第372回 2018年度中学入試 3
「第372回 2018年度中学入試 3」
今年も小晦日を迎え、残すところあと1日となりました。
しかし、進学塾によっては
「大晦日特訓」や元日からの「正月特訓」などもあり、
受験モードは全開です。
そこで、今回はすでに実施された2018年度の入試から、
海陽中等教育学校の特別給費生入試と
岡山中学のB方式の問題を見ていこうと思います。
海陽中等教育学校の2018年度入試は、
12月16日に仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡・那覇で実施されました。
結果は次の通りです。
受験者平均点と合格者平均点の差が最も大きい科目は算数でした。
その算数の中から何問かご紹介していきます。
海陽中 2018年度 特別給費生入試 算数より
問題1-(1)-(う) すべての位の数字が1である数を、A(1)=1、A(2)=11、A(3)=111、……のように1の個数を使って表すことにします。これらの数の中で13の倍数となるものを1つ求め,記号Aを使って表しなさい。(あ・い省略)
7×11×13=1001という知識があれば簡単に正解できます。
ですから、111111=A(6) と表せます。
もう1問、知識系の問題を見ていきます。
問題3-(3) 1辺が1cmの透明な立方体を図のように縦8個、横6個、高さ4個となるように規則正しく直方体となるように積み上げました。2つの頂点AとBを通るようにレーザー光線で直線を引いたとき、直線が内部を通る立方体は何個ありますか。ただし頂点や辺のみを通る場合は内部を通らないものとします。(1・2・4省略)
串刺し問題の公式
「縦+横+高さ-(縦と横のG.C.M.+横と高さのG.C.M.+高さと縦のG.C.M.)+縦と横と高さのG.C.M.」
という知識があれば、本問も簡単です。
8+6+4-(2+2+4)+2=12(個)
他にも、
問題1-(1)は(あ)が9の倍数条件、(い)が11の倍数条件、
問題3-(1)(2)は「タイル切り」、(4)は「積み木切断(スライス解法)」などが、
知識確認の問題として出されていました。
次は「知識系」以外の問題を見てみます。
問題1-(2) 次の図は1辺5cmの正方形をつなぎ合わせた図形です。これを、どの正方形も重なることなくうまく組み立てると、体積の異なる2種類の直方体が作れます。それぞれの直方体の体積を求めなさい。ただし点線以外で折ってはいけないこととします。
「どのように折れば良いのだろう…」と、
まともに考えると時間がかかる問題ですが、
「問題文を読み替える」と
比較的短時間に答えを出すことができます。
「直方体が作れます」と書かれた部分に着目すると、
「展開図の面積=立体の表面積」なので、
作ることができる直方体の表面積は正方形22面分ということがわかります。
(真正面+真横+真上)×2=表面積 ですから、
ということになります。
このような条件を満たす直方体は
の2種類だけですから、
125cm3×(1×2×3)個=750cm3 と 125cm3×(1×1×5)個=625cm3 が答えです。
もう1問見ていきます。
問題1-(3) 図のような直角三角形があります。○の角と、×の角について、それぞれいくつずつ集めると合わせて180度になりますか。次の□に当てはまる整数を答えなさい。
「○の角を□個 ×の角を□個を集めると、合わせて180度になる。」
この問題を見たとき、
(印のついた2つの角の和は何度ですか)
という練習問題に似ているなと思うと、解き方にも気づけます。
図より、○の角を3個と×の角を2個合わせると180°です。
この2問は、問題演習をする中で
「1つの問題にも複数の解き方がある」
「自分で図を描いて解く」
という学習ができていると
正解できる可能性が高かったのではないかと思います。
海陽中等教育学校の2018年度 特別給費生入試は、
これらの「知識系」「思考系」の他に、
大問2が「書き出し」(類題は他の中学の過去問にあります)、
大問4が「理由説明」という構成となっていて、
偏りのない学習ができてきたかを問うものでした。
次は岡山中学B方式入試の問題です。
今年度の岡山中学B方式の入試問題は、
2枚目がやや取り組みにくかった昨年度と比べ、
1、2枚目とも非常に取り組みやすい問題となっており、
受験生が緊張で力を発揮できなくなる可能性は低くなっていたように思われます。
その岡山中学の問題から、「理由説明」が求められた問題をみていきます。
岡山中 2018年度 B方式 算数より
問題5 1周が5kmの池の周りをA、B、Cの3人が同じ場所を出発して、それぞれが一定の速さで走ります。AとBは午前8時に同時に反対向きに出発し、午前8時20分にAとBは初めて出会いました。Cは午前8時11分にBと同じ向きに出発しました。Cは午前8時25分にAと初めて出会い、Cが1周したときの時刻は午前8時51分でした。
(1) Cの速さは分速何mですか。
(2) A、Bの速さは、それぞれ分速何mですか。
(3) Bが1周する間に、CはBに追いつけるか追いつけないか、解答欄から選びなさい。また、そう考えた理由も書きなさい。
本問(3)のように、
2020年から新しくなる大学入試に対応するためでしょうか、
解き方を書く以外の「記述問題」も増えてきているようです。
【解答例】
時間条件が多いのでダイヤグラム解法がよさそうですが、
「登場人物が3人」いますので複雑なグラフになる可能性もあります。
そこで今回は、新6年生にも使いやすいと思われる
線分図解法を用いてみることにします。
(1)
上から3つ目の線分図より、
5000m÷40分=125m/分 が、Cの速さです。
(2)
上から2つ目の線分図より、
(5000m-125m/分×14分)÷25分=130m/分 が、Aの速さとわかりますので、
上から1つ目の線分図より、
5000m÷20分-130m/分=120m/分 が、Bの速さです。
(3)
追いつけない
(理由)
Bは出発地点に、
8時0分+5000m÷120m/分=8時41分40秒に出発点に戻りますから、
8時51分に出発点に戻るCがBに追いつくことはありません。
最後の小問(3)は、解き方の説明だけでなく、
なぜそのように考えたかを
「相手に伝わるような説明ができるか」という力を
問うための問題のように思われます。
2020年の大学入試改革では、
知識だけではなく思考力・判断力・表現力が求められるとされていますので、
そのことを念頭においた出題でしょう。
2018年度入試を含め、
以後の入試においてもこのような記述問題が出されるでしょうから、
宿題や家庭学習におけるノート作りも
おろそかにできなくなってきそうです。