第441回 中学入試の攻略ポイント4
「第441回 中学入試の攻略ポイント4」
中学入試に出題される「大問形式」の問題で得点をする方法について、前回は早稲田中学の2019年度の問題を用いて考えてみました。
「大問」という言葉からは「難しい問題」、「初めて見る問題」というイメージがわくこともありますが、2019年度の早稲田中学の問題は決してそのような問題ばかりではなく、合格者平均をとるためには、塾や市販の教材で一度は練習したことがある問題を正解すればよいこともわかりました。
今回もこの「大問」について、慶應義塾中等部の問題を用いて、その得点方法を見ていこうと思います。
慶應義塾中等部は男子の募集人数が約140名、女子の募集人数が約40名となっているためでしょう、サピックスの「2020年 中学入試 予想偏差値(合格率80%以上)」では男子が58、女子が63と、女子には難度が非常に高い学校のひとつです。
そのためか、合格には得点率90%が必要ともいわれています。
2019年度の小問数は20問でしたから、18問の正解が必要という計算になります。
では実際の問題を見ていきましょう。
2019年度 慶應義塾中等部 入試問題 算数より
大問5 右の図のような、直角三角形と長方形で囲まれた立体の中に水が入っています。いま、面BCFEを下にして、水平な床の上に置いたところ、水面の高さが5 1/3cmになりました。このとき、次の□に適当な数を入れなさい。
(1) 面ABCを下にすると、水面の高さは になります。
(2) 面ACFDを下にすると、水面の高さは になります。
【解答例】
(1)
[解法のポイント]
底面を直角三角形とする「三角柱」である立体(容器)と空気(すき間)に着目する。
底面を三角形ABCに変えても体積比は変わりませんから、
となり、
ア=13、イ=1、ウ=3
が求められます。
(2)
[解法のポイント]
底面を長方形ACFDに変えても、立体と空気の体積比9:1は変わらない。
三角形ABCの底辺をACとすると、
高さ③=6cm×0.8=4.8cm
なので、
②=4.8cm×2/3=3.2cm
が求められます。
ア=3、イ=2
大問5は(1)、(2)とも、塾の教材などで一度は解く定番の水問題ですから、得点率90%という高得点を目指すためには2問とも正解が必要でしょう。
続けて、大問6です。
大問6 [図1]のような長方形があります。点Pは辺AD上を、点Qは辺BC上を何度も往復します。点Pは頂点Aから、点Qは頂点Bから同時に出発します。点Pが動き始めてからの時間と四角形ABQPの面積の関係は[図2]のようなグラフとなりました。点Pより点Qが速く動くとき、次の□に適当な数を入れなさい。
(1) 四角形ABQPの面積が長方形ABCDの面積の半分となる2回目の時間は、点Pが出発してから です。
(2) 四角形ABQPが正方形となる2回目の時間は、点Pが出発してから です。
【解答例】
(1)
[解法のポイント]
グラフの変曲点(曲がるところ)の図をかく。
はじめに8秒後の図をかきます。
点Qの速さがわかりましたので、12秒後は次のような図になることがわかります。
点Pの速さもわかりましたので、8秒後は上のような図になりますから、
768cm2×2÷(32cm+48cm)=19.2cm
がABの長さです。
ですから長方形ABCDの面積は、
19.2cm×48cm=921.6cm2
なので、その半分は460.8cm2です。
上の図より、四角形ABQPの面積が2回目に長方形ABCDの面積の半分になったとき、
AP+BQ=460.8cm2×2÷19.2cm=48cm
AP+点Pの動いた距離(赤矢印)+BQ+点Qの動いた距離(青矢印)=48cm×4=192cm
ですから、点Pと点Qが動いた距離の和は、
192cm-48cm=144cm
です。
144cm÷(4cm/秒+6cm/秒)=14.4秒後
ア=14、イ=4
(別解1)
[解法のポイント]
グラフを利用して解く。
上のグラフの赤色の太線に着目すると、1秒ごとに
(691.2cm2-307.2cm2)÷(16秒-12秒)=96cm2
ずつ面積が減っているので、2回目は
12秒+(691.2cm2-460.8 cm2)÷96cm2/秒=14.4秒後
とわかります。
(別解2)
[解法のポイント]
長方形の面積を2等分する直線は長方形の2本の対角線の交点を
通る。
長方形の面積を2等分する直線は長方形の2本の対角線の交点を通りますから、四角形ABQPの面積が2回目に長方形ABCDの面積の半分になったとき(下の図)、
PD=BQです。
点Pの速さは4cm/秒、点Qの速さは6cm/秒、点Pと点Qの動いた距離の和は48cmの3倍ですから、
48cm×3÷(4cm/秒+6cm/秒)=14.4秒後
です。
(2)
(1)よりAB=19.2cmとわかりましたので、次のような図に2回目になるまでの時間を求めます。
ここで点P、Qの動きをグラフに表わしてみると
のようになりますから、四角形ABQPが正方形になるのは、2点P、QのグラフがA(B)に近い「イ」で交わるようなときだけだとわかります。
上のグラフとその対称性より、2回目は
24秒+8秒×3/5=28.8秒後
と求められます。
ア=28、イ=8
(別解)
上の図より、
48cm×4÷(4cm/秒+6cm/秒)=19.2秒後
が1回目です。
24秒+(24秒-19.2秒)=28.8秒後
大問6は(1)が塾の教材にもある定番の問題、(2)は「正方形になる」というあまり練習する機会のない問題でしたので、(1)の正解が大切になっている大問だったと言えそうです。
中学入試に出題される「大問形式」の問題について、早稲田中学、慶應義塾中等部の問題を見てきましたが、合格が難しいとされるこれらの2校であっても、合格者平均をとるためには塾や市販の教材で練習したことがある問題で失点しなければ決して不可能ではないことがわかりました。
ですから、塾での学習において理解が十分ではない単元や問題は、この10連休などを活用して少しでもなくし、志望校に合格する可能性を高めていくことができればいいなと思います。