苦手の克服 速さ3
「第292回 苦手の克服 速さ3」
「苦手の克服 速さ」について考えています。
前回はその2回目として、「線分図解法の使い方」について、
(1)線分図は「事件(着く・出会う・追いつく・速さを変える)が発生」するところまで書き、一旦手を止めて「わかることはないかな?」と考える
(2)線分図は「同時マークの区間」に着目し、「→に距離や距離の比」を書き込み、「→だけ・2つの→の和・2つの→の差」に着目する
という点について確認しました。
そこで今回は「速さと比」の問題と線分図の関係について考えてみようと思います。
はじめにご紹介する問題の(1)(2)は、
「速さと比」を習っているのに「速さの問題が解けない」という場合の
課題点をチェックすることができます。
「速さが苦手」であれば、
この問題を利用して線分図解法の着目点を再確認してみましょう。
サピックスオープン6年 算数A 2016年6月実施より
大問7 下の図のような、180cm離れたA地点とB地点があります。この両地点の間を点PはA地点から、点QはB地点から同時に出発し、止まらずに何度も往復します。点Pと点Qの速さの比が5:4のとき、次の問いに答えなさい。
(1)点Pと点Qが出発してから1回目に重なるのはA地点から何cmの地点ですか。
(2)点Pと点Qが出発してから2回目に重なるのはA地点から何cmの地点ですか。
(3)何度往復し続けても、点Pと点Qが重なるのは限られた地点だけです。その地点は何か所ありますか。
何度も往復する、「N回目の出会い」問題です。
与えられている条件が、距離条件の180cmと速さ条件の5:4だけですから、
「距離条件の問題は線分図に整理」
という合い言葉の通り、線分図を書いていきます。
図より、⑨=180cmなので⑤=100cmです。
(2) 前問(1)の続きから考えても構いませんし、
点PがA地点から、点QがB地点から同時に出発したときから考えてもOKです。
図より、点Qが進んだ距離は④×2=⑧なので、ア=③=60cmです。
前回確認したように、
「同時マークの区間」に着目し、
次に「→に距離や距離の比」を書き込み、
「→だけ・2つの→の和・2つの→の差」に着目する
という手順に従うと、
「N回目の出会い」問題も、1本道で解くことができます。
(3)は(1)(2)から、
「2回目以降、一度出会ってから次に出会うまでに点Qが動く距離が⑧である」
ことを利用します。
AB間=⑨として、
進む距離が短い点Q
(点PでもOKですが、進む距離が短い方が線分図は見やすいです)
に着目すると、
次の図のように、6回目以降は出会う地点が重なりますので、
答えは5か所です。
(3)は「速さと規則性」に関する問題で、
今回のテーマとは少し異なる分野の問題でした。
ではもう1問、「速さと比」と線分図に関する問題をみていきます。
この問題はダイヤグラムを用いて解くのに適していますが、
「線分図で速さと比の問題が解けない」という場合、
この問題を線分図解法で解き、課題点をチェックしてみましょう。
2010年度 麻布中 入試問題 算数より
大問2 太郎君は自転車で、次郎君は徒歩で、A町を同時に出発し、B町へ向かいました。太郎君と次郎君の速さの比は5:1です。太郎君は途中のP地点で忘れ物をしたことに気づき、A町へ向かって引き返したところ、その4分後に次郎君とすれちがいました。A町にもどって、再びB町へ向かったところ、Q地点で次郎君に追いつき、B町には、太郎君は次郎君より24分早く着きました。2人はそれぞれ一定の速さで移動するものとして次の問いに答えなさい。
(1)太郎君がP地点で引き返したのは出発してから何分後ですか。
(2) A町からQ地点までの距離が800mとすると,A町からB町までの距離は何kmですか。
速さの比と時間の条件がありますから、
「速さ×時間」で距離もわかります。
このことを利用して、線分図に整理してみます。
線分図解法の手順は
「同時マークの区間」に着目し、
「→に距離や距離の比」を書き込み、
「→だけ・2つの→の和・2つの→の差」
に着目するというものでした。
線分図にはア~エの4つの→がありますが、
距離を書き込める→はイとエの2つです。
そこから
「2つの→イとエの和」=「2つの→アとウの差」
という関係が見つかりますから、
24(〇)÷(5-1)=6より、6分後…(1)の答え が求められます。
(2) (1)でわかった時間の条件を利用して、
速さ×時間で求められる距離の比の条件を問題図に書き込みます。
さらに、
「A町にもどって、再びB町へ向かったところ、Q地点で次郎君に追いつき」
までを線分図に書き、
太郞君の→の長さと磁路君の→の長さの比が5:1であることを利用すると、
Q地点の正しい位置も分かります。
上の図のように、Q地点から2人がB町まで進む様子を線分図に書き込むと、
AQ間=800mからAB間=2.4kmも求めることができます。
この問題は速さ以外の条件が「時間条件」ですから、
実際にはダイヤグラム解法の方が説きやすい問題設定になっていますが、
今回は線分図解法のチェックをするため、
ダイヤグラムを用いていません。
今回の2問からチェックできる
「速さと比の問題の線分図解法」のポイントは
以下の3点です。
問題が正解できなかった場合、
この3つのことが実行できているかどうかを調べてみてください。
もし、実行できていないことで不正解になっているようでしたら、
演習を通して身につけていけるといいですね。
次回からは、ダイヤグラム解法について考えていく予定です。