2016年度中学入試 開成中
第272回 「平成28年度 私立中学入試 開成中」
首都圏の2016年度入試も中学入試もほぼ終わりました。
そこで今回は、首都圏の中学入試算数の問題をご紹介します。
その1校目は、開成中学です。
今年の開成中学の算数の出題分野と問題の難度(私見)は以下の通りでした。
今年は解答数が12でしたから、
均等配点として計算すると1問あたりの配点は85点÷12≒7点です。
12問のうち、レベルA~Cが7問ありますから、
それらをすべて正解できると49点となり、
学校公表データによる合格者平均(下記)にかなり近い点数になります。
これまでの勉強に出てきた問題に比較的類似した問題のある大問4か、
題意把握ができれば得点を伸ばしやすい大問1で
正解を1問増やすことができれば、
合格者平均を超えられたのではないかと思います。
このように見てきますと、どの難関中を受験する場合でも、
5、6年生の時に演習した定番問題を
入試でも正解できる力を身につけておくことが大切だと改めてわかります。
それでは早速、開成中の平成28年度入試から、定番ではない2問をご紹介します。
定番ではありませんが、
新6年生でもこれまでに学んだ知識と解法で正解することが可能な2問です。
1問目のキーポイントは
「問題条件の整理 → 題意の把握」
です。
開成中は試験時間が60分ありますから、
新6年生であれば少しぐらい時間をかけても構わないと思います。
必要な解法は決して難しいレベルのものではありませんので、
ぜひチャレンジしてみましょう。
平成28年度 開成中学 入学試験問題 算数 より
大問1 2つの地点X、Yを結ぶ道があります。A君はXからYへ向かって、B君はYからXへ向かって移動し、地図上の中間地点Mで出会うことにしました。地図には等高線が描かれていなかったため、B君は、図1のように2人とも水平な道を移動すると考えました。B君は、自分がA君より速く移動できること、おのおのがつねに同じ速さで移動することの2つをふまえて、A君が出発してから15分後に出発しました。これで、2人はちょうどMで出会うはずでした。ところが、実際には図2のような下り坂がありました。x%の下り坂では移動する速さが;x%だけ増すことになります。ここで下り坂がx%であるとは、
のことを指します。それでも無事に、2人はちょうどMで出会いました。このとき、以下の問いに答えなさい。なお、3辺の長さの比が3:4:5や5:12:13となる直角三角形を利用してもかまいません。
(1) ①A君がXを出発してからMでB君に出会うまでに「実際にかかった時間」は、「事前にB君が想定していた時間」の何倍ですか。
(1) ②B君がYを出発してからXでA君に出会うまでに「実際にかかった時間」は、「事前にB君が想定していた時間」の何倍ですか。
(2) A君がXを出発してからMでB君に出会うまでに「実際にかかった時間」を求めなさい。
大問1から、長文の問題です。
さらに、「x%の下り坂~」という下りの速さの説明部分(右図のような意味です)もあり、長文の問題が苦手なお子さんには「題意把握が難しい」と感じたように思われます。
(1)① 条件を整理すると下の図のようになります。
距離の比と速さの比から、時間の比がわかります。
(1)② 16÷12=4/3…想定 13÷17+4÷12=56/51…実際 56/51÷4/3=14/17(倍)
(2)
(1)②は①と同じ方法で解けますし、
(1)でわかったことを利用して(2)も解けますから、
(1)①が解けた場合と解けない場合では、
非常に大きな点差になる問題です。
開成中は、題意が把握できれば全問正解も可能な問題=大きな点差のつく問題を、
2012年度の入試でも大問1(「PASMO」のような交通カードのチャージ問題)で
出題しています。
開成中を志望校にしている新6年生は、
算数の解法を学習すると同時に、
「問題条件の整理 → 題意の把握」という学習(=ノートや答案の作り方)にも
取り組むことが必要でしょう。
2問目は、自分の手で正確な図を書く練習をしていれば、
かなりの得点が見込める問題ですから、
これまでの図形に対する学習の取り組み方をチェックするのに
適した問題といえそうです。
大問4-(1) 右図において、3つの円の直径AB、AC、ADはすべて6cmで、直線ABと直線ADは垂直です。また、直線ACを線対称の軸とみるとき、点Bと点Dが対応します。点Gは一番左にある円の中心です。
(ⅰ) 点Eと点Fとを結ぶ曲線(右図の太線)の長さは何cmですか。
(ⅱ) 三角形ABEの面積は三角形EFGの面積の何倍ですか。
(ⅲ) 三角形AEFの面積は何cm2ですか。
(2) 点Oを中心とする半径3cm(直径6cm)の円の周上に、周の長さを8等分する点を取り、順に点P、Q、R、S、T、U、V、Wとします。8個の点P、Q、R、S、T、U、V、Wそれぞれを中心とする半径3cmの円を描くと、右図のようになります。
このとき現れる線を利用して、右の斜線部の図形を考えます。この斜線部の図形の面積は何cm2ですか。
図形問題は問題文を読む前に図形に目が行きがちですが、
そこで先入観が生まれてしまうと、
解ける問題も解けなくなることがあります。
「問題文を読みながら、出てくる条件を順に図で確認する」
という取り組み方は、
このようなリスクを防ぐことができます。
この方法を用いると、
下の図のように、点Eの位置が正確にわかります。
点Eの位置が正確にわかると、
以下のように、大問4を全て正解することが可能になります。
(ⅰ) 角EGF=45°より、6cm×3.14×1/8=2.355cm
(ⅱ) 三角形EFGと三角形EBGは合同なので、AB:EG=2:1より2倍です。
(ⅲ) EGとCAは平行ですから、
三角形AEFの面積=三角形AGF=3cm×3cm×1/2=4.5cm2(等積変形)です。
(2) 「美しい図形(=対称図形)」なので、次のような方針が立ちます。
この図形は(1)-(ⅲ)で求めた三角形AEFの面積と同じです。
ですから、4.5cm2×16=72cm2が答えです。
大問4は、下の麻布中、巣鴨中、大阪星光中の入試問題に含まれる、
3つの要素を融合させた誘導形式の問題でした。
難しい図形問題も、
「問題図 → 問題文」の順ではなく、
「問題文 → 問題図 → 問題文 → 問題図 → …」のように、
文中の条件と問題図を1つずつ確認し、
整理して何がわかるかをとらえることで正解できます。
新6年生がこの開成中の問題を解く場合、
少々「カン」でも構いませんが、
自力で解き終えた後でテキストなどの解き方を確認し、
新たに学んだ事を上の図のような問題を演習する時にも活かすことができるといいですね。