第460回 合格をするために正解したい問題 5
「第460回 合格をするために正解したい問題 5」
前回は、中学入試で合格最低点を獲得するために正解したい中級問題のうち、「グラフを書いて解く」速さの問題を見ました。
今回は同じ「速さ」の中から、「ダイヤグラム(進行グラフ)を使って解く」問題を選んでみます。
はじめは、与えられたダイヤグラムを読み取る問題です。
【問題】
Aさんは徒歩で学校から公園に向かって出発しました。BさんはAさんより4分遅れて学校を出発し、自転車で学校と公園の間を往復しました。またCさんは、Aさんと同時に公園を出発し、走って学校に向かいました。Aさんは学校から公園までの距離の3/4の地点で、公園から戻ってきたBさんと出会いました。下の図はそのときの様子を表したものです。3人はそれぞれ一定の速さで進み、Aさんの歩く速さは毎分80mです。次の[ ]に当てはまる数を求めなさい。
(1) 学校から公園までの距離は[ ]mです。
(2) BさんがAさんを追い越したのは学校から[ ]mのところです。
(3) BさんとCさんが出会ってから[ ]分[ ]秒後にAさんとCさんが出会いました。
【解答例】
(1)
距離を求める問題ですが、☆mといった具体的な距離の条件がありません。
しかし、Aさんだけは歩いた時間と速さがわかっていますので、まずはAさんに着目します。
上のグラフの中にある「直角三角形」より、
③=80m/分×27分=2160m → ①=720m → ④=2880m
(2)
ダイヤグラムは「時間に着目」することがポイントです。
そこで(1)のグラフを見ると、Aさんが学校から公園までを歩く時間が、
2880m÷80m/分=36分
とわかります。
ですから、「直角三角形」に着目すると、Bさんの速さも
2160m÷(36分-27分)=240m/分
と求められます。
Bさんの速さもわかりましたので、あとは旅人算の計算です。
速さと比の関係を利用すると、次のようになります。
上の線分図より、
②=320m → ①=160m → ③=480m
(3)
再びグラフに戻り、これまでにわかったことを書いていきます。
上のグラフよりCも速さを求めることもできますから、以下は旅人算の計算でも、グラフを用いてもOKです。
グラフを利用する場合は、BとCの出会いに着目すると、
の砂時計型相似が利用できますから、BとCは
24分×4/9=32/3分後
に出会ったことがわかります。
同じように、AとCの出会いに着目すると、
の砂時計型相似が利用できますから、AとCは
24分×3/5=72/5分後
に出会ったことがわかります。
72/5分-32/3分=3分44秒後
(出典:横浜共立学園中学校 2017年度入試 A方式 問題3)
本問は、ダイヤグラムの大原則である「直角三角形に着目する」ことで(1)、(2)を解くことができ、それがわかれば(3)は旅人算の計算でも、グラフを利用しても答えを導き出すことが可能な問題です。
3人のダイヤグラムは「複雑で見にくい」と感じることもありますが、上記の解答例(1)、(2)のように問題に不要なグラフを除いておくと、着目ポイントもわかりやすくなります。
では、もう1問見ていきましょう。
次は、ダイヤグラムを自分で書く問題です。
【問題】
A駅から山頂の駅に向かって、ゴンドラが8分ごとに一定の速さで動いています。また、太郎君は山頂からA駅に向かって、このゴンドラに沿った道を毎分100mの速さで下山しています。A駅を8時に発車したゴンドラが、A駅から1100m離れた地点Pで太郎君とすれ違いました。さらに、A駅を8時8分に発車したゴンドラが、A駅から500m離れた地点Qで太郎君とすれ違いました、このとき、次の各問いに答えなさい。
(1) 太郎君が地点Pから地点Qまで下山するのにかかった時間を求めなさい。
(2) このゴンドラの速さを求めなさい。
(3) 太郎君がA駅に到着する時刻は何時何分何秒ですか。
【解答例】
距離条件が「1100m」、「500m」の2つ、時間条件が「8分ごと」、「8時」、「8時8分」の3つで時間条件の方が多いですから、ダイヤグラムに整理してみます。
(1)
上のダイヤグラムより、
(1100m-500m)÷100m/分=6分間
(2)
(1)で求めた時間をダイヤグラムに書き込みます。
ダイヤグラムの5原則が、
①相似
②等高三角形
③平行四辺形
④二等辺三角形
⑤琵琶湖型三角形
の利用であることを思い出すと、上のダイヤグラムの中に、①ピラミッド型相似と②等高三角形と③平行四辺形があることに気づけます。
①のピラミッド型相似を利用してもよいですし、②の等高三角形と③の平行四辺形に着目すると次のようになります。
上のグラフより、
6
00m÷2分=300m/分
(3)
A駅を8時8分に出発したゴンドラが地点Qを通過するのは、
500m÷300m/分=1分40秒後
ですから、太郞くんがA駅に着く時刻は、
8時8分+1分40秒+500m÷100m/分=8時14分40秒
です。
(出典:逗子開成中学校 2018年度入試 1次 問題4)
原則として、本問のように時間条件が距離条件よりも多い問題は、ダイヤグラムに整理すると解き方を見つけやすくなります。
ですからこのような問題を解くために、ダイヤグラムの5条件を覚え、使えるようになっておくことは大切です。
前回もお伝えしましたように、サピックスの場合、「グラフを利用して解く速さ」の問題は、6年生の春期講習とそれ以降で取り扱われます。
しかし、それまでに学ぶ問題の中にはグラフを利用する方が解きやすいものもありますから、機会があればダイヤグラムの使い方を学習し、使いこなす練習までしておくと理想的だと思います。