第675回 共学中の入試問題 速さ 1
「第675回 共学中の入試問題 速さ 1」
前回まで、近年の共学中の入試で出された「比と割合」について考えましたが、今回からは「速さ」について見ていこうと思います。
1問目は基本レベルの大問形式の問題です。
【問題】Aくんは、家から1.6㎞離れた学校に通っています。普段は午前7時42分に家を出て、午前8時7分に学校に到着します。
(1)普段、学校に向かう速さは毎分何mですか。
今日も普段と同じ時刻に家を出て、普段と同じ速さで学校に向かいました。しかし、学校に向かう途中で忘れ物に気がついたので、急いで家に戻りそのままの速さで学校に向かったところ、学校には普段と同じ時刻に着きました。ただし、家に戻ってから忘れ物を探す時間は考えないものとします。
(2)家を出てから5分後に忘れ物に気がついたとすると、Aくんが家に戻るときの速さは普段の速さの何倍ですか。
(3)Aくんは普段の速さの2倍まで、急いで移動することができます。忘れ物をして家に戻っても同じ時刻に学校に到着できるのは、家を出てから何分何秒以内に忘れ物に気がついたときですか。
(芝浦工業大学柏中学校 2024年 問題7)
【考え方】
(1)
速さの3公式(距離÷時間=速さなど)の問題です。
午前8時7分-午前7時42分=25分 … 家から学校までにかかる時間(普段)
1.6㎞=1600m
1600m÷25分=64m/分
答え 毎分64m
(2)
状況を線分図に整理します
条件を線分図に整理したときの原則は、「→に距離または距離の比を書く」です。
また、同時マークにも着目します。
64m/分×5分=320m … ●→■の距離
25分-5分=20分 … ■→○の時間
320m+1600m=1920m … 青線の長さ(■→□→○)
忘れ物に気づいてから学校まに移動した距離が1920m、かかった時間が20分ですから、速さは
1920m÷20分=96m/分
です。
96m/分÷64m/分=1.5倍
答え 1.5倍
(2)
64m/分×2=128m/分
1600m÷128m/分=12.5分 … □→○の時間
25分-12.5分=12.5分 … ●→■→□の時間
●→■と■→□の距離はわかりませんが、同じ距離ですから比が利用できます。
12.5分×2/(2+1)=25/3=8 1/3分 → 8分20秒
答え 8分20秒以内
本問は、速さの基本が確認できる問題です。
条件を線分図に整理したときは、速さの3公式を使って→に距離を書き、速さの3公式が使えない部分については速さと比の関係を利用するという、基本の解き方をチェックしましょう。
2問目は、1問目の応用問題です。
【問題】芝田くんと田浦さんは、家を出発し、家から36㎞離れた体育館まで車で向かっています。途中で忘れ物に気づいたため、芝田くんはその地点から車で家まで戻り、田浦さんはその地点から徒歩で体育館に向かいました。芝田くんが家に着いてから再び体育館に向かったところ、芝田くんは田浦さんよりも10分遅れて体育館に着きました。車の速さが時速40㎞、歩く速さが時速4.8㎞のとき、田浦さんが歩き始めたのは家から何㎞のところですか。ただし、芝田くんが家に着いてから、忘れ物をとって再び家を出るまでの時間は考えないものとします。
(芝浦工業大学附属中学校 2024年 問題3-(2))
【考え方】
条件を線分図に整理します。
はじめに「距離が書ける→」に着目します。
40㎞/時×10/60時間=20/3㎞ … ○→体育館の距離
速さの3公式が使える→がもうありませんので、同時マークと速さと比の関係が利用できる→(■→○)に着目します。
線分図を見ると、田浦さんの歩いた距離と芝田さんが田浦さんと別れてから体育館まで移動した距離の和が
36㎞×2=72㎞
になっています。
3□+25□+20/3㎞=72㎞ → 1□=(72㎞-20/3㎞)÷(3+25)=7/3㎞
ですから、田浦さんが歩き始めた地点は家から
36㎞-7/3㎞×3=29㎞
のところです。
答え 29㎞
本問も、条件を線分図に整理したときの考え方が確認できる問題です。
前問では「同じ距離の→」に着目しましたが、本問では「同じ時間の→」に着目しています。
では、3問目です。
【問題】AさんとBさんは高速道路を利用して目的地まで同じ道をそれぞれの車で向かうことにしました。高速道路をAさんは時速98㎞、Bさんは時速70㎞で運転して行きましたが、途中に工事区間があったため、この区間は二人とも同じ速さで運転しました。そのため、予定していた到着時間よりもAさんは19分、Bさんは11分遅れました。工事区間の距離は何㎞ですか。
(青山学院中等部 2024年 問題8 問題文一部変更)
【考え方】
速さ以外の条件が時間の条件のときは、ダイヤグラムに整理すると考えやすくなります。
また、工事区間の位置が指定されていませんので、行程の最初または最後にあったと仮定します。
ここでは、最後にあったと仮定してグラフを書いてみます。
グラフの枠で囲まれた部分について、Bのグラフを左方向に平行移動させます。
グラフより、もし、工事区間をAさんが時速98㎞、Bさんが時速70㎞で運転していれば、Aさんの方がBさんよりも
19分-11分=8分
早く目的地に到着することがわかります。
8分×5/(7-5)=20分 … Aさんが工事区間を時速98㎞で運転したときの時間
98㎞/時×20/60時間=98/3=32 2/3㎞
答え 32 2/3㎞
本問は、速さの条件整理の方法が確認できる問題です。
距離の条件が多いときは線分図、時間の条件が多いときはダイヤグラムという、条件整理の原則をチェックしましょう。
今回は、2024年度の共学中の入試で出された「速さ」の問題の中から、基本レベルの問題を中心にご紹介しました。
1、2問目が正解できないときは、速さの3公式と速さと比の関係の使い分けがマスターできているかを確認しましょう。
また、3問目ではダイヤグラムの書き方やグラフを平行移動させる工夫についてチェックし、応用レベルの問題を解く準備をしていきましょう。