第705回 男子中の入試問題 比と割合 5
「第705回 男子中の入試問題 比と割合 5」
前回は、2024年度に男子中の入試で出された「比と割合」の中から、「売買算」と「仕事算」について考えました。
今回は「ニュートン算」の問題をみていきます。
1問目は基本レベルの問題です。
【問題】水が入った水そうに、一定の量で水を入れると同時にポンプを使って水をくみ出します。水そうを空にするには、5台のポンプでは60分かかり、7台のポンプでは30分かかります。14分以内に水そうを空にするには、最も少ない場合で何台のポンプが必要ですか。
(城北中学校 2024年 問題2-(5) 問題文一部変更)
【考え方】
ニュートン算は「邪魔をされる仕事算」とも言えますから、解き方の基本は仕事算とほぼ同じです。
はじめに、「名前のない仕事算」の解き方を利用してみましょう。
ポンプ1台が1分でくみ出す水の量を1とします。
ポンプがくみ出した水の量は、5台では
1×5台×60分=300
7台では
1×7台×30分=210
です。
くみ出した水の量が等しくない理由は、水を入れている時間が等しくないからです。
このことを線分図で表します。
(ア)に着目すると、
60分-30分=30分
入れた水の量が
300-210=90
とわかります。
90÷30分=3 … 1分に入る水の量
ですから、はじめに入っていた水の量も
300-3×60=120
とわかります。
14分で水そうを空にするために必要なポンプの台数を□台として、線分図をかきます。
1×□台×14分=120+3×14分 → □=162÷14=11.5…
よって、14分以内に水そうを空にするには最も少ない場合で
11台+1台=12台
のポンプが必要です。
答え 12台
「名前のある仕事算」の解き方を利用すると、次のようになります。
はじめに入っていた水の量を時間(30分、60分)の最小公倍数の60とします。
☆=60÷60分=1 … 1分で5台のポンプがくみ出す水の量と入れる水の量の差
★=60÷30分=2 … 1分で7台のポンプがくみ出す水の量と入れる水の量の差
差に着目すると、1分で1台のポンプがくみ出す水の量は
(2-1)÷(7台-5台)=1/2
とわかります。
☆=1 より
1/2×5台-1分で入れる水=1 → 1分で入れる水=5/2-1=3/2
です。
60の水を14分で空にするには、1分で
60÷14=30/7
の水を減らす必要があります。
ポンプの台数を□台とします。
1/2×□台-3/2=30/7
□=(30/7+3/2)÷1/2=81/7=11 4/7 → 12台
答え 12台
本問は、ニュートン算の解き方の基本が確認できる問題です。
ニュートン算も前回の仕事算と同じように、単位あたりの仕事量(例:1台のポンプが1分でくみ出す水の量)を1とする解き方と、全体の仕事量(例:はじめに水そうに入っていた水の量)を時間などの最小公倍数とする解き方があります。
2問目も基本レベルの問題です。
【問題】ある牧草地に牛が放牧されています。牧草地の草を、52頭ではちょうど12日で食べつくし、37頭ではちょうど21日で食べつくします。ただし、1日あたりに牛1頭が食べる草の量と、1日あたりに生える草の量は、それぞれ一定とします。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)草を食べつくすことなく放牧できる牛の頭数は最大何頭ですか。
(2)32頭を放牧すると、草を食べつくすのはちょうど何日ですか。
(世田谷学園中学校 2024年 問題4)
【考え方】
牛に名前がついていませんので、「名前のない仕事算」の解き方を利用することにします。
1日あたりに牛1頭が食べる草の量を1として、条件を線分図に整理します。
1×52頭×12日=624
1×37頭×21日=777
(ア)に着目します。
(777-624)÷(21日-12日)=17 … 1日あたりに生える草の量
「草を食べつくすことがない」のは
(1日あたりに牛が食べる草の量)≦(1日あたりに生える草の量)
ときです。
このときの牛の最大の頭数を□頭とします。
1×□頭 ≦ 17 → □頭 ≦ 17÷1=17頭
答え 17頭
(2)
624-17×12=420 … はじめに生えていた草の量
草を□日で食べつくすとします。
1×32頭×□日-17×□日=420 → □日=420÷(32-17)=28日
答え 28日
本問も、ニュートン算の基本が確認できる問題です。
なお、(2)の解答例はで分配のきまりを利用していますが、「420前にいる速さ17の草を、速さ32の牛が追いかける『旅人算』」と考えて
420÷(32-17)=28
とすることもできます。
3問目は応用レベルの問題です。
【問題】3つのポンプA、B、Cがあり、これらのポンプを使って、水そうに水を入れたり、水そうから水を出したりします。空の水そうにAで水を入れ、同時にBで水を出すと18分で満水になります。また、空の水そうにAで水を入れ、同時にCで水を出すと12分で満水になります。ただし、ポンプが1分間に入れる水の量と1分間に出す水の量は同じです。
(1)空の水そうにBで水を入れ、同時にCで水を出すと何分で満水になりますか。
(2)空の水そうにBとCで水を入れ、同時にAで水を出しました。1分後にAだけを止めたところ、水を入れはじめてから4分後に水そうは満水になりました。空の水そうにAで水を入れると、何分何秒で満水になりますか。
(桐朋中学校 2024年 問題5)
【考え方】
(1)
ポンプに名前がついていますから、「名前のある仕事算」の解き方を利用することにします。
水そうの容積を時間(18分、12分)の最小公倍数の36とします。
36÷18分=2 … A-B
36÷12分=3 … A-C
(ア)より、
B-C=1
とわかります。
36÷1=36分
答え 36分
(2)
「入れた水の総量-出した水の総量=満水時の水量」なので、
(B+C)×4分-A×1分=36
です。
(1)より
A-B=2 …(あ)
A-C=3 …(い)
なので、
(あ)+(い)は
A×2-(B+C)=5 → B+C=A×2-5 …(う)
です。
(う)をはじめの式に代入します。
(B+C)×4分-A×1分=36
(A×2-5)×4分-A×1分=36
A×8-20-A×1=36
A=(36+20)÷(8-1)=8
36÷8=4.5分
答え 4分30秒
本問は、応用レベルのニュートン算です。
(1)では条件からBとCの差を見つけることが、(2)では消去算の考え方が、それぞれポイントになっています。
今回は2024年度に男子中の入試で出された「ニュートン算」の問題をご紹介しました。
既習であれば、1問目と2問目を正解できるか確認をしてみましょう。
もし、間違えるようでしたら、仕事算の問題で、単位あたりの仕事量を1とする解き方と、全体の仕事量を時間などの最小公倍数とする解き方をおさらいします。
解き方が確認できましたら、それに線分図や水そう図を組み合わせるなどして、ニュートン算の問題にチャレンジしましょう。