第423回 冬期講習の学習 6
「第423回 冬期講習の学習 6」
5年生が冬期講習で学ぶ内容について、関西エリアの大手進学塾の浜学園の場合について、前回からご紹介しています。
前回は、浜学園の5年生の冬期講習教材から、その第1回に学ぶ「相似」と「速さ」の内容を見ました。
そこで取り扱われていた問題は、浜学園のホームページにあるようにマスターコースで夏以降に取り扱った内容の復習とその発展的展開となっていました。
そこで、今回は冬期講習教材(過年度版)の第2回で学ぶ「曲線図形」と「速さと比」の問題を見ていこうと思います。
(No.2 講義Ⅰより)
A-7 右の図の斜線部分の面積を求めなさい。円周率は3.14とします。
【解答例】
「円問題の補助線は、円周上の点と中心を結ぶ半径」という原則を利用する問題です。
この原則にしたがって補助線をかくと、斜線部分は次の図のように3つの部分に分けられます。
上の図より斜線部分の面積は、2つのおうぎ形と1つの直角二等辺三角形の面積の和とわかります。
8cm×8cm×3.14×1/4+8cm×8cm×1/2=82.24cm2
A問題では、この問題のように「円問題の補助線」を利用する問題の他に、円やおうぎ形の面積公式などを使った基本問題があります。
次はB問題です。
(No.2 講義Ⅰより)
B-5 下の図は円と正方形ABCDを重ねたものです。斜線部分の面積をそれぞれ求めなさい。円周率は3.14とします。
【解答例】
半径の長さがわからない円の面積を求める問題です。
このような問題は、「円の半径×円の半径」の値を正方形の面積を利用して求めますので、「半径×半径(を利用する問題)」と呼ばれることがあります。
(1)
問題の図に「半径×半径」にあたる正方形をかき加えます。
上の図より斜線部分の面積は、
(10cm×10cm×2/4)×3.14-10cm×10cm=57cm2
とわかります。
(2)
(1)と同じように、問題の図に「半径×半径」にあたる正方形をかき加えます。
上の図より斜線部分の面積は、
16cm×16cm×1/2-(16cm×16cm×1/2×1/4)×3.14=27.52cm2
とわかります。
B問題では「半径×半径」の他に、「円の補助線」を利用する問題や「牛の問題(点が移動する範囲)」など、入試問題や塾のテストの一行問題などでよく出されるものが取り扱われています。
それではC問題を見てみましょう。
(No.2 講義Ⅰより)
C-5 点Oを中心とする半径6cmの円周上に2点A、Bがあり、次の(図1)のように角AOB=130°です。次の問いに答えなさい。ただし、円周率は3.14とします。
(1) 同じ円周上に2点C、Dがあり、角COD=X°です(図2)。Xの値は130より小さく、三角形OABと三角形OCDは同じ面積です。Xの値を求めなさい。
(2) (図3)のXの値は(1)で求めた値です。(図3)の斜線部分の面積を求めなさい。
(3) (図4)のXの値は(1)で求めた値です。アの部分とイの部分の面積の和が28cm2のとき、アの部分の面積を求めなさい。
【解答例】
(1)
三角形OABと三角形OCDは二等辺三角形なので、「二等辺三角形は2つの直角三角形に分ける」という原則に従うと、次の図のようになります。
上の図より、角COD=角OAB+角OBAとわかりますから、
180°-130°=50°
より、
X=50
と求められます。
(2)
斜線部分は面積公式のない図形ですから、「まわりから引く」という解き方だと気づけます。
上の図で、三角形OAEと三角形OABの面積は同じですから、斜線部分はおうぎ形OEBの面積と等しいことがわかります。
6cm×6cm×3.14×80°/360°=25.12cm2
(3)
「差とくればつけたし」の応用です。
上の図から、次のような関係がわかります。
アとイの差は、
6cm×6cm×3.14×80°/360°=25.12cm2
和は28cm2ですから、アの面積は、
(28cm2-25.12cm2)÷2=1.44cm2
です。
この問題のように、C問題は入試レベルの問題が中心となっています。
では、続けて講義Ⅱの「速さと比」を見てみます。
(No.2 講義Ⅱより)
A-5-(2) 太郞くんと花子さんは同時に同じ地点を同じ方向に出発します。太郞くんは出発点から500m地点を花子さんより10秒早く通過しました。出発地から900mの地点を太郞くんは花子さんより何秒早く通過しますか。
【解答例】
問題の条件を「線分図」と「ダイヤグラム」の両方で整理してみます。
どちらの整理方法からも「500mで10秒の差なのだから900mだとその9/5倍になる」ことが読み取れます。
10秒×900m/500m=18秒
この問題は「同じ速さで進んだとき、進む距離と時間は比例する」ということが用いられています。
A問題ではこのようなやや応用的な比の使い方以外に、「速さと比」の基本問題も取り扱われています。
ではB問題です。
(No.2 講義Ⅱより)
B-3 車とトラックがそれぞれ一定の速さで同じ方向に進んでいます。甲地点を車が通過した13分後にトラックが通過しました。また、乙地点をトラックが通過した17分後に車が通過しました。甲乙両地間の距離が60kmのとき、甲地点からトラックが車に並んだ地点までは何kmですか。
【解答例】
上記のA-5の問題に似た条件が与えられています。
A-5の問題はダイヤグラムに整理するとピラミッド型相似を利用して解くことができますので、本問もダイヤグラムを利用してみます。
相似比が13:17のチョウチョ型相似(砂時計型相似)があります。
上の図より、
60km×13/30=26km
が答えとわかります。
B問題では、「真ん中より~で出会う」問題、池タイプや同時出発ではない旅人算なども学ぶようになっています。
最後はC問題です。
(No.2 講義Ⅱより)
C-2 A、B、Cの3人がそれぞれ一定の速さで同じ地点から同じ方向に走ることにしました。Aが出発してから10分遅れてBが出発し、さらに6分遅れてCが出発しました。すると、BもCもそれぞれが出発してから40分後にAに追いつきました。Cは出発してから何分後にBに追いつきますか。
【解答例】
「時間の条件が多いときはダイヤグラム」という原則に従って整理してみます。
3人もいるとグラフがゴチャゴチャしていて読み取りづらいですから、2人だけのグラフにしてみましょう。
上のグラフより、時間比は
A:B:C=35:28:25
とわかります。
BとCだけのグラフにすると、
となりますから、
③=6分より、
㉕=50分後
とわかります。
「時間の条件が多いときはダイヤグラム」という原則に従って整理してみましたが、結局2人ずつに分けて考えることになりましたので、線分図を利用してもよかったと思われる問題です。
講義Ⅱも講義Ⅰと同じように、C問題は入試レベルの問題がほとんどです。
このように問題を見てきますと、基本と思われがちなA問題も基本だけでなくその応用があり、B問題も入試や塾のテストで高い点数を取るために必要な問題、そしてC問題は入試レベルといったように、浜学園の5年生の冬期講習の内容は「浜学園マスターコースで夏以降に取り扱った内容の復習とその発展的展開」という説明にふさわしい内容となっていたと思います。
特に「発展的展開」がA、B、Cの各問題においてかなり取り扱われていますから、冬期講習の成果を大きなものにするためには、マスターコースで学んだ内容の復習はできるだけ冬期講習の授業までにすませておくことが望ましいといえそうです。