第363回 5年生の学習ポイント 1
「第363回 5年生の学習ポイント 1」
もうすぐ11月です。
6年生は入試まで、関西圏はあと2.5ヶ月、首都圏は3ヶ月となり、
志望校合格のための追い込み学習に忙しい日々を送っていることと思います。
また、
5年生も受験学年である6年生の学習スタートまで、
残り100日を切りました。
6年生になると、大手進学塾では土曜日や日曜日に特訓講座があります。
これらの講座などを含め、塾にいる時間が長くなる6年生の学習と
これまでの5年生の学習とでは大きなちがいがあります。
それは、塾にいる時間が長くなることにより、家庭学習の時間が減るのにも関わらず、
勉強量そのものが増え、当然、その宿題の量も増えるという点です。
そのため、宿題を「こなす」だけで1週間が終わってしまい、
十分に理解できなかったことの復習や定着、テストのまちがい直しまで
手が回りにくくなるという現象がおこってきます。
さらに、塾が忙しくなることによって「家庭学習の時間がとれない」こと以外に、
もう1つ大切なことがあります。
それは、5年生で学んだことが「腑に落ちている」かどうかということです。
サピックスの平常授業、日能研の本科教室、浜学園のマスターコースなど、
大手進学塾の基幹講座は
5年生では6年生ほどは負担がないカリキュラムとなっています。
そのため、
「十分に理解ができている」お子様と
「表面的に宿題をこなしている」お子様との差が、
6年生ほどテストの結果に歴然と現れません。
その結果、
5年生で学んだことが「腑に落ちていない」ことに気づかず6年生になり、
その授業についていけず、ズルズルと成績が下降していくことがあります。
そして、
その兆候は5年生のこの時期あたりから現れ始めます。
一例として、サピックス5年生後半の学習カリキュラムをご紹介します。
9月に学んだ「速さ」、11月以降に学ぶ「平面図形」は
いずれも6年生の学習内容と大きく関係してくる単元です。
9月に学んだ「速さ」は「比を利用して解く問題」が少ないため、
公式を暗記してさえいればある程度の得点はできますから、
5年生段階では、差は余り現れません。
しかし、
11月以降に学ぶ「平面図形」は
「補助線を見つける問題」
「比を利用して解く問題」
「自分で図を描く問題」
が中心になるため、
これまでの「公式の暗記」と「見た目で解く」という方法が通用しにくくなります。
そのため、5年生段階でも「腑に落ちていない」兆候を発見しやすいのです。
例えば、5年生の2月に学んだデイリーサピックスNo.1のE問題に、
次のような問題がありました。
【問題】右の図のように、2つの長方形の一部分を重ねて書いたところ、太線で囲まれた図形の面積が1740cm2になりました。xの長さは何cmですか。
斜線部分の面積がわかれば
台形の公式を使ってxを求めることができるとすぐにわかります。
E問題であっても「公式」と「見た目」で解くことができるのです。
1740cm2-50cm×30cm=240cm2 (x+16cm)×20cm÷2=240cm2 x=8cm
同じ平面図形の学習でも
12月に学ぶデイリーサピックスNo.34になると、
D問題でも次のような問題が取り扱われます。
【問題】右の図のように、高さ3mのがけの手前に高さ12mの電柱が立っています。このとき、長さ2mの棒を地面に垂直に立てたら、棒の影の長さが3mになりました。電柱のがけの下の影ABの長さが7m のとき、がけの上の影CDの長さを求めなさい。
影の問題は、
「自分で図を描き」
「補助線を引き」
「比を利用」して解く問題です。
宿題をするときに
自分で図を描き、
さらに「影問題の補助線は地面と平行」に引き、
その目的は「相似形を作ること」
という深いレベルまで理解できるような学習ができていれば、
あとは「相似比」という「公式」を利用して解くことができます。
ですから、
このような問題を家庭学習で解くことができない、
あるいは
マンスリー確認テストで解くことができないときは
この単元の内容が「腑に落ちていない」可能性があるのです。
また、
正解できていても「式だけ」で解いているときは、
図を描いて解くことができるかを確認し、
理解度の確認をしておくとよいと思います。
図が描けて、補助線も引け、補助線を引く目的まで言うことができれば
式だけで解いていてもOKです。
しかし、
それができないようであれば「問題を暗記している」だけかもしれません。
「暗記している」正解は6年生の学習についていけない危険性を含んでいます。
5年生のこの時期の宿題やテストは、その危険性を知ることが可能なものです。
家庭学習に余裕のある5年生のうちに、
正解できた問題も含めて、理解度を振り返る時間がとれるといいですね。