第654回 女子中の入試問題 立体図形 1
「第654回 女子中の入試問題 立体図形 1」
2023年度に女子中で出された入試問題について考えています。
今回からは「立体図形」を取り扱っていきます。
その1回目は、「求積」がテーマの問題を見ていきます。
1問目は立体図形の展開図から表面積を求める問題です。
【問題】図はある立体の展開図です。曲線の部分は半円になっています。この立体の表面積は何㎠ですか。円周率は3.14とします。
(田園調布学園中等部 2023年 問題1-(10) 問題文一部変更)
【考え方】
展開図から表面積を求めるときのポイントは、展開図の面積が表面積と等しいという点です。
また、角柱や円柱などの柱体の側面積が(底面の周りの長さ)×(立体の高さ)で求められることも重要な知識です。
20㎝÷2=10㎝ … 半円の半径
20㎝×20㎝-10㎝×10㎝×3.14÷2=243㎠ … 底面積(1つ分)
243㎠×2=486㎠ … 底面積(合計)
20㎝×3.14÷2=31.4㎝ … 曲線の長さ(赤線部分)
20㎝×3+31.4㎝=91.4㎝ … 底面の周りの長さ(青線部分)
25㎝×91.4㎝=2285㎠ … 側面積(合計)
よって、この立体の表面積は
486㎠+2285㎠=2771㎠
です。
答え 2771㎠
本問は、柱体の表面積の求め方と展開図の読み取り方の基本が確認できる問題です。
習い終えていても間違えるようでしたら、角柱と円柱を組み合わせた立体図形の問題ですぐに復習をしましょう。
2問目は立体図形の投影図から体積と表面積を求める問題です。
【問題】下の図は、ある立体を真正面、真横、真上の3方向から見た図です。この立体の体積と表面積をそれぞれ求めなさい。
(晃華学園中学校 2023年 問題4)
【考え方】
体積を求めるときは、見取り図があると考えやすいです。
前後、左右、上下から立体を見たときの「輪郭」はそれぞれ同じなので、次のような見取り図をかくことができます。
よって、求める立体は、底辺12㎝、高さ5㎝の直角三角形を底面とする、高さ5㎝の三角柱です。
12㎝×5㎝÷2=30㎠ … 底面積
30㎠×5㎝=150㎤ … 体積
12㎝+5㎝+13㎝=30㎝ … 底面の周りの長さ
30㎝×5㎝=150㎠ … 側面積
30㎠×2+150㎠=210㎠ … 表面積
答え 体積 150㎤、 表面積 210㎠
本問は、真正面、真横、真上から見た投影図を「貼り合わせ」て立体の形を考えることが確認できる問題です。
このような問題が苦手なときは、家庭学習で図形問題に取り組むときに自分の手で見取り図などをかいて問題を解くようにしてみましょう。
3問目は一部を切り取られた立体の問題です。
【問題】下の図は、1辺の長さが6㎝の立方体の8個の頂点のそれぞれから、1辺の長さが2㎝の立方体を切り取ってできた立体です。
(1)この立体の体積は何㎤ですか。
(2)この立体の表面積は何㎠ですか。
(3)この立体の辺の長さの合計は何㎝ですか。
(品川女子学院中等部 2023年 問題3)
【考え方】
(1)
6㎝×6㎝×6㎝=216㎤ … 1辺の長さが6㎝立方体の体積
2㎝×2㎝×2㎝=8㎤ … 1辺の長さが2㎝立方体の体積
216㎤-8㎤×8=152㎤
答え 152㎤
(2)
「凹みをふくらませる」を利用します。
立方体を切り取ってできた面を次のように等積移動すると、表面は立方体を切り取る前と同じになります。
6㎝×6㎝×6面=216㎠
答え 216㎠
(3)
この立体には、1辺の長さが2㎝の十二角形の面(赤色)が6面と1辺の長さが2㎝の正方形の面が
3面(水色)×8=24面
あります。
これらの面がバラバラにあるとき、辺の本数の合計は
12本×6面+4本×24面=168本
です。
これらの面を合わせて立体を作ると2本の辺が合わさって1本の辺になりますから、全部で
168本÷2=84本
の辺が立体にあるとわかります。
2㎝×84本=168㎝
答え 168㎝
本問の(2)は「凹みをふくらませる」という考え方、(3)は「バラバラにした面を合わせる」ときの考え方が確認できる問題です。
どちらも大切な考え方ですから、もし正解できなかったときは解説を参考におさらいをしましょう。
最後は、組み合わされた立体の問題です。
【問題】図のような三角柱Aが2つと直方体Bが1つあります。2つの三角柱Aを組み合わせて作った立体の一部をくりぬき、直方体Bをはめ込んだものが立体Cです。直方体Bはすきまなくはめ込まれています。下の図は、三角柱A、直方体B、立体Cの見取り図です。また、この立体を真上から見た図が図1、この立体を右から見た図と左から見た図は同じで図2、真正面から見た図が図3です。ただし、長さの単位はすべて㎝です。このとき、立体Cの表面積を求めなさい。
(白百合学園中学校 2023年 問題5)
【考え方】
三角柱Aをくり抜いた後、直方体Bをすき間なくはめ込んでいますから、立体Cは三角柱Aに2つの三角柱(小、赤色部分)を貼り付けたものと考えることができます。
真上から見た図を利用して三角柱(小)の底面の長さを調べます。
三角柱(小)の底面は三角形PQRと相似で、相似比は2㎝:6㎝=1:3ですから、
★=16㎝×1/3=16/3㎝
☆=10㎝×1/3=10/3㎝
です。
立体Cの表面積は「元の表面積からの増減」という考え方で求めます。
2つの三角柱Aの表面積の和から三角柱(小)を貼り付けた部分の面積を引き、貼り付けた面を除く三角柱(小)の表面積を加えたものが、立体Cの表面積です。
{12㎝×8㎝÷2×2面+(10㎝×2+12㎝)×12㎝}×2つ分=960㎠ … 三角柱Aの表面積(2つ分)
4㎝×10/3㎝×4面=160/3㎠ … 三角柱(小)を貼り合わせた面の面積
(16/3㎝×2㎝÷2×2面+16/3㎝×4㎝)×2つ分=64㎠ … 貼り合わせた面を除く三角柱(小)の表面積(2つ分)
よって、立体Cの表面積は
960㎠-160/3㎠+64㎠=2912/3㎠
です。
答え 2912/3㎠(970 2/3㎠)
本問は、組み合わされた立体の表面積を求めるときに用いる解法のひとつである「元の立体の表面積からの増減」を確認できる問題です。
問題文と与えられた図からくり抜いた穴が塞がれていることに着目して、順に計算をすすめていきましょう。
今回は、2023年度の女子中の入試で出された「立体図形の求積」の問題をご紹介しました。
1問目と2問目は立体の見方に関する重要な問題です。
正解できなかったときは、問題演習をするときに自分の手でいろいろな図をかき、図の見方を身につけていきましょう。