第689回 共学中の入試問題 立体図形 4
「第689回 共学中の入試問題 立体図形 4」
これまで、近年の共学中の入試で出された「立体図形」の問題について考えています。
前回は「立体の切断」の問題を取り扱いました。
今回見ていく問題は「立体の切断」の応用問題と「水の入った容器を傾ける」問題です。
1問目は、「立体の切断」の応用問題です。
【問題】下の図のように1辺の長さが6㎝の立方体ABCD-EFGHがあります。辺AB、AD、AE上に AP:PB=AQ:QD=ER:RA=1:2 となるように、3点P、Q、Rをそれぞれとります。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)三角形PQRの面積を求めなさい。
(2)三角形PQRと対角線AGの交わる点をXとするとき、AX:XGを求めなさい。
(3)三角すいA-PQXの体積を求めなさい。
(江戸川学園取手中学校 2024年 問題6 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
立方体の辺は3点P、Q、Rによって、1:2=2㎝:4㎝に分けられます。
そこで、1辺の長さが6㎝の立方体から、4点A、P、Q、Rを含む1辺の長さが4㎝の立方体を取り出すと、次のようになります。
点P、Qはこの取り出した立方体の辺の真ん中の点、Rは頂点ですから、3点P、Q、Rを通る平面でこの立方体を切断してできる三角すいA-PQRの展開図は、1辺の長さが4㎝の正方形に表せます。
よって、三角形PQRの面積は
4㎝×4㎝-(2㎝×4㎝÷2×2+2㎝×2㎝÷2)=6㎠
です。
答え 6㎠
(2)
はじめに、見取り図をかいて様子を確認します。
次に、真上から見た図をかきます。
真上から見た図から、点Xは面AEGC上にあることがわかりますので、面AEGCに対して垂直な向きから見た図をかきます。
SRを延長して、相似な三角形を作ります。
三角形ARSと三角形ERTは相似で、相似比は
AR:ER=2:1=AS:ET
です。
ET=1×1/2=0.5
TG=0.5+1+2+3=6.5
三角形AXSと三角形GXTは相似で、相似比は
AS:GT=1:6.5=2:13=AX:XG
です。
答え 2:13
(3)
見取り図をかいて様子を確認します。
図より、三角すいA-PQRの底面を三角形PQR、三角すいA-PQXの底面を三角形PQXとみると、2つの三角すいの高さは同じです。
(2)よりわかる、
SR:RT=2:1
SX:XT=2:13
を利用します。
よって、
SR:SX=10:2=5:1
です。
三角形PQRと三角形PQXは底辺PQが共通ですから、面積比と高さの比は同じです。
高さの比 SR:SX=5:1
↓
面積比 三角形PQR:三角形PQX=5:1
三角すいA-PQRと三角すいA-PQXは高さが同じですから、体積比と底面積比は同じです。
底面積比 三角形PQR:三角形PQX=5:1
↓
体積比 三角すいA-PQR:三角すいA-PQX=5:1
2㎝×2㎝÷2×4㎝÷3=8/3㎤ … 三角すいA-PQRの体積
8/3㎤×1/5=8/15㎤
答え 8/15㎤
本問は、長さを求めるときの投影図の使い方が確認できる問題です。
正解できなかったときは、長さを求めたい直線に対して垂直となる向きから立体を見るという考え方をチェックしましょう。
2問目は、「水の入った容器を傾ける」問題です。
【問題】図1のように1辺が30㎝の立方体の容器に深さ15㎝まで水を入れました。このとき、水面は底面と平行です。以下、水面を網目部分で表します。
(1)ゆっくりと容器を一定の方向に傾けていきます。
① 図2のように傾けたとき、xの値を求めなさい。
② 図1の状態から図3になるまでさらに容器を傾けました。水が通過した部分の体積を求めなさい。
(2)立方体の容器に穴のあいたふたをかぶせました。そのあと、ゆっくりと容器を図4のように傾けました。残っている水の体積を求めなさい。ただし、ふたの穴は図5のように面の対角線を4等分する点を結んで得られる正方形とします。
(昭和学院秀英中学校 2024年 問題5 問題文一部変更)
【考え方】
(1-①)
図1の水も図2の水も体積が等しく、高さも30㎝で共通ですから、底面積も等しいです。
15㎝×30㎝=(x㎝+2㎝)×30㎝÷2
x㎝=15㎝×30㎝×2÷30㎝-2㎝=28㎝
答え 28
(1-②)
水の部分の底面の変化を①と同じ向きから見ると、次のようになります。
このとき、容器を傾ける代わりに水面を傾けると、図をかきやすいです。
よって、水が通過する部分は次のような五角柱です。
(30㎝×30㎝÷2+15㎝×15㎝÷2)×30㎝=16875㎤
答え 16875㎤
(2)
容器の中に残る水は、三角すい台ABC-DEFです。
三角すい台の体積は、大小の相似な三角すいの体積の差として求められます。
三角形ACGと三角形DFGは相似で、相似比は
AC:DF=30㎝:15㎝=2:1=CG:FG
です。
よって、
CF:FG=(2-1):1=1:1
なので、
CF=FG=30㎝
CG=30㎝×2=60㎝
です。
30㎝×30㎝÷2×60㎝÷3-15㎝×15㎝÷2×30㎝÷3=7875㎤
答え 7875㎤
本問は、容器を傾ける問題の基本が確認できる問題です。
どの問題も図が与えられていましたが、作図が必要なときは水面を切断面と見なし、立体の切断と同じ方法を用いて作図をします。
なお、(1)では正方形の面を底面とみると、「高さの平均」を利用することもできます。
また、(2)は相似比と体積比の関係を使って解くこともできます。
今回は、2024年度に共学中の入試で出された「立体の切断」の応用問題と「水の入った容器を傾ける」問題をご紹介しました。
どちらも応用レベルの問題ですので難しく感じたかもしれません。
そのようなときは、解説を参考にして、可能な範囲で理解を深めていきましょう。