2016年度中学入試 筑波大学附属駒場中・桜蔭中
第273回 「平成28年度 私立中学入試 筑波大学附属駒場中・桜蔭中」
2016年度の中学入試もほぼ終了しました。
今年も各学校から、工夫された問題や特徴的な問題が多く出題されましたので、
これから順にご紹介していく予定です。
今回ご紹介する学校は、筑駒中、桜蔭中です。
先ずは筑駒中です。
試験時間は40分で、例年通りに大問4題という構成でした。
その中からご紹介する大問4は、「辺の比と面積比」を用いる問題です。
新6年生でも既習であれば、ぜひ挑戦してみて下さい。
少し工夫をすると楽に解くことができますよ。
平成28年度 筑波大学附属駒場中学 入学試験問題 算数 より
大問4 正三角形ABCの辺上に点D、Eがあり、ADとDBの長さの比は3:2、AEとECの長さの比は2:3です。また、点Fは次の(1)、(2)、(3)のように、正三角形ABCの内側にあります。正三角形ABCの面積が100cm2のとき、三角形PBCの面積を、それぞれ求めなさい。(設問文一部変更)
(1) PはDE上にあり、DPとPEの長さの比は2:1です。
(2) Fは辺AB上にあり、AFとFBの長さの比は1:4、Gは辺AC上にあり、AGとGCの長さの比は4:1、PはDEとFGが交わった点です。
(3) PDとAB、PEとACはそれぞれ垂直です。
図形の面積を求める方針は、
「直接、面積を求める」「全体から不要な部分を引く」
の2つが大原則です。
(1)の答え 53 1/3cm2
解き方がいくつかあるときは、それぞれの解き方の理由を確認し、
自分の理解度を確認したり深めたりすることが大切です。
その学習が、公開模試などの大テストや入試において
点数を伸ばしていくことにつながります。
(2)は、(1)が誘導になっています。
(1) はDP:PEが2:1とわかっていることで解けたのですから、
(2)の方針はDP:PEを求めることとなります。
以下は(1)と同じように解くことができます。
(2)の答え 56cm2
(1)(2)を「直接求める」方法で解いた場合、
正三角形の問題には「均等分割」という解き方がある
ということを思い出せたでしょう。
(3)の答え 33 1/3cm2
(3)は「均等分割」を用いると、簡単に求めることができました。
「辺の比と面積比」をマスターし、
さらに「均等分割」も身につけることができると、
解ける問題のレベルが上がっていくと思います。
続いて、桜蔭中の問題をご紹介します。
平成28年度の桜蔭中の入試問題は、
問題の条件を把握し、正確かつ迅速な計算をするという、
いかにも桜蔭中らしいものとなりました。
試験時間は50分、大問5題という例年通りの構成です。
平成28年度 桜蔭中学 入学試験問題 算数 より
大問Ⅰ-(3) 右の図のような折れ線に沿って、直径8cmの円がすべることなく転がっていきます。円の中心の動く速さは毎秒5cmで、Aから出発します。AB、BC、CDの長さは、すべて20cmです。円が、Aを出発してから10秒間転がったとき、円が通った部分の面積を求めなさい。(円周率 3.14)
円の転がり移動の定番中の定番ですが、
円の中心が移動する距離に注意が必要です。
5cm/秒×10秒=50cm…円の中心が移動する距離
ア=16cm、イ=16cm、ウ=8cm×3.14÷4=6.28cm
エ=50cm-(16cm+16cm+6.28cm)=11.72cm
(12cm+12cm+11.72cm)×8cm=285.76cm2…3つの長方形の面積
4cm×4cm×3=48cm2…3つの正方形の面積
4cm×4cm×3.14÷4×(2+1+4+2)=113.04cm2…4つのおうぎ形の面積
答え 446.8cm2
計算の順序がわかりやすいので、
あとは素早く正確に計算することが重要です。
おうぎ形の部分は、相似を利用するとまとめて計算をすることができます。
大問Ⅳ 直方体の形をした池に噴水があります。池の深さは2mで、底面は1辺の長さが10mの正方形です。噴水は、毎時25分から20分間、池の外から引いてきた水をふき出します。噴水に使う水の量は毎分100 Lです。また、毎時27分から10分間、池の水を外に流し出します。流し出す水の量は毎分150 Lです。たとえば、9時25分から20分間、噴水は水をふき出します。また、9時27分から10分間、池の水を外に流し出します。これを1時間ごとにくり返します。ある日の午前7時の水の深さは1mでした。このとき、次の問いに答えなさい。ただし、水の蒸発は考えないものとし、噴水の水はすべて池の中に落ちるとします。また、噴水の水がふき出してから池に落ちるまでの時間も考えないものとします。
(1)(2)略
(3) この日は午前11時に雨が降り始めました。雨が降っている間、水面の高さは毎分0.05mmずつ上がっていきます。午後2時35分に雨がやんだとき、池の中の水の量は何Lであるか求めなさい。
条件を整理します。
池の底面の広さは10m×10m=100m2
午前7時の水の深さは1m
□:25~□:45 100L/分の水が入る
□:27~□:37 150L/分の水が出る
11:00~14:35 水面の高さが0.05mm/分上がる
以上より、
水が入る時間は、20分間×7+10分間=150分間なので、
100L/分×150分間=15000L の水が池に入ります。
また、水が出る時間は、10分間×7+8分間=78分間なので、
150L/分×78分間=11700L の水が池から出ます。
ですから、雨以外で、水は3300L増えます。
雨は215分間降っていますから、
0.05mm/分×215分間=10.75mm だけ水面の高さが増します。
10.75mm=1.075cmですから、
1000cm×1000cm×1.075cm=1075000cm3=1075L の雨が池に入ります。
10m×10m×1m=100m3=100000Lの水がはじめにありましたから、
100000L+3300L+1075L=104375L
答え 104375L
中学や高校の数学ではノート1ページを使い切るような計算もしばしばありますから、
小学生のうちから問題の条件を把握して、
大量の計算を順々に、正確に、素早くできるようになることも
大切な能力のひとつです。
中学受験算数では、
筑駒中の問題のような知識や工夫をする力、
桜蔭中の問題のような緻密さや正確な計算力の、
2種類の力が求められますが、
そのバランスは学校それぞれで異なります。
志望校の過去問を調べ、
まずどの力から鍛え、伸ばしていかなければならないかを知って、
これからの学習計画に活かしていけるといいですね。