を切断します。このとき、上から1段目にある黒い立方体は何個切断されますか。
(3) (2)の切断面において、白い部分と黒い部分の面積の比を最も簡単な整数の比で表しなさい。
【解答例】
(1)
「反対側の面まで黒い立方体だけが使われ」という条件に気をつけて、大きな立方体を「スライス」していきます。
4個+4個+10個+7個=25個
(2)
上から1段目を「切断の3原則」に従って切断します。
このとき、「R」を含む面もかき加えておくと作図がしやすくなります。
この切断の様子を真上から見ます。
上の図より切断される黒い立方体は3個とわかります。
(3)
2段目以降も(2)と同じようにして作図します。
このとき、1段下の切断面は、上の段よりも切断面である台形の高さの1つ分だけずれることが利用できると、素早く作図をすることができます。
4段分を合わせると、合同な三角形(実際の切断面の三角形は下の図のように正三角形です)が白14個、黒10個ですから、面積比は白:黒=7:5です。
(出典:市川中学校 2019年度入試 第1回 問題5)
本問は「積み木の切断」問題でした。
積み木の場合、外側から全く見ることができないものもありますから、内部の様子を知るための方法として上記のような「スライス解法」を用います。
ではもう1問です。
【問題】
図のような、1辺の長さが4cmの立方体を、底面が半径1cmの円である円柱でくり抜きました。このとき、円の中心と正方形AEFBの対角線の交点が一致するものとします。次に辺EH、FG上にそれぞれEM=FN=1cmとなるような点M、Nをとり、平面CDMNで切断したとき、頂点Aを含む立体の体積を求めなさい。ただし円周率は3.14とします
【解答例】
立体を右から見た図をかいて、切断面の位置を明確にします。
立方体から円柱を「くり抜いた」立体の体積ですから、「くり抜かれる前」の立方体を切断した立体の体積-「くり抜く」の円柱を切断した立体の体積のように2つの立体に分けて求めます。
斜めに切断された円柱(断頭円柱)の体積を求めるときは「高さの平均」を利用します。
上の図のように、断頭円柱の高さの平均=(台形の上底+下底)÷2となっています。
(4cm+1cm)×4cm×1/2×4cm-1cm×1cm×3.14×2.5cm=32.15cm3
(出典:湘南白百合学園中学校 2019年度入試 問題5-(2))
本問は「くり抜き立体の切断」という問題でした。
「くり抜き立体の切断」は、くり抜かれた後の立体から考えるより、くり抜く前の立体をそれぞれ切断する方が作図はしやすいです。
切断には今回ご紹介した以外にも「2回切断」、「3回切断」など複数回切断する難度の高い問題もあります。
受験校によっては「2回切断」の問題の正解が必須となることもあります。
サピックスでは、6年生の春期講習明けのデイリーサポートから「今週の立体切断」が毎回巻末に収録されており、切断の学習機会を増やすカリキュラムとなっています。
ただ6年生になると5年生よりも学習内容が濃くなることに加え、土曜志望校別特訓(土特)が始まるため、家庭学習の時間を捻出することが難しくなる場合もあります。
立体の切断は、平面図形の相似と見取り図や投影図の見方、描き方を学んだ後であれば取り組むこともできる単元ですから、時間の余裕がある5年生の間に少しでも家庭学習する機会が持てればいいなと思います。