苦手の克服 速さ6
「第295回 苦手の克服 速さ6」
苦手分野の克服として、「速さ」について考えています。
前回は、「ダイヤグラム解法の着目点 相似(基本)」について触れました。
今回はその続きとして、「相似(上級)」を見ていこうと思います。
「相似(基本)」でご紹介した問題は、
ピラミッド型相似や砂時計型相似をすぐに見つけることができるものでした。
今回は少し見つけにくい問題をご紹介します。
「相似(基本)」を攻略できている場合は、
レベルがワンランク上ではどうかということをチェックできる問題です。
2015年度 芝中 入試問題 算数より
大問6 畑から家まで自転車では36分かかり、トラックでは12分かかります。畑から帰ろうと自転車に乗って出発しましたが、途中で自転車が故障してしまいトラックで迎えに来てもらいました。自転車が故障してからトラックが家を出るまでに5分かかり、トラックに故障した自転車を積むのに4分かかりました。その結果、畑を出発してから35分後に家に着きました。自転車が故障したのは、畑を出発してから( )分後です。
問題文を前から順に見ていきます。
「畑から家まで自転車では36分かかり、トラックでは12分かかります。」
時間の比が、自転車:トラック=36分:12分=3:1ですから、
自転車とトラックの速さの比が1:3と、まず始めにわかります。
トラックが自転車よりも速く動くことがわかるように、グラフを書いてみます。
ダイヤグラム解法は「時間条件に着目する」解き方です。
そこで、「?分」を求めるためには、どこがわかればよいかを考えます。
すると、このグラフから利用できそうな相似が見えてきます。
「もう少しで解けそうなのに、そのもう少しがわからない」
というときは、
「まだ使っていない条件が何か」を探します。
「家を出るまでに5分~積むのに4分」という部分はグラフ中に書かれています。
残っている条件は
「35分後に家に~」の部分と、
「自転車とトラックの時間の比が3:1」の部分です。
後者はグラフをそれらしく書くのに使いましたが、
計算には利用していません。
以上から、36分-30分=6分後 とわかります。
「相似(基本)」のピラミッド型相似や砂時計型相似とは異なり、
三角形が離れている点が相似の発見を難しくしています。
※トラックの動きが等脚台形になりますので、
「着眼ポイント4.二等辺三角形」の応用と考えて解くこともできます。
もう1問ご紹介します。
2009年度 筑波大附属中 入試問題 算数より
大問12 ゆたかさんは、バス通りを駅に向かって歩いています。ゆたかさんは駅から来るバスと10分ごとにすれ違い、また駅行きのバスに15分おきに追い越されます。ゆたかさんは、バス停にさしかかったところで、ちょうどバスに追い越されました。その後、雨が降ってきたため、ゆたかさんは、バス停から1分たったところでバスに乗ろうと思い、引き返しました。ゆたかさんがバス停についてから何分後に、次の駅行きのバスがやってくるでしょうか。ただし、ゆたかさんとバスは一定の速さで進み、バスとバスとの間隔は一定であるとします。
時間条件だけの問題でありながら、
線分図で解かれることが多い問題です。
今回は「相似(上級)」の練習として、ダイヤグラムで解いていきましょう。
問題の前半部分「10分ごとにすれ違い~15分おきに追い越されます」を
ダイヤグラムに表すと次のようになります。
ここで、線分図を用いる場合でも、ダイヤグラムを用いる場合でも、
この問題で最も重要な条件「バスとバスとの間隔は一定」に着目します。
難しい問題では、「数値以外」のキーワードに着目することが重要です。
この問題のキーワード「バスとバスとの間隔は一定」を、
ダイヤグラム解法で利用できる時間条件に置き換えると、
例えば「バス停で待っていると、20分ごとにバスが来る」ということです。
ですから、上の2つのグラフはピッタリと重ねることができます。
このグラフから2組の相似を発見することができます。
このことから、バスの運転間隔は、10分+2分=12分とわかります。
問題の後半部分(要約)は、
「ゆたかさんはバス停で追い越され、1分歩いて引き返した」のですから、
引き返すのにも1分かかり、12分-1分×2=10分後
という答え求めることができます。
難関中の入試問題ですが、
今回ご紹介したように
「ダイヤグラム解法→時間条件と相似」
というダイヤグラム解法のルールを守ると、正解することが可能です。
このように、相似を見つけにくい問題や相似を2回使う問題などが、
塾で行われる6年生の実力テストや入試問題で出題されます。
これらの実力テストや入試問題に向け、
「相似(基本)」を身につけ、さらに「相似(上級)」レベルの問題を練習して、
これらの問題が正解できる力を身につけていけるといいですね。
次回は、ダイヤグラムの着目点「山&谷(山あり谷あり)」についての予定です。