第696回 男子中の入試問題 数の性質 1
「第696回 男子中の入試問題 数の性質 1」
前回まで、近年に共学中で出された入試問題を見てきました。
今回からは、男子中の入試問題について考えていきます。
その1回目は、「数の性質」の中から「約数と倍数」の基本問題を取り扱います。
1問目は「約数」の問題です。
【問題】100以上300以下の整数のうち、約数の個数が9個である整数をすべて求めなさい。
(海城中学校 2024年 問題1-(4))
【考え方】
約数の個数は、素因数分解を利用すると計算で求められます。
例えば、12は
12=2×2×3
で「2」を2個と「3」を1個かけあわせた数ですから、約数の個数は
(2個+1)×(1個+1)=6個
のように、素数の個数に1をたした数の積で求められます。
ですから、約数が9個の整数は、素因数分解すると素数Aが8個の積または素数Aが2個と素数Bが2個の積で表されるような数です。
・素数Aが8個の積の場合
2×2×2×2×2×2×2×2=256 … ○
3×3×3×3×3×3×3×3=6561 … ×
よって、256だけです。
・素数Aが2個と素数Bが2個の積の場合
2×2×3×3=36 … ×
2×2×5×5=100 … ○
2×2×7×7=196 … ○
2×2×11×11=484 … ×
3×3×5×5=225 … ○
3×3×7×7=441 … ×
5×5×7×7=1225 … ×
よって、100、196、225の3個があります。
答え 100、196、225、256
本問は、約数の個数の求め方が確認できる問題です。
求め方を忘れていたときは、きちんと覚え直しましょう。
2問目も、「約数」に関する問題です。
【問題】60のすべての約数について考えます。分子が1で、分母が60の約数である分数のすべての和はいくつですか。
(高輪中学校 2024年 問題2-(1))
【考え方】
例えば分母が12の約数の場合、
のように、通分すると分子は12の約数の和になります。
12は
12=2×2×3
で「2×2」と「3」をかけあわせた数ですから、約数の和は
(1+2+2×2)×(1+3)=28
のようにして求められます。
60は
60=2×2×3×5
ですから、約数の和は
(1+2+2×2)×(1+3)×(1+5)=168
です。
よって、分子が1で、分母が60の約数である分数のすべての和は
168/60=14/5
です。
答え 14/5(2 4/5、2.8)
本問は、約数の和の求め方が確認できる問題です。
前問の「約数の個数」よりは出題頻度の低い問題ですが、覚えておくと便利な解き方です。
3問目も、2問目と同じ学校で出された、「倍数」に関する問題です。
【問題】1から50までのすべての整数の積は、一の位から連続して0が何個並びますか。
(高輪中学校 2024年 問題2-(2))
【考え方】
整数が
□×10×10×…×10
のように表せるとき、一の位から連続して並ぶ「0」の個数は「×10」の個数と同じです。
ですから、1から50までのすべての整数の積を素因数分解したときにできる「×2×5」の個数を求めればよいことになります。
このとき、「×2」は2の倍数に必ず1個以上含まれ、「×5」は5の倍数に必ず1個以上含まれますが、50以下の整数の中にある5の倍数の方が2の倍数より少ないので、「×5」の個数だけに着目します。
50以下に5の倍数は
50÷5=10個
あり、それらはすべて「□×5」で表せます。
よって、「×5」の個数も10個とわかります。
さらに10個の5の倍数のうち、25と50は25の倍数なので「■×5×5」のように表せ、「×5」を2個含みますから、「×5」は5の倍数で求めた10個に2個を加えた12個あることになります。
答え 12個
本問は「末尾の0」の考え方が確認できる問題です。
上記では順に考えましたが、考え方が定着していれば、次のような「逆割り(すだれ算)」を利用することもできます。
では、4問目です。
【問題】284個の分数
のうち、約分できない分数は何個あるか答えなさい。
(日本大学豊山中学校 2024年 問題2-(5))
【考え方】
分数の分子と分母がどちらも「整数×□(□の倍数)」で表せるとき、その分数は□で約分することができます。
ですから、
285=3×5×19
より、分子が3または5または19の倍数の分数は約分ができます。
285は約分できる分子で、約分できない分子ではありませんから、分子を1以上285以下として考えても、1以上284以下の場合と同じ答えになります。
285÷3=95(個)… 3の倍数の個数
285÷5=57(個)… 5の倍数の個数
285÷19=15(個)… 19の倍数の個数
285÷15=19(個)… 15の倍数の個数
285÷57=5(個)… 57の倍数の個数
285÷95=3(個)… 95の倍数の個数
285÷285=1(個)… 285の倍数の個数
(95+57+15)-(19+5+3)+1=141(個)… 約分できる分子の個数
285-141=144(個)… 約分できない分子の個数
答え 144個
本問は、約分と倍数の関係が確認できる問題です。
もし、正解できないようでしたら、約分できる分母と分子の関係、3円のベン図の考え方のそれぞれについての知識を確かめましょう。
今回は、2024年度に男子中の入試で出された「約数と倍数」の基本問題をご紹介しました。
約数の個数や和の求め方、末尾の0の求め方、約分できることの意味、ベン図の使い方などは、計算の仕方とその理由を合わせて身につけておくことが望ましいです。
習い終えていても忘れたり間違えて覚えたりするようでしたら、できるだけ早めの復習をしておきましょう。