小5の学習ポイント4 辺の比と面積比
「第263回 小5の学習ポイント 平面図形3」
今回は、小5で学ぶ「平面図形」の中でも、
特に中学入試で重要な学習ポイントを、
サピックス第34回の「デイリーサポート
(過年度版を参考にしていますので、2015年版とは異なることがあります)」を
題材にして見ていきます。
「第34回 平面図形(3) 辺の比と面積比」の注意点と事前準備
今回も前回同様、内容が盛り沢山になっています。
(1) 高さが等しい三角形と面積比(等高三角形の面積比、区切り面積)
(2) 台形・平行四辺形・長方形と区切り面積
(3) 三角形の辺の比と面積比(隣辺比)
(4) 影の問題(三角形の相似の利用)
学習項目は4つで少なく感じられるかも知れませんが、
それぞれの学習内容は非常に濃いものです。
(1)(2)は5年生の第1回の教材や復習テスト、マンスリーなどにありましたが、
半年以上も前のことなので忘れてしまっているケースもあるでしょう。
また、
(4)は前の週に学んだ「直角三角形のピラミッド型や砂時計型の相似」を
利用する問題ですので、
(1)(2)と合わせ、復習をしてから授業に臨むと
理解しやすいかも知れません。
(3)は6年生でも苦手にしているお子さんが少なくない、
高度な学習な項目のひとつです。
(1)~(3)でつまずく可能性がありそうでしたら、
三角形の底辺と高さの関係を授業までに確認しておきましょう。
「第34回 デイリーサポート 平面図形(3)」…重要なポイントを含む問題(抜粋)
【B問題-2】
右図のように、ADの長さが12cmの長方形ABCDがあります。辺BCの上に点Eをとるとき、三角形ABEの面積と台形AECDの面積の比が1:4になるのはBEの長さが何cmのときですか。
【基本の考え方…区切り面積】
面積を求める式を比に表すと「約比(下の赤字部分を消去すること)」ができ、
「高さの等しい三角形や四角形の面積比=底辺の長さや(上底+下底)の長さの比」
となることを利用して解く問題です。
三角形ABEの面積:台形AECDの面積
=底辺BE×高さAB÷2:(上底AD+下底EC)×高さAB÷2
=底辺BE:(上底AD+下底EC)
これを用いて実際に問題を解くときは右の図のように書くことができ、
①+④=24cm → ①=4.8cm
のようにして答えを求めます。
【上級問題につながる考え方…仮定】
この問題を解く場合には「区切り面積」より面倒になりますが、
上級問題で利用する「仮定」をご紹介しておきます。
問題の長方形ABCDの高さを仮定して解く方法です。
この解き方の長所は、高さは何cmにしても答えが変わらない点です。
仮にAB=5cmとすると、次のような解き方になります。
5cm×12cm=60cm2 …長方形ABCDの面積
60cm2×1/5=12cm2 …三角形ABEの面積
12cm2×2÷5cm=4.8cm
また仮にAB=10cmとすると、次のような解き方になります。
10cm×12cm=120cm2 …長方形ABCDの面積
120cm2×1/5=24cm2 …三角形ABEの面積
24cm2×2÷10cm=4.8cm
このように、
高さABを何cmに仮定してもBE=4.8cmとなることを通して、
「比で解くときは仮定という解き方もある」ことを知っておくと、
次のような問題の解説も理解することができます。
【C問題-4】
右図の三角形ABCの辺BCを2倍、辺CAを3倍、辺ABを5倍にのばした点をD、E、Fとして三角形DEFを作りました。三角形DEFの面積は三角形ABCの面積の何倍ですか。
(デイリーサポートの解説)
3×1+5×2+4×2+1=22
(解説を区切り面積で考えたときの図)
(解説を仮定で考えたときの図)
「仮定」をすることによって、補助線を引かずに解くことができます。
ここで用いた「隣辺比」について、次の問題で見ておきます。
【C問題-1】
右図の三角形ABCの面積は斜線部分の面積の何倍ですか。
【基本の考え方…区切り面積】
前出の「区切り面積(高さが等しい三角形の面積比)」を利用しますが、
この問題には2通りの解き方がありますので、
初めのうちは取り組みやすい方法を選ぶようにしましょう。
「解き方1」のメリットは「式が簡単」という点です。
しかしこのことは同時に
「(簡単すぎて)何が求められたのか、わからない」
というケースも出てきます。
「解き方2」は「解き方1」よりも少し時間のかかる方法ですが、
「いま何がわかっているか」がはっきりしていますので、
「解き方1」が使いにくいと感じたときは、
試してみるとよいかも知れません。
【工夫した解き方…隣辺比】
「隣辺比」は、
2つの三角形で1つの角が共通している(または、角の和が180°)とき。
「共通角をはさむ2辺の積=面積比」
を利用する解き方です。
工夫した解き方として「仮定」と「隣辺比」をご紹介しましたが、
これらを使って、次の問題を解くこともできます。
【E問題-1(2)】
右図で、BPとCPの長さは等しく、AQとCOの長さの比は4:1、ARとBRの長さの比は1:3です。三角形PQRの面積は三角形ABCの面積の何倍ですか。
【解き方】三角形ABCを正三角形に仮定すると、AB=BC=CA=⑳ とすることができます。
「分数」を使うと「何を求めているのか、わからなくなる」という場合は、
このように整数だけで計算できる方法を試してみてください。
【D問題-3】
右図は、木のかげのようすです。同じ時刻に1mの棒をまっすぐに立てたとき、棒のかげの長さは2mでした。xは何mですか。
【基本の考え方】
影の問題では補助線を書くことが多いのですが、
影の問題での補助線の目的は
「直角三角形をつくる → 相似比を用いて計算をする」
にあります。
補助線には上記の3パターンがありますが、
オススメは
「影の先端が地面などと接している点から水平に書く」
と覚えやすい、
「水平パターン」です。
【水平パターンを利用した解き方】
上図より①=7.5m → ②=15m x=15m-2.5m=12.5m
最難関中では
「立体図形の影問題」
「光源が移動する影問題」
「移動する人の影の長さとグラフの問題」
のように、
今回の学習事項にもうひとつの要素を
追加(例:立体図形であれば2つの投影図を利用する)して解く問題が出題されます。
ですから、
真正面から見た投影図1つで解くことのできる問題を通して、
「投影図の書き方」も
今回の学習で覚えていくようにしましょう。
近年、中学入試では図形問題が多く出題されています。
サピックス小5の第34回で学習する
「等高三角形の面積比(あるいは区切り面積)」
「隣辺比」
「相似の利用」
はその中でもよく出題される分野のひとつですから、
受講前の準備(既習範囲の知識の確認)、
受講後の復習(解法の習得と使い分け方)に取り組んで、
「辺の比と面積比の問題はバッチリ!」
といえるように
なれるといいですね。