第454回 学校別サピックスオープン 1
「第454回 学校別サピックスオープン 1」
前回は、お盆期間中に実施される浜学園の「第3回 灘中オープン模擬入試」から、1日目の算数の問題をご紹介しました。
そこで、今回は夏期講習の後に行われる6年生の実力テストの中から、サピックスの「学校別サピックスオープン」を見ていこうと思います。
サピックスの「学校別サピックスオープン」は、2019年の場合、9月16日の開成、麻布、武蔵、駒場東邦、早稲田、早大学院、慶應中等部、慶應普通部、栄光学園、桜蔭、雙葉、女子学院、フェリスを皮切りに、その後、聖光学院、渋谷渋谷、筑駒、慶應湘南藤沢、豊島岡、早稲田実業、渋谷幕張、灘の各模試が予定されています。
9月に行われるテストの問題から自分の課題を発見し、夏期講習などを利用してそれらを解消していきましょう。
それでは、上記の模試のうち、「学校別サピックスオープン 開成①」(過年度版)の問題をさっそく見ていこうと思います。
サピックス 学校別サピックスオープン 開成中①(2017年9月18日実施)より
問題1 次の問いに答えなさい。
(1) A、Bがともに整数で、2700=A×B×Bとなるとき、Aに当てはまる2桁の整数として考えられるものをすべて求めなさい。
(2) 右の図1のように、3辺の長さが18cm、24cm、30cmの直角三角形ABCが直線l上にあり、辺ACを3等分する点をP、Qとします。いま、頂点Bを中心に、矢印の方向へすべらないように三角形ABCを回転させます。このとき、点P、Qから直線lへ向けて垂直に引いた直線が、直線lと交わる点をそれぞれR、Sとします。
① 右の図1とき、四角形PRSQの面積を求めなさい。
② 右の図2のように、図1の位置から辺ACが直線lと平行になる位置まで三角形ABCを回転させました。PRと辺ABの交わる点をT、QSと辺BCの交わる点をUとするとき、五角形PTBUQの面積を求めなさい。
【解答例】
(1)
2700を素因数分解します。
2700=22×33×52
です。
A×B×Bの「B×B」が平方数であることに着目すると、
B×B=1×1、2×2、3×3、5×5、6×6、10×10、15×15、30×30
の8つの場合があります。
このとき、Aはそれぞれ、2700、675、300、108、75、27、12、3ですから、このうち2桁の数、75、27、12が答えです。
(Aが10以上100未満であることから、B×Bが27より大きく270以下となることを利用して範囲を絞り込むこともできます。)
(2)-①
辺を次の図のように「均等分割」したときの面積比は
となりますから、
24cm×18cm×1/2×3/9=72cm2
です。
(2)-②
「(五角形のように面積の計算公式がない図形の面積は)まわりから引く」という原則を利用します。
上の図より、
24cm×18cm×1/2-(10cm×15/2cm×1/2+10cm×40/3cm×1/2)=111 5/6cm2
です。
(Bから辺ACに垂線を引いて五角形を2つの台形に分ける解き方もあります。)
問題1は基本レベルの問題でした。
学校別サピックスオープンで開成中のテストを受験する予定がある場合、問題1のような問題は「さっと解ける」ようになっておきたいところです。
では、続けて問題2です。
問題2 2台のロボットAとBがあります。ロボットAは一定の速さで動き、ロボットBはt秒後の速さが秒速tmになるように、一定の割合で速さを増しながら動きます。いま、この2台のロボットがP地点を同時に出発し、同じ方向に動きはじめたところ、出発してから5秒後にロボットAはP地点から25mの場所、ロボットBはP地点から12.5mの場所にいました。そして、出発してから10秒後にロボットBは故障し、今度は速さを増してきたときと同じ一定の割合で速さを減らしながら動きました。
右のグラフは、ロボットAとロボットBが出発してから5秒後までの速さと動いた時間との関係を表したものです。次の問いに答えなさい。
(1) ロボットBがロボットAに初めて追いつく地点はP地点から何mの場所ですか。
(2) ロボットAがロボットBに追いつくまでの2台のロボットの速さと動いた時間との関係を表すグラフをそれぞれ解答欄にかきなさい。また、ロボットAがロボットBに初めて追いつく地点はP地点から何mの場所ですか。
(3) ロボットBは出発してから20秒後に止まってしまいました。そして、その地点で7.5秒間止まった後、再び動きはじめ、P地点を出発したときと同じ一定の割合で速さを増しながら動きました。この後、ロボットBがロボットAに再び追いつくのは、P地点を出発してから何秒後ですか。
【解答例】
(1)
ロボットBが「加速」して動きますから、線分図やダイヤグラムでは表しにくいので、問題で与えられている「速さ-時間グラフ」を使用します。
「速さ-時間グラフ」はグラフより下の面積が「距離」を表すものです。
ですから、「ロボットBがロボットAに追いつく=進んだ距離が同じ=面積が等しい」という解き方になります。
上のグラフより、ロボットBがロボットAに初めて追いつくのは10秒後とわかりますから、P地点から
5m/秒×10秒=50m
の場所です。
(2)
(1)より、「ロボットBがロボットAに追いつく」までのグラフはわかりましたので、「10秒後にロボットBは故障し、今度は速さを増してきたときと同じ一定の割合で速さを減らしながら動きました」と、そこまでのロボットAのグラフを追記します。
上のグラフは10秒を境に左右対称となっていますから、20秒後にロボットAがロボットBに追いつくことがわかります。
5m/秒×20秒=100m
答え グラフ(解説参照)、100m
(3)
(2)と同じように、20秒後からあとの2台のロボットの動きを問題の条件をグラフに表します。
上のグラフで、イは共通部分ですから、ア=ウのときにロボットBがロボットAに再び追いつきます。
□×□×1/2=50 → □=10
32.5秒後+10秒=42.5秒後
答え 42.5秒後
問題2は算数ではあまり出されることがない「速さ-時間グラフ」に関する問題でしたが、問題文中の「出発してから5秒後にロボットAはP地点から25mの場所、ロボットBはP地点から12.5mの場所にいました」と与えられているグラフを結びつけて題意を把握すれば、全問正解が可能な問題です。
2016年度の開成中学の入試でも、「傾き」をテーマとした「図の読み取り」の出題がありましたが、こちらも問題文と与えられた図を結びつけると正解にたどり着ける問題でしたから、問題文を十分に読み込まず、「グラフだけを読んで問題を解こうとする」という悪いくせを直すにはちょうどよい出題だったのではないかと思います。
次回は、残りの2問についてご紹介する予定です。