第683回 共学中の入試問題 平面図形 5
「第683回 共学中の入試問題 平面図形 5」
前回は、近年の共学中の入試で出された「辺の比と面積比」の問題を取り扱いました。
今回は、「点や図形の移動」について見ていきます。
1問目は、定番の基本問題です。
【問題】次の図は、1辺の長さが2mの正八角形の建物を上から見たものです。1つのかどには、ロープで犬がつながれています。次の場合、犬が動くことのできる範囲の面積を求めなさい。ただし、円周率は3.14とします。
(1)ロープの長さが2mの場合
(2)ロープの長さが8mの場合
(法政大学中学校 2024年 問題4 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
ロープをピンと張ったときの犬の動きを作図します。
360度÷8=45度 … 正八角形の1つの外角
180度-45度=135度 … 正八角形の1つの内角
360度-135度=225度 … おうぎ形の中心角
2m×2m×3.14×225度/360度=7.85㎡
答え 7.85㎡
(2)
ロープが正八角形の頂点に接すると、続くおうぎ形の半径が2m短くなることに気をつけながら、作図します。
半径が8mのおうぎ形のおうぎ形の中心角は(1)と同じ225度、他のおうぎ形の中心角はどれも正八角形の外角と同じ45度です。
8m×8m×3.14×225度/360度=40×3.14㎡
6m×6m×3.14×45度/360度×2=9×3.14㎡
4m×4m×3.14×45度/360度×2=4×3.14㎡
2m×2m×3.14×45度/360度×2=1×3.14㎡
合計すると、
(40+9+4+1)×3.14=169.56㎡
です。
答え 169.56㎡
本問は、点の移動の作図が確認できる問題です。
おうぎ形の半径が変化することに気をつけて、作図をしましょう。
2問目は、図形の平行移動に関する問題です。
【問題】下の図のように直線の上に2つの図形ア、イがあります。図形アは直角二等辺三角形で、図形イは台形です。はじめ、図形ア、イは下の図のような状態にあり、この状態から図形アが毎分1㎝の速さで直線上を矢印の向きに進みます。動き始めてから6分後に図形ア、イの重なっている部分の面積が9㎠となります。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)図形イのCDの長さを求めなさい。
(2)動き始めてから12分後に図形アと図形イの重なっている部分の面積を求めなさい。
(3)図形アと図形イの重なっている部分の面積が9㎠となるときは2回あります。1回目は動き始めてから6分後です。2回目は動き始めてから何分何秒後か求めなさい。
(江戸川学園取手中学校 2024年 問題4 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
「45度」は「直角二等辺三角形を探す・作る」というヒントです。
そこで、AからBCに垂線をおろし、直角二等辺三角形ABEを作ります。
BE=10㎝-7㎝=3㎝=AE=CD
答え 3㎝
(2)
図形アは12分で
1㎝/分×12分=12㎝
動きますから、はじめに各頂点を12㎝動かし、次に動かしたあとの頂点を結んで作図を完成させます。
重なっている部分は、図形アから2つの直角二等辺三角形を取り除いたものです。
□㎝=12㎝-10㎝=2㎝
図形アは底辺を8㎝とみると、高さは
8㎝÷2=4㎝
ですから、
☆㎝=4㎝-3㎝=1㎝
です。
★㎝=☆㎝×2=1㎝×2=2㎝
8㎝×4㎝÷2=16㎠ … 図形アの面積
2㎝×2㎝÷2=2㎠ … 水色部分の面積
2㎝×1㎝÷2=1㎠ … 緑色部分の面積
16㎠-(2㎠+1㎠)=13㎠
答え 13㎠
(3)
(2)の結果から、重なっている部分の面積が2回目に9㎠になるのは12分後より後とわかります。
そこで、(2)からさらに図形アが右に動いて図形アの右側の辺が図形イのDを通るとき(切りのよい位置)について、まず、調べてみます。
(10㎝+3㎝)÷1㎝/分=13(分後)
16㎠-(1㎠+3㎝×3㎝÷2)=10.5㎠ … 13分後に重なっている部分の面積
ですから、重なっている部分の面積が2回目に9㎠になるのは、重なっている部分の面積がさらに
10.5㎠-9㎠=1.5㎠=◎㎠
減ったときです。
影をつけた部分は高さが3㎝の平行四辺形ですから、
■㎝=1.5㎠÷3㎝=0.5㎝
です。
(13㎝+0.5㎝)÷1㎝/分=13.5分後
答え 13分30秒後
本問は、図形の平行移動の作図と計算方法が確認できる問題です。
正確な作図、少し動かしてみるという試行が大切なポイントになっています。
3問目は、図形の回転移動に関する問題です。
【問題】図1のような、辺ABの長さが6㎝、辺BCの長さが12㎝、角Bの大きさが30度の三角形ABCがあります。この三角形を、頂点Bを中心に時計と反対回りに回転させます。図2の三角形DBEは、三角形ABCを回転させたものであり、このとき辺BCと直線DAは平行になりました。円周率は3.14とします。
(1)三角形ABCの面積を求めなさい。
(2)頂点Aが動いてできる線の長さを求めなさい。
(3)三角形ABCが通過した部分の面積を求めなさい。
(三田国際学園中学校 2024年 問題3 問題文一部変更)
【考え方】
(1)
三角形ABCの中に、正三角形を半分にした、3つの内角の大きさが30度、60度、90度の直角三角形ABHを作ります。
AH=AB÷2=6㎝÷2=3㎝ … 三角形ABCの高さ
12㎝×3㎝÷2=18㎠
答え 18㎠
(2)
平行線の錯角は等しいので、角ABC=角BAD=30度です。
また、三角形ABCと三角形DBEは合同ですから、AB=DBです。
よって、三角形BADは二等辺三角形なので、
角DBA=180度-30度×2=120度
です。
つまり、三角形ABCの頂点Aは頂点Bを中心として120度回転しています。
6㎝×2×3.14×120度/360度=12.56㎝
答え 12.56㎝
(3)
三角形ABCの頂点A、Cが頂点Bを中心として120°回転してできる線をかくと、三角形ABCが通過した部分は、三角形DBE(水色部分)とおうぎ形BCE(赤色部分)を合わせたものとわかります。
18㎠+12㎝×12㎝×3.14×120度/360度 =168.72㎠
答え 168.72㎠
本問は、回転移動の作図をするときは回転する頂点に着目するという基本が確認できる問題です。
移動後の図形が与えられているので、回転移動を既習であればぜひ全問正解させたい問題です。
なお、(1)では、「30度三角形の面積=30度の角をはさむ2辺の積÷4」を利用してもOKです。
今回は、2024年度に共学中の入試で出された平行移動や回転移動の問題をご紹介しました。
これらの移動は「転がり移動」の基礎ともなりますので、正解できなかったときは、作図方法、角の大きさや辺の長さの計算方法を復習しましょう。