小5の学習ポイント2 円とおうぎ形
「第261回 小5の学習ポイント 平面図形」
今回は、小5で学ぶ「平面図形」の学習ポイントを、
サピックスを例にいくつか見ていきたいと思います。
サピックスでは第32回から5回にわたって平面図形の学習をしますが、
今回はそのうちの「第32回 平面図形(1) 円とおうぎ形」について、
「デイリーサポート(過年度版を参考にしていますので、2015年版とは異なることがあります)」に
取り組むときのポイントや6年生の学習につながる工夫の仕方について考えてみます。
「第32回 平面図形(1) 円とおうぎ形」の精度を高めるポイント
円とおうぎ形の問題で
「ミス」を引き起こす原因のひとつが、
「円周率の計算」です。
「中心角が1°のおうぎ形がたくさん集まっているのだから…」と考え、
「比」を使うと、「正確に」「より早く」「楽に」答えを求めることができるようになります。
さらに、
「3.14×2」~「3.14×9」の計算を覚える、
分配のきまりを利用して円周率の計算回数を減らす、
といった工夫ができると、
「正確さ」「速さ」「楽さ」が一段とアップできます。
なお、
円やおうぎ形の中心がどこかをきちんと理解していないお子さんは、
正解と大きく異なる答えになりますから、
お子さんの答えを見て「おかしいな?」と感じた時は、
円やおうぎ形の中心が正しく把握できているかを確認してみてください。
「第32回 デイリーサポート 平面図形(1)」…重要ポイントを含む問題(抜粋)
【A問題-1】
下図の斜線部分の面積は何cm2ですか。(ただし円周率は3.14とします。)
このA問題を発展させた問題が、「2015年度 開成中 大問2」です。
非常に難しい小問を含むこの問題ですが、
基本と工夫の両方を身につければ、全問正解も不可能ではありません。
【基本の考え方】
A問題-1(2)は
「レンズ形は半分に分ける」
というポイントが押さえられているかが確認できます。
(1)は
「複合図形の面積は、図形式で考える」
というクセがついているかのチェックができる問題です。
【工夫した解き方】
(1)は「重なりは引く」という考え方でも解くことができます。
【A問題-4】
下図は、1辺の長さが20cmである正方形を使ってかいた図形です。それぞれの斜線部分について、次の問いに答えなさい。(ただし円周率は3.14とします。)
(1) イの斜線部分の面積と等しいのは、どれですか。
(2) イの斜線部分の面積の1/2倍であるのは、どれですか。すべて答えなさい。
【基本の考え方】
A問題-1のように、図形式などを使いながらそれぞれの面積を求めます。
ただし、ア、クは白い部分の図形を移動させるとウと同じ図形になりますから、
これらの計算は1回だけでOKです。
【工夫した解き方】
「ケーキの法則」を利用します。
正方形を「箱」、円を「ケーキ」とすると、
ウの「箱」は下の図のケの「箱」の4倍の大きさです。
ですから、
ウの「ケーキ」もケの「ケーキ」の4倍とわかりますので、
「ウの円の面積=エの円の面積」です。
「ケーキの法則」を使うと、「イの面積=カの面積」もわかります。
また、
から、
ウが(2)の「イの斜線部分の面積の1/2倍~」の答えになることがわかりますので、
ウと等しいア、エ、クも(2)の答えとわかります。
前掲の開成中のようなレベルの高い学校を目指す場合は、
A問題-4を計算以外にこのような工夫をして解く練習もしておくといいですね。
【B問題-1より】
以下のおうぎ形について中心角を求めなさい。(ただし円周率は3.14とします。)
(1)半径10cmで弧の長さが15.7cm
【基本的な解き方】
【「半径が等しいおうぎ形のポイント」を利用した解き方】
360×15.7/62.8=90 答え 90°
【工夫した解き方】
特殊な問題を除くと、
円周や弧の長さ、円の面積やおうぎ形の面積は「円周率の倍数」です。
円周率が3.14のこの問題では、
弧の長さ15.7cmを「5×3.14」の形に変えておくことができます。
はじめにありました「覚えておきたい」で、
「2×円周率~9×円周率」の値が頭に入っていると、
このような解き方に有効です。
また、
「かけ算をしない → 消す」という解き方は、
上位校の入試問題を解くために必要な、
「素因数分解の利用」にも結びついていきます。
【B問題-4】
右図は半径を2倍、4倍として半円を3つかいたものです。直線アイの長さが6cmのとき曲線アイウエの長さは何cmになりますか。(ただし円周率を3.14とします。)
【基本的な解き方】
アイ=6cmですから、イウ=12cm、ウエ=24cmです。
6×3.14×1/2+12×3.14×1/2+24×3.14×1/2=9.42+18.84+37.68=65.94
答え 65.94cm
【分配のきまりを利用した解き方】
分配のきまりを利用して、
「×3.14」を1回だけにし、
計算ミスの危険性を減らす解き方です。
答え 65.94cm
【第33回で習う「相似」を利用した解き方】
相似を利用すると、
計算の回数を減らしたり
計算に使用する値を小さくしたりできますから、
「正確さ」「速さ」「楽さ」をアップすることができます。
今回は、
小5で学ぶ「平面図形 円とおうぎ形」の基本的な学習ポイントと工夫の仕方を、
サピックスを例に見ていきました。
この他に「スーパーテクニック」を習うこともあります。
右図のイメージのように、
基本と工夫が十分に理解できた上で「スーパーテクニック」を身につけておくと、
6年生の学習にもきちんとついていくことができます。
逆にどれかひとつでも階段を踏み損なうと、
「組分けテスト」や「サピックスオープン」のような実力テストで
得点を伸ばし損ないかねません。
「幾何学(図形)に王道なし」(ユークリッド)
という逸話通りだと思います。