第674回 共学中の入試問題 比と割合 6
「第674回 共学中の入試問題 比と割合 6」
ここまで近年の共学中の入試で出された「比と割合」の問題を見てきました。
最後に「ニュートン算」について考えていきます。
1問目は基本レベルの大問形式の問題です。
【問題】ある工場であめの箱詰め作業をします。作業を始める前に空箱が何箱かあり、1時間ごとに空箱が80箱運ばれてきます。4人で作業すると20時間後に空箱はなくなり、6人で作業すると12時間後に空箱はなくなります。
(1)1時間あたり1人で何箱詰められますか。
(2)作業を始める前に空箱は何箱ありましたか。
(3)何人で作業すると5時間後に空箱はなくなりますか。
(中央大学附属中学校 2023年 問題5)
【考え方】
ニュートン算には、単位量に着目する考え方と全体量に着目する考え方があります。
ここでは、単位量に着目してみます。
単位量を利用するときは、次のような「水そう解法」で整理すると考えやすくなります。
作業を始める前にあった空箱の個数を時間(20時間、12時間)の最小公倍数の60□とします。
4人で作業をすると20時間で空箱がなくなるので、1時間に空箱が
60□÷20時間=3□
ずつ減り、6人で作業をすると12時間で空箱がなくなるので、1時間に空箱が
60□÷12時間=5□
ずつ減ります。
ですから、
6人-4人=2人
が1時間にする作業量は
5□-3□=2□
です。
2□÷2人=1□ … 1人が1時間にする作業量
4人が作業をすると1時間に
1□×4=4□
の空箱が減るはずですが、実際に減る空箱は3□です。
その理由は、1時間ごとに80箱の空箱が運ばれてくるからです。
4□-80箱=3□ → 1□=80箱
答え 80箱
(2)
60□=80箱×60=4800箱
答え 4800箱
(3)
条件を「水そう解法」で整理します。
4800箱÷5時間=960箱/時 … 1時間に960箱減る
960箱+80箱=1040箱 … 何人かが1時間にする作業量
1040箱÷80箱=13人
答え 13人
本問は、ニュートン算の基本が確認できる問題です。
全体の仕事量がわからない問題を単位量に着目して解くときは、全体の仕事量を時間の最小公倍数または1とおけることをチェックしましょう。
2問目も基本レベルの問題です。
【問題】はじめにある量の水が入っている水そうがあります。この水そうに毎秒6mLずつの水を入れながら、同じポンプを何台か使って排水します。ポンプを3台使用したときは35秒で水がなくなり、ポンプを5台使用したときは15秒で水がなくなります。ただし、どのポンプも1秒間で排水する水の量は等しいものとします。
(1)1台のポンプで1秒あたりに排水する水の量は何mLですか。
(2)ポンプを9台使用すると、何秒で水そうの水がなくなりますか。
(成蹊中学校 2024年 問題3)
【考え方】
前問では単位量に着目しましたので、今度は全体量に着目する解き方を利用してみます。
このとき、水そうの水がなくなるので、「排水量=はじめにあった水の量+注水量」という関係が成り立つことに注意します。
ポンプ1台が1秒間に排水する水の量を1として、条件を線分図で表します。
差に着目します。
(210mL-90mL)÷(105-75)=4mL … 1にあたる水の量(=ポンプ1台が1秒間に排水する水の量)
答え 4mL
(2)
4mL×5台×15秒-90mL=210mL … はじめに入っていた水の量
ポンプ9台を使用すると□秒で水がなくなるとします。
36×□mL=210mL+6×□mL
□=210mL÷(36mL-6mL)=7秒
答え 7秒
本問は、ニュートン算の基本が確認できる問題です。
では、3問目です。
【問題】あるワクチンの接種会場には3分間に10人の割合で接種希望者が来ます。接種担当の医師はA、B、Cの3人で、Aは2分間に3人の割合で、Bは3分間に4人の割合で接種を完了します。ある日の9時に、接種待ちの人がいない状態からAとBの2人で同時に接種を開始しました。10時30分には接種待ちの列が長くなったため、そこからCも加わり3人で接種したところ、11時30分に接種待ちの列はなくなりました。このとき、次の問いに答えなさい。
(1)10時30分の接種待ちの人は何人でしたか。
(2)Cは1人あたり何秒の割合で接種を完了しますか。
(明治大学付属明治中学校 2023年 問題4)
【考え方】
(1)
10時30分-9時=1時間30分=90分間
この90分間の様子を、全体量に着目して整理します。
10人×90分/3分=300人 … 10時30分までに来た接種希望者
3人×90分/2分=135人 … 10時30分までにAが担当した人数
4人×90分/3分=120人 … 10時30分までにBが担当した人数
300人-(135人+120人)=45人
答え 45人
(2)
条件を「水そう解法」に整理すると、次のようになります。
11時30分-10時30分=1時間=60分間
45人÷60分間=0.75人 … 1分間に減る接種待ちの列
接種待ちの列がなくなっていくので、
AとBとCが1分間に担当する人数=1分間に来る接種希望者+1分間に減る接種待ちの列
という関係が成り立ちます。
10人÷3分間+0.75人=49/12人 … AとBとCが1分間に担当する人数
49/12人-(3人÷2分間+4人÷3分間)=1.25人 … Cが1分間に担当する人数
Cは1.25人を担当するのに60秒かかりますから、1人あたり
60秒÷1.25人=48秒
かかります。
答え 48秒
本問は、ニュートン算の考え方が確認できる問題です。
なお、解答例の(1)は接種開始から30分後の接種待ちの列の人数を問われていますので全体量に、(2)は1人あたりの時間を求めますので単位量に着目しましたが、次のように考えてもOKです。
今回は、2024年度と2023年度の共学中の入試で出された「ニュートン算」の問題をご紹介しました。
ニュートン算は、全体量と単位量のどちらに着目するかという方針の決定と、方針にそって条件を見やすく整理することの2点が重要です。
もし、1、2問目のような定番問題が正解できないようでしたら、この2点が実行できているかをまずはチェックしてみましょう。