第685回 共学中の入試問題 平面図形 7
「第685回 共学中の入試問題 平面図形 7」
これまで近年の共学中の入試で出された「平面図形」の問題について考えてきました。
「平面図形」の最終回となる今回も、前回に引き続き「転がり移動」がテーマとなっている、大問形式の問題を見ていきます。
長文問題ですが、定番問題でもありますので、既習範囲であればチャレンジしてみましょう。
【問題】現在使われている1円玉硬貨の直径は2㎝です。この1円玉硬貨を以下のように円盤の周りをすべらせずに回転させながら、移動させることを考えます。ただし、円盤は動きません。次の各問いに答えなさい。ただし、円周率は3.14とします。
(1)最初に、円盤を別の1円玉硬貨として、図1のように1円玉硬貨を真上の位置から、矢印の方向にすべらせずに回転させながら、移動させます。次の①、②に答えなさい。
① 図2のように、ちょうど真横の位置まで移動させたとき、移動させている1円玉硬貨の表面の文字の向きは、図3のア○~エ○の中のどれになっていますか。記号で答えなさい。
② ちょうど1周して再び図1の位置に戻ってきたとき、1円玉硬貨の表面の文字の向きも図1と同じにありました。移動させている途中で、1円玉硬貨の表面の文字の向きが図3のア○になったのは、何回ありましたか。ただし、最初と最後の位置については、回数に含めません。
(2)次に、図4のように直径が6㎝の円盤の周りを、真上の位置から矢印の方向にすべらせずに1円玉硬貨を回転させながら、移動させます。ちょうど1周して再び図4の位置に戻ってきたとき、1円玉硬貨の表面の文字の向きも図4と同じになりました。移動させている途中で、1円玉硬貨の表面の文字の向きが図3のア○になったのは、何回ありましたか。ただし、最初と最後の位置については、回数に含めません。
(3)次に、図5のように直径が7.2㎝の円盤の周りを、真上の位置から矢印の方向にすべらせずに1円玉硬貨を回転させながら、移動させます。この移動では、1周して再び図5の位置に戻ってきたとき、1円玉硬貨の表面の文字の向きは図5と同じになりませんでした。そこでこの位置にきたときに、1円玉硬貨の表面の文字の向きが図5と同じになるまで円盤の周りを移動させました。次の①、②に答えなさい。
①1円玉硬貨は、円盤の周りを何周しましたか。
②移動させている途中で、1円玉硬貨の表面の文字の向きが図3のア○になったのは、何回ありましたか。ただし、最初と最後の位置については、回数に含めません。
(早稲田実業中等部 2024年 問題5 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
①
円盤(影をつけた1円玉硬貨)の弧ABの長さは
2㎝×3.14×1/4=1.57㎝
ですから、それにそって移動する1円玉硬貨の弧AC=弧BDの長さも1.57㎝です。
移動する1円玉硬貨の円周上の点Aは、1円玉硬貨が円盤の周りを1.57㎝移動するとDの位置にきますから、答えは図3のウ○です。
答え ウ○
②
①と同様に、1円玉硬貨の円周の1/4に着目します。
弧(赤線)の長さはどれも1.57㎝で同じです。
ですから、円盤と接していた1円玉硬貨の円周上の点(●)の移動に着目すると、1円玉硬貨は次のように移動することがわかります。
最初と最後は回数に含めませんから、ア○のようになるのは1円玉硬貨が円盤のちょうど真下の位置まで移動したときの1回だけです。
答え 1回
(2)
1円玉硬貨が円盤の円周上をAからBまで移動すると、初めて1円玉硬貨の表面の文字の向きがア○になるとします。
このとき、AOとDPは平行ですから、おうぎ形OABとおうぎ形PDBの中心角の大きさは同じ(○)です。
よって、おうぎ形OABとおうぎ形PDBは相似で、相似比は
(6㎝÷2):(2㎝÷2)=3:1
です。
ですから、弧BDの長さを①㎝とすると、弧ABの長さは
①㎝×3=③㎝
です。
また、3つの赤線の長さはどれも等しいので、1円玉硬貨の円周の長さは
①㎝+③㎝=④㎝
です。
ですから、おうぎ形PBDの中心角(○)の大きさは
360度×1/4=90度
とわかります。
以上より、はじめて1円玉硬貨の表面の文字の向きがア○になるのは、1円玉硬貨が円盤のちょうど真横の位置まで移動したときです。
この後も、1円玉硬貨が円盤の円周上を③㎝移動すると、1円玉硬貨の表面の文字の向きが○アになります。
よって、1円玉硬貨の表面の文字の向きが○アになるのは、全部で3回あります。
答え 3回
(3)
①
(2)と同じように作図をします。
おうぎ形OABとおうぎ形PDBは相似で、相似比は
(7.2㎝÷2):(2㎝÷2)=18:5
です。
ですから、弧BDの長さを⑤㎝とすると、弧ABの長さは⑱㎝、1円玉硬貨の円周の長さは
⑤㎝+⑱㎝=㉓㎝
です。
また、1円玉硬貨と円盤の直径の比が
7.2㎝:2㎝=18:5
なので、円盤の円周の長さは
㉓㎝×18/5=82.8○㎝
です。
よって、1円玉硬貨は円盤の円周上を⑱㎝進むごとに表面の文字の向きに図3のア○と同じになり、また、82.8○㎝進むごとに図5の位置に戻ることがわかります。
18と82.8の最小公倍数は414なので、1円玉硬貨が円盤の周りを
414○㎝÷82.8○㎝=5周
すると、表面の文字の向きが図5と同じになります。
答え 5周
②
1円玉硬貨は円盤の円周上を⑱㎝進むごとに表面の文字の向きに図3のア○と同じになります。
414○㎝÷⑱㎝=23(回)
ただし、最後の位置は回数に含めないと問題文中にありますから、
23回-1回=22回
が答えです。
答え 22回
本問は、円の周りを円が転がり移動するときの考え方が確認できる問題です。
正解できなかったときは、「同じ向き」の作図が正しいか、図から読み取れる相似が利用できているか、「元の位置に戻る」と最小公倍数の関係が理解できているかなどをチェックしてみましょう。
今回は、2024年度に共学中の入試で出された「転がり移動」の問題を、前回に引き続いてご紹介しました。
長文問題でしたので1題だけのご紹介となりましたが、その内容は定番のものですので、一度は解いておきたい問題です。
次回からは「立体図形」について見ていく予定です。