数の性質「約数」
第212回 「あと1ヶ月半で6年生になる5年生の学習 数の性質1」
今回のテーマは数の性質です。
数の性質といってまず頭に浮かぶのは「約数と倍数」でしょう。
「約数と倍数」は、5年生で基本を習った後、
再び6年生の2月に学習することが多いようです。
ということで
「6年生になると、5年生のときと何が変わるか」
をみておきましょう。
今回は「約数」です。
(問題) 24の約数の和を求めなさい。
5年生で習ったときは、ヌケモレが起きないように、
「1で割ると24」「2で割ると12」…と、
下図のように順々に書き出しで習うことが多かったと思います。
1+2+3+4+6+8+12+24=60
しかし、6年生になると「素因数分解」を利用するようになります。
24=2×2×2×3
これをつぎのような表に整理します。
並びは違いますが、上の「書き出し」と同じように、
1、2、3、4、6、8、12、24
の8個があります。
これは、
24には「×2」が3個、「×3」が1個あり、
その組み合わせ方を示しているのです。
ですから、表を書かずとも、「24=2×2×2×3」という素因数分解の結果より、
「×2」の使い方は「使わない(×1)」「1個使う」「2個使う」「3個使う」の4通り、
「×3」の使い方は「使わない(×1)」「1個使う」の2通り、
従って4×2=8個の約数があるとわかるのです。
そして、この考え方を発展させると、下の図を作ることができます。
図の8つの四角形の面積は、
上の「個数」で使った表に書かれたそれぞれの約数と同じになっていますから、
「8つの四角形の面積の和=8個の約数の和」となります。
ですから、表を書かずとも、「24=2×2×2×3」という素因数分解の結果より、
(1+2+2×2+2×2×2)×(1+3)=15×4=60
と、約数の和が求められます。
6年生になると、約数の個数や和の問題は、書き出しだけでなく、
計算も必要となってきます。
次に、この計算を利用する入試問題をご紹介します。
関西学院中 2009年度 中学入試 算数より
(問題) 20から40までの整数のうち、約数が全部で4個ある整数は何個ありますか。
約数の個数は、素因数分解の結果から表で求められました。
このことを逆に利用します。
約数の個数が4個ということは、長方形の形が、たて1×横4 または たて2×横2 です。
上の「たて1×横4」の□にあてはまる数は、□=3の1個だけです。
また、「たて2×横2」の□、○にあてはまる数の組は、
(□=2 ○=11)
(□=2 ○=13)
(□=2 ○=17)
(□=2 ○=19)
(□=3 ○=7)
(□=3 ○=11)
(□=3 ○=13)
(□=5 ○=7)
の8組です。
→ 1+8=9(個)
関西学院中の問題では「20から40までの21個」ですから、
ひとつずつ調べていくことも可能です。
しかし、テストには制限時間がありますから、
できれば、このような問題で時間をあまり使いたくはありませんね。
5年生の場合、これから入試まで1年間ありますから、
「書き出し」ができるようになったら、
次は書き出さなくても解ける方法を身につけるとよいでしょう。
もう1問、約数の個数に関する問題です。
入試でもこの問題の類似題が多くあります。
(問題) 3、5、7、…201を、表には黒字で、裏には表と同じ数を赤字で書かれた100枚のカードがあります。たとえば、表に黒字で3と書かれたカードの裏側には赤字で3と書かれています。これらのカードを黒字で書かれた数が見えるように並べます。はじめに3の倍数が書かれたカードを裏返し、次に5の倍数が書かれたカードを裏返し、…、最後に201の倍数が書かれたカードを裏返します。ですから、たとえば15が書かれたカードは、3の倍数、5の倍数、15の倍数のときに裏返され、すべてが終わったときには赤字で書かれた15が見えています。
(1) 29、125のカードはそれぞれ、最後に黒字、赤字のどちらの数が見えていますか。
(2) 100枚のカードの中で、最も多く裏返されるカードは何回裏返されますか。
(3) 100枚のカードの中で、最後に黒字の数が見えているカードは何枚ありますか。
問題文中に「倍数」と書かれているのに、約数の問題?
という疑問を持たれるかもしれません。
その疑問を解消するために、実際に作業をしてみましょう。
3の倍数のカードを裏返す → 3、9、15、21、27、…、201
5 の倍数のカードを裏返す → 5、15、25、35、…、195
7の倍数のカードを裏返す → 7、21、35、49、…、189
9の倍数のカードを裏返す → 9、27、45、63、…、189
・
・
・
これをカード別に整理すると、
のようになります。
この表に「1の倍数」という作業がもしあったとすれば、○は、
「3」…1、3
「5」…1、5
「7」…1、7
「9」…1、3、9
のように、「約数」と同じになります。
ですから、「カードに書かれた数の約数(1以外)の個数」の数だけ裏返ります。
(1) 29の約数は1と29ですから、29の倍数を裏返すときに裏返ります。
→赤字
125の約数は1、5、25、125ですから、
5、25、125の倍数を裏返すとき、計3回裏返ります。
→赤字
(2) 「最も多く裏返す=最も約数の個数が多い」です。
前問の「長方形」を応用すると、
約数の個数は素因数分解したときの素数の種類と個数で
計算できることになります。
カードに書かれた数が奇数ですから、
素因数分解したときの素数も奇数だけです。
3×3×3×3=81 なので、素数の個数は4個以下とわかります。
「○×○×○×○」のパターンは
3×3×3×3=81 → 5個 →「1」を除くと4回裏返る
※3の使い方は「0~4回の5通り」です。
「○×○×○×□」のパターンは
3×3×3×5=135 → 4×2=8個 →「1」を除くと7回裏返る
※3の使い方は「0~3回の4通り」、5の使い方は「0~1回の2通り」です。
「○×○×□×□」のパターンは
3×3×5×5=225 なので201より大きいので、問題にあてはまりません。
「○×○×□×△」のパターンは
3×3×5×7 なので明らかに201より大きいので、問題にあてはまりません。
素数が3個の奇数で約数の個数が多くなるのは「○×□×△」のパターンですから、
3×5×7=105 → 2×2×2=8個 →「1」を除くと7回裏返る
※3の使い方は「0~1回の2通り」、5の使い方は「0~1回の2通り」、7の使い方は「0~1回の2通り」です。
ですから、(2)の答えは7回です。
(3) 1回裏返れば赤字、2回裏返れば黒字、3回裏返れば赤字、…なので、
黒字になるのは偶数回裏返るカードです。
これを約数の個数で考えると、「1」を加えた約数の個数が奇数個のカードです。
ここで使うのが「約数が奇数個の整数は平方数である」という知識です。
ですから、3×3、、5×5、7×7、9×9、11×11、13×13 の6個です。
→ 9、25、49、81、121、169
このように、5年生では書き出しで問題を解くことが中心でしたが、
6年生になるとそれに加えて「素因数分解」を利用した、
計算で解く問題も増えてきます。
6年生になってこの単元を習うときに、
新しく出てくる「素因数分解」の利用方法の習得に集中できるよう、
5年生で習ったことのおさらいを、冬休み中にしておくとよいと思います。
今回のテーマは数の性質です。
数の性質といってまず頭に浮かぶのは「約数と倍数」でしょう。
「約数と倍数」は、5年生で基本を習った後、
再び6年生の2月に学習することが多いようです。
ということで
「6年生になると、5年生のときと何が変わるか」
をみておきましょう。
今回は「約数」です。
(問題) 24の約数の和を求めなさい。
5年生で習ったときは、ヌケモレが起きないように、
「1で割ると24」「2で割ると12」…と、
下図のように順々に書き出しで習うことが多かったと思います。
1+2+3+4+6+8+12+24=60
しかし、6年生になると「素因数分解」を利用するようになります。
24=2×2×2×3
これをつぎのような表に整理します。
並びは違いますが、上の「書き出し」と同じように、
1、2、3、4、6、8、12、24
の8個があります。
これは、
24には「×2」が3個、「×3」が1個あり、
その組み合わせ方を示しているのです。
ですから、表を書かずとも、「24=2×2×2×3」という素因数分解の結果より、
「×2」の使い方は「使わない(×1)」「1個使う」「2個使う」「3個使う」の4通り、
「×3」の使い方は「使わない(×1)」「1個使う」の2通り、
従って4×2=8個の約数があるとわかるのです。
そして、この考え方を発展させると、下の図を作ることができます。
図の8つの四角形の面積は、
上の「個数」で使った表に書かれたそれぞれの約数と同じになっていますから、
「8つの四角形の面積の和=8個の約数の和」となります。
ですから、表を書かずとも、「24=2×2×2×3」という素因数分解の結果より、
(1+2+2×2+2×2×2)×(1+3)=15×4=60
と、約数の和が求められます。
6年生になると、約数の個数や和の問題は、書き出しだけでなく、
計算も必要となってきます。
次に、この計算を利用する入試問題をご紹介します。
関西学院中 2009年度 中学入試 算数より
(問題) 20から40までの整数のうち、約数が全部で4個ある整数は何個ありますか。
約数の個数は、素因数分解の結果から表で求められました。
このことを逆に利用します。
約数の個数が4個ということは、長方形の形が、たて1×横4 または たて2×横2 です。
上の「たて1×横4」の□にあてはまる数は、□=3の1個だけです。
また、「たて2×横2」の□、○にあてはまる数の組は、
(□=2 ○=11)
(□=2 ○=13)
(□=2 ○=17)
(□=2 ○=19)
(□=3 ○=7)
(□=3 ○=11)
(□=3 ○=13)
(□=5 ○=7)
の8組です。
→ 1+8=9(個)
関西学院中の問題では「20から40までの21個」ですから、
ひとつずつ調べていくことも可能です。
しかし、テストには制限時間がありますから、
できれば、このような問題で時間をあまり使いたくはありませんね。
5年生の場合、これから入試まで1年間ありますから、
「書き出し」ができるようになったら、
次は書き出さなくても解ける方法を身につけるとよいでしょう。
もう1問、約数の個数に関する問題です。
入試でもこの問題の類似題が多くあります。
(問題) 3、5、7、…201を、表には黒字で、裏には表と同じ数を赤字で書かれた100枚のカードがあります。たとえば、表に黒字で3と書かれたカードの裏側には赤字で3と書かれています。これらのカードを黒字で書かれた数が見えるように並べます。はじめに3の倍数が書かれたカードを裏返し、次に5の倍数が書かれたカードを裏返し、…、最後に201の倍数が書かれたカードを裏返します。ですから、たとえば15が書かれたカードは、3の倍数、5の倍数、15の倍数のときに裏返され、すべてが終わったときには赤字で書かれた15が見えています。
(1) 29、125のカードはそれぞれ、最後に黒字、赤字のどちらの数が見えていますか。
(2) 100枚のカードの中で、最も多く裏返されるカードは何回裏返されますか。
(3) 100枚のカードの中で、最後に黒字の数が見えているカードは何枚ありますか。
問題文中に「倍数」と書かれているのに、約数の問題?
という疑問を持たれるかもしれません。
その疑問を解消するために、実際に作業をしてみましょう。
3の倍数のカードを裏返す → 3、9、15、21、27、…、201
5 の倍数のカードを裏返す → 5、15、25、35、…、195
7の倍数のカードを裏返す → 7、21、35、49、…、189
9の倍数のカードを裏返す → 9、27、45、63、…、189
・
・
・
これをカード別に整理すると、
のようになります。
この表に「1の倍数」という作業がもしあったとすれば、○は、
「3」…1、3
「5」…1、5
「7」…1、7
「9」…1、3、9
のように、「約数」と同じになります。
ですから、「カードに書かれた数の約数(1以外)の個数」の数だけ裏返ります。
(1) 29の約数は1と29ですから、29の倍数を裏返すときに裏返ります。
→赤字
125の約数は1、5、25、125ですから、
5、25、125の倍数を裏返すとき、計3回裏返ります。
→赤字
(2) 「最も多く裏返す=最も約数の個数が多い」です。
前問の「長方形」を応用すると、
約数の個数は素因数分解したときの素数の種類と個数で
計算できることになります。
カードに書かれた数が奇数ですから、
素因数分解したときの素数も奇数だけです。
3×3×3×3=81 なので、素数の個数は4個以下とわかります。
「○×○×○×○」のパターンは
3×3×3×3=81 → 5個 →「1」を除くと4回裏返る
※3の使い方は「0~4回の5通り」です。
「○×○×○×□」のパターンは
3×3×3×5=135 → 4×2=8個 →「1」を除くと7回裏返る
※3の使い方は「0~3回の4通り」、5の使い方は「0~1回の2通り」です。
「○×○×□×□」のパターンは
3×3×5×5=225 なので201より大きいので、問題にあてはまりません。
「○×○×□×△」のパターンは
3×3×5×7 なので明らかに201より大きいので、問題にあてはまりません。
素数が3個の奇数で約数の個数が多くなるのは「○×□×△」のパターンですから、
3×5×7=105 → 2×2×2=8個 →「1」を除くと7回裏返る
※3の使い方は「0~1回の2通り」、5の使い方は「0~1回の2通り」、7の使い方は「0~1回の2通り」です。
ですから、(2)の答えは7回です。
(3) 1回裏返れば赤字、2回裏返れば黒字、3回裏返れば赤字、…なので、
黒字になるのは偶数回裏返るカードです。
これを約数の個数で考えると、「1」を加えた約数の個数が奇数個のカードです。
ここで使うのが「約数が奇数個の整数は平方数である」という知識です。
ですから、3×3、、5×5、7×7、9×9、11×11、13×13 の6個です。
→ 9、25、49、81、121、169
このように、5年生では書き出しで問題を解くことが中心でしたが、
6年生になるとそれに加えて「素因数分解」を利用した、
計算で解く問題も増えてきます。
6年生になってこの単元を習うときに、
新しく出てくる「素因数分解」の利用方法の習得に集中できるよう、
5年生で習ったことのおさらいを、冬休み中にしておくとよいと思います。