第701回 男子中の入試問題 比と割合 1
「第701回 男子中の入試問題 比と割合 1」
ここまで2024年度に男子中の入試で出された「数の性質」の問題を見てきました。
今回からは「比と割合」の問題を取り扱っていきます。
その1回目は「割合」です。
1問目は基本レベルの問題です。
【問題】下の図のように、円に三角形を重ねました。円と三角形が重なっている部分(影をつけた部分)の面積は、円の面積の48%で、三角形の面積の4/5倍です。また、太線で囲まれた図形の面積は168㎠でした。次の問いに答えなさい。
(1)円の面積と三角形の面積の比をもっとも簡単な整数の比で表しなさい。
(2)三角形の面積は何㎠ですか。
(立教池袋中学校 2024年 問題4 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
条件を式で表すと次のようになります。
48%=48/100=12/25
(円の面積)×12/25=(三角形の面積)×4/5
この積を1とすると、
(円の面積)×12/25=1 → (円の面積)=1÷12/25=25/12
(三角形の面積)×4/5=1 → (三角形の面積)1÷4/5=5/4
ですから、
(円の面積):(三角形の面積)=25/12:5/4=5:3
です。
答え 5:3
(2)
円の面積を⑤として解く方法もありますが、ここでは連比を利用してみます。
円の面積を25□とすると、太線で囲まれた図形の面積は
25□+15□-12□=28□
です。
28□=168㎠ → 1□=168÷28=6㎠
6㎠×15=90㎠
答え 90㎠
本問は、割合と比の関係の基本を確認できる問題です。
上記の(1)では「積=1」と仮定して解きましたが、「□×A=■×B → □:■=B:A」のように逆比を利用して解くこともできます。
2問目は「元にする量・比べる量・割合」の関係がポイントとなる問題です。
【問題】箱の中に白玉と黒玉がいくつか入っています。白玉は白玉と黒玉の個数の合計の2/3より7個多く、黒玉は白玉の個数の2/7より3個多く入っています。箱の中に黒玉は何個入っていますか。
(明治大学付属中野中学校 2024年 問題2-(4))
【考え方】
割合の元にする量に着目します。
「2/3」の元にする量は「白玉と黒玉の個数の合計」、「2/7」の元にする量は「白玉の個数」で、2つの割合の元にする量は異なっています。
元にする量が2種類ある問題を線分図に整理する場合、原則として2本の線分図をかきます。
この後、「白玉と黒玉の個数の合計」に着目する方法と「白玉の個数」に着目する方法の2通りの解き方がありますが、今回は「白玉と黒玉の個数の合計」に着目することにします。
白玉と黒玉の個数の合計を1□とすると、白玉の個数は
2/3□+7個
と表せます。
すると、黒玉は白玉の2/7よりも3個多いので、
(2/3□+7個)×2/7+3個
=4/21□+2個+3個
=4/21□+5個
と表せます。
図より、
1□=2/3□+7個+4/21□+5個
1□-6/7□=12個
1□=12個÷1/7=84個
とわかります。
84個×2/3+7個=63個 … 白玉の個数
84個-63個=21個
答え 21個
本問は、元にする量が異なる割合があるときの考え方を確認できる問題です。
さらに、「~より…個多い」という条件があるため、分配のきまりを用いて計算する力も求められていました。
3問目は応用レベルの問題です。
【問題】ある小学校の今年の生徒数は、昨年と比べて男子が20%、女子が5%増え、今年の男子と女子の人数の比は4:3になりました。昨年度の生徒数が500人台であるとき、今年の男子の人数は何人ですか。
(巣鴨中学校 2024年 問題1-(5))
【考え方】
本問も割合の元にする量に着目すると、20%の元にする量は昨年の男子の人数、5%の元にする量は昨年の女子の人数です。
線分図に整理することもできますが、ここでは表を利用することにします。
今年の男子の人数を4□とすると、女子の人数は3□です。
4□÷(1+0.2)=10/3□ … 昨年の男子の人数
3□÷(1+0.05)=20/7□ … 昨年の女子の人数
よって、昨年の男女の人数の比は
10/3□:20/7□=7:6
です。
また、今年増えた男子の人数は昨年の男子の人数の20%、つまり1/5倍で、人数は整数ですから、昨年の男子の人数は5の倍数ともいえます。
ですから、昨年の男子の人数は7と5の公倍数の35の倍数です。
仮に昨年の男子の人数を35とすると、昨年の女子の人数は6×5=30ですが、その5%増し、分数で表すと21/20倍となる今年の女子の人数が整数になりません。
従って、昨年の女子の人数は30と20の公倍数の60の倍数とわかります。
よって、昨年の男子の人数は70の倍数、昨年の女子の人数は60の倍数、昨年の新入生の合計は70+60=130 の倍数です。
500台の130の倍数は
130×4=520
だけですから、昨年の生徒数は520人に決まります。
520人×70/130=280人 … 昨年の男子の人数
280人×(1+0.2)=336人
答え 366人
本問は、整数条件が加わった割合の考え方が確認できる問題です。
整数条件を考えるとき、割合を百分率のままにしておいても構いませんが、上記のように分数で表し、その分母に着目するとより考えやすいでしょう。
今回は、2024年度に男子中で出された「割合」がテーマの問題をご紹介しました。
実際には「割合」だけでなく「比」も利用しますが、元にする量と割合の関係、割合と比の関係が問題を解く上で大切なポイントとなっています。
「元にする量×割合=比べる量」という式が使えるのに割合の問題が苦手というときは、基本レベルの問題を使って、文中に出てくる「元にする量×割合=比べる量」という関係を、式や線分図、言葉などで説明する練習から始めてみましょう。