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第655回 女子中の入試問題 立体図形 2

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図形の練習問題 2024年01月27日18時00分

「第655回 女子中の入試問題 立体図形 2」

前回より、2023年度に女子中で出された「立体図形」の問題を取り扱っています。

今回は「回転体」について見ていきます。

 

1問目は基本レベルの問題です。

5年生でも、回転体を学習し終えていれば挑戦できるでしょう。

 

【問題】縦20㎝、横12㎝の長方形の厚紙から、図のように2つの長方形を切り取って、棒にはりつけました。この棒を軸に、厚紙を1回転させてできる立体の体積は何㎤ですか。ただし、円周率は3.14とします。

(東洋英和女学院中学部 2023年 問題8)

 

【考え方】

体積を求めるときは、見取り図をかくと考えやすくなります。

半径が12㎝の円柱と、半径が

12㎝-6㎝=6㎝

の円柱の体積の和から、半径が2㎝の円柱の体積を引きます。

 

12㎝×12㎝×3.14×(8㎝+4㎝)=1728㎤×3.14 … 半径12㎝の円柱

6㎝×6㎝×3.14×(20㎝-8㎝-4㎝)=288㎤×3.14 … 半径6㎝の円柱

2㎝×2㎝×3.14×(20㎝-7㎝-9㎝)=16㎤×3.14 … 半径2㎝の円柱

(1728㎤+288㎤-16㎤)×3.14=2000㎤×3.14=6280㎤

答え 6280㎤

 

本問は、回転体の見取り図の作図と計算の工夫が確認できる基本レベルの問題です。

「×3.14」をひとまとめにして計算をすると、計算間違いを防ぎやすくなります。

 

では、2問目です。

 

軸から離れた図形を回転させる問題で1問目よりも難しくなりますが、これも大切な問題です。

 

【問題】下の図のような直角三角形ABCを直線ℓのまわりに1回転させてできる立体の体積は何㎤ですか。円周率は3.14で計算してください。

(淑徳与野中学校 2023年 問題2-(4) 問題文一部変更)

 

【考え方】

回転体の見取り図は、回転させる図形を軸と線対称な位置にかき足し、対応する頂点をなめらかな曲線で結んでかきます。

 

見取り図より、できる立体は円すい台から円柱を取り除いたものです。

円すい台の体積は、大きな円すいから小さな円すいを引いて求めます。

 

大小の円すいの体積を求めるために、円すいの断面図が必要となります。

そこで、問題で与えられている図を利用します。

赤線の三角形は三角形ABCと相似、水色の三角形は三角形ABCと合同なので、円すい(大)は底面の半径が6㎝、高さが8㎝、円すい(小)は底面の半径が3㎝、高さが4㎝とわかります。

6㎝×6㎝×3.14×8㎝×1/3=96㎤×3.14 … 円すい(大)

3㎝×3㎝×3.14×4㎝×1/3=12㎤×3.14 … 円すい(小)

3㎝×3㎝×3.14×4㎝=36㎤×3.14 … 円柱

(96㎤-12㎤-36㎤)×3.14=48㎤×3.14=150.72㎤

答え 150.72㎤

 

本問は軸から離れた図形を回転させるときの考え方が確認できる問題です。

1問目よりは難しい問題ですが重要な問題ですので、解き方を忘れていたときは必ず復習をしましょう。

なお、解答例では見取り図をかくところから始めていますが、学習が十分にできている場合はすぐに断面図から考え始めても構いません。

また、次のように体積比を利用して解くこともできます。

 

 

最後は応用レベルの問題です。

 

【問題】図のようなAB=ACの二等辺三角形ABCがあります。この三角形を、直線mを軸として1回転してできる立体をVとします。ただし、直線mと辺BCは垂直です。このとき、CDの長さと、立体Vの表面積を求めなさい。答えを出すために必要な式、図、考え方なども書きなさい。また、円周率の値を用いるときは、3.14として計算しなさい。

(鷗友学園女子中学校 2023年 問題4 問題文一部変更)

 

【考え方】

立体Vは、円すい(大)から円すい(小)2つを取り除いたものです。

 

断面図は次のようになります。

 

三角形BDEと三角形AFEは相似で、相似比は

BE:AE=5㎝:10㎝=1:2

ですから、

EF=4㎝×2=8㎝

AF=3㎝×2=6㎝

です。

 

また、三角形AFEと三角形AFGは合同なので、GF=8㎝、GA=10㎝です。

 

三角形CDGも三角形BDEと相似で、相似比は

GD:ED=(8㎝+8㎝+4㎝):4㎝=5:1

ですから、

CD=3㎝×5=15㎝

GC=5㎝×5=25㎝

GD=4㎝×5=20㎝

です。

 

立体Vの表面積は、直線AC(赤色太線)、直線AE(青色太線)、直線CD(黒色太線)が回転してできる部分の面積を合わせたものです。

 

直線ACが回転してできる部分は、三角形CDGが回転してできる円すいの側面積から三角形AFGが回転してできる側面積を引いたものですが、三角形AFGが回転してできる側面積と直線AEが回転してできる部分の面積と同じです。

 

よって、立体Vの表面積は、三角形CDGが回転してできる円すいの表面積と同じです。

 

円すいの側面積は母線×底面の半径×円周率で求められます。

25㎝×15㎝×3.14=375㎠×3.14 … 側面積

15㎝×15㎝×3.14=225㎠×3.14 … 底面積

(375㎠+225㎠)×3.14=1884㎠

答え CD 15㎝、 表面積 1884㎠

 

本問は、回転する図形に重なりがあるときの考え方が確認できる問題です。

解答例では図形式を使って表面積を求めましたが、「凹みはふくらませる」を利用するとより簡単に考えることができます。

 

今回は、2023年度の女子中の入試で出された「回転体」の問題をご紹介しました。

1、2問目では基本の解法が確認できます。

また、3問目はやや難しいのですが定番の問題でもありますから、まちがえた問題があれば学習のどの部分は足りていないかをチェックして、正解できるように見直しをしていきましょう。

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図形の練習問題 / 中学入試の算数問題 2024年01月27日18時00分
主任相談員の前田昌宏
中学受験情報局『かしこい塾の使い方』の主任相談員である前田昌宏が算数の面白い問題や入試問題を実例に図表やテクニックを交えて解説します。
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