第412回 「速さ」の勉強方法 6
「第412回 『速さ』の勉強方法 6」
前回まで5回にわたって、5年生で学ぶ「速さ」のうち、「旅人算」、「流水算」、「通過算」についてどのようなことを学ぶのかを、サピックスの平常教材「Daily Support」(過年度版)を用いてみてきました。
そこで、今回は5年生で学ぶ「時計算」がどのようなものなのかを、これまで同様にサピックスの「Daily Support」を用いてご紹介したいと思います。
まずは、A問題で学ぶ「時計算の基本」を見てみましょう。
(A問題より)
10時15分に時計の長い針と短い針のつくる角で、小さい方の角の大きさは( )度です。
【解答例】
時計算も、通過算と同じように「絵をかいて整理」します。
(解き方1)
はじめは4年生までに習った「時計の読み方」を応用した解き方で、文字盤の数字と数字の間隔が 360度÷12=30度 であることを利用します。
短針は1時間で30度動きますから、15分間ではその60分の15(=1/4)だけ動きます。
30度×1/4=7.5度
上の図から、
30度×5-7.5度=142.5度
が答えです。
(解き方2)
次は「角速度」を利用する解き方です。
長針は1分間に
360度÷60分=6度/分、
短針は1分間に
30度÷60分=0.5度/分
動きます。
上の図から、60度-7.5度+90度=142.5度 が答えとわかります。
(解き方3)
さらに5年生で学んだばかりの「旅人算」を利用して解くこともできます。
上の図から、2つの針の間の角の大きさが
30度×10時-(6度/分-0.5度/分)×15分=217.5度
とわかります。
しかし、この角は長い針と短い針が作る大きい方の角なので、
360度-217.5度=142.5度
のようにして180度より小さい方の角を求めます。
このように、「Daily Support」のA問題では、4年生までに学んだ時計の読み方から、「速さ(角速度と旅人算)」を利用した5年生の解き方にレベルアップするところまでを取り扱っています。
このレベルアップした考え方が、次のB問題で使われます。
(B問題より)
3時と4時の間で時計の両針が重なる時刻は3時( )分( )秒です。
【解答例】
上記の(解き方3)を利用します。
上の図から、
30度×3÷(6度/分-0.5度/分)=180/11分=16分21 9/11秒
のように、「旅人算の追いつき」と同じ解き方で答えを求めることができます。
このことが理解できれば、図を次のような「短針を止めた絵」に代えることもできます。
では、ここまでの学習ポイントをまとめておきましょう。
ここまで理解が進むと、C問題で取り扱う「反対側で一直線になる時刻」やD問題の「両針の角の大きさが90度になる時刻」を求める問題も正解が可能になります。
では、最後にE問題から1問、ご紹介しておきます。
(E問題)
4時から5時の間で、時計の長い針と短い針の間がはじめて44度になってから、2回目に44度になるまでに( )分間かかります。
【解答例】
D問題で学ぶ「90度になる時刻」の発展問題です。
D問題と同じ方法で44度になる2回の時刻を計算すればその差が答えとなりますが、ここではB問題でご紹介した解き方を応用してみましょう。
上のように「短針を止めた」絵をかくと、求める答えは、長針が88度動くのにかかる時間であることがわかります。
「短針を止めて」いますから、
88度÷(6度/分-0.5度/分)=16分間
がこの問題の答えです。
このように、時計算は、A問題やB問題で「複数の考え方」を学んで身につけておくと、C問題以降の問題も決して難しくはありません。
これまで6回にわたって、5年生が学ぶ「速さ」について見てきました。
他の大手進学塾と同様にサピックスの学習カリキュラムも「螺旋階段状学習(スパイラル方式)」です。
そのため、5年生のこの時期に学ぶ「速さ」は中学入試の基礎的な内容が中心となっています。
しかしそれだけに、ここの学習で「取りこぼし」があると、次に「速さ」を学ぶときに問題を解くことができません。
「取りこぼし」だけでなく、
「なぜそのような解き方になるのか」
「別の解き方はないのか」
といった中身の濃い学習が不足していても同様の結果になります。
「速さ」は中学入試の頻出問題です。
5年生で学んだ「速さ」に苦手な問題が残っていないか、いまのうちに点検し、残っているようであればできるだけ早い時期に解消しておくことができるといいですね。