第462回 合格をするために正解したい問題 7
「第462回 合格をするために正解したい問題 7」
中学入試で正解したい問題の中から、前回は「平面図形の移動」に関する問題をご紹介しました。
そこで、今回は「立体図形の移動」の問題を見ていこうと思います。
「立体図形の移動」の作図には、立体自体がどのような軌跡を描くのかをイメージすることが必要ですが、正確な作図をするためには「立体図形の影の作図」と同じように、立体図形のどの部分に着目するかも重要となってきます。
ではさっそく問題を見てみましょう。
【問題】
次の立体について、あとの問いに答えなさい。 (円周率は3.14)
(1) 図1のような半径が15cm、高さが30cmの円柱があります。この円柱を机の上に置き、底面を机からはなさずに半径30cmの円形の輪の内側に沿って1周させます。このとき、円柱が通った部分の体積を求めなさい。
(2) 図2のような底面の半径が15cm 、高さが30cmの円すいがあります。この円すいを机の上に置き、底面を机からはなさずに半径30 cmの円形の輪の内側に沿って1周させます。このとき、円すいが通った部分の体積を求めなさい。
(3) 次に(2)の円すいを、図3のように底面を机からはなさずに1辺が30cmの正方形の外側に沿って1周させます。このとき、円すいが通った部分の体積を求めなさい。
【解答例】
(1)
図1を真上から見ると円柱の動くことのできる範囲がわかりやすくなります。
上の左の図のように円柱が矢印の向きに回転して通過する部分は、右の図のように水色の正方形が円の中心Oを垂直に通る回転の軸を中心に360°回転してできる立体ということがわかります。
30cm×30cm×π×30cm=27000π=84780cm3
(2)
(1)と同じように考えることができます。
上の左の図のように円すいが矢印の向きに回転して通過する部分は、右の図のように水色の二等辺三角形が円の中心Oを垂直に通る回転の軸を中心に360°回転してできる立体(大きな円すいから小さな円すいを2つ引いた図形)ということがわかります。
大きな円すいと小さな円すいの相似比は2:1ですから、体積比は8:1です。
30cm×30cm×π×60cm×1/3×(8-1×2)/8=13500π=42390cm3
(1)、(2)からもわかるように、着目する図形は「立体全体」ではなく「立体の断面」です。
このことに注意して(3)も考えていきます。
(3)
円すいの断面に着目します。
上の図の水色の二等辺三角形の動きを真上から見ます。
上の図のように正方形の辺に沿って二等辺三角形が動く部分は三角柱となり、角を曲がるときは二等辺三角形の頂点は弧を描きますから、円すいの一部となります。
この円すいの一部は
のようになりますから、正方形の4つの頂点でできる4つの図形を合わせると、(2)の立体と同じものになります。
30cm×30cm×1/2×30cm×4+42390cm3=96390 cm3
(出典:攻玉社中学校 2017年度入試 第1回 問題5)
本問の小問(3)は、2017年度に行われた攻玉社中学校の第1回入試の最終問題ということもあり、テーマの「中学入試で正解したい問題」よりは難度が高くなっています。
しかし、小問(1)、(2)は「回転体」の応用ともいえますので、これらはできれば正解したい問題です。
今回ご紹介した問題からもわかるように、「立体図形」の問題を解くための基礎となる学力は平面図形の知識です。
「平面図形の移動」の作図力の上に、「立体図形の見方」という立体図形の知識を足し算することで問題の正解を得ることが可能になります。
前回もお伝えしたように、サピックスの5年生の場合、平常のカリキュラムでは「平面図形」を冬期講習と1月に学びます。
また、「立体図形」は夏期講習で「傾ける水そうの見方=投影図」を学びましたが、2学期の最後にも投影図や回転体の断面について学習します。
これらの図形を学習する際には今回見た問題を踏まえ、投影図や立体の断面が自分の手で作図できることを目標に学習に取り組むことができればいいなと思います。